東京大学のチャン・チアミン特任講師と、五十嵐武夫教授らの研究チームは、自動運転車に「目」をつけることで、安全性を向上できるかという実証実験を行なった。センサーなどを形容して「目」と言っているわけではなく、見たままの「目」をつけた実験だ。この自動運転車の目が、歩行者とのコミュニケーションを向上させ、交通事故のリスクが低減するという。

  • クルマに「目」をつけたよ! 東大が「自動運転車の事故を減らす」実験で嘘のような凄い成果

    ドライバーのいない自動運転車に「目」をつけることで、交通事故のリスクを低減させる実証実験

本実験「Can Eyes on a Car Reduce Traffic Accidents?」では、2つの目を付けた自動運転車を作成し、移動する様子を360度カメラで撮影。撮影した映像をVR環境で再生し、評価してもらった。本実験の参加者は、日本の18歳から50歳までの女性9名、男性9名の計18名を対象としている。

自動運転車に搭載した「目」は、直径は30センチで、黒プラスチック製の眼球を、半球状の透明なアクリルカバー覆ったもの。全方位に向けて最大45°の角度を取ることができ、人間の目の動きに近いモーションを行うことが可能だ。YouTubeで公開した動画でも、実際に目のついた自動運転車が動く様子を見ることができる。

目がギョロギョロ動く様はイロモノ感もあったのだが、実際のところは真面目に人に役立つすごい成果だと思う

本実験では4つの条件で検証を行なった。1つ目は目の付いていない自動運転車が道を譲らない場合、2つ目は目の付いていない自動運転車が道を譲る場合、3つ目は目のついた自動運転車が歩行者を見ずに道を譲らない場合、4つ目は目のついた自動運転車が歩行者を見て道を譲る場合だ。実験の参加者には、自動運転車を観察し、渡るべきか止まりべきかを判断させ、エラー率を測定した。ここでいうエラーは、車が停止するにもかかわらず、歩行者も止まってしまう場合と、車が通過するにもかかわらず、歩行者も道路を渡ろうとする場合だ。

  • エラー率を約4割も低減することが分かった

結果として、目をつけた自動運転車は、歩行者との交通事故を低減させる可能性があることが明らかとなった。全体的なエラー率として、目のない車で50.56%だったものが、目のある車で29.44%と4割ほど低下した。また、男女間で行動の差が生じたこともわかった。男性では危険な交通事故のリスクが低減し、女性では交通効率が上昇したのだそう。具体的には男性の場合、車が通過するにもかかわらず横断しようとする危険なケースが、目のない車で48.89%だったものが、目のある車で17.78%にまで低下。女性の場合、車が停止する状況で渡ろうとしない安全なケースが、目のない車で72.22%だったものが、目のある車で34.44%まで低下した。

また参加者にアンケート調査を行なった結果、女性参加者の88.9%は、道路を横断しようとするとき、近づいてくる目のついた車に「安全」を感じたと回答。また、女性参加者の66.7%、男性参加者の77.8%は、近づいてくる目のついた車が、こちらを見ていないと「危ない」と感じると回答した。

同研究チームは、「私たちの研究は、交差点の1つのシナリオを評価したに過ぎない。典型的な事故シナリオの体系的な評価は、さらに調査をする価値があると考えています」「将来的には、本物のAIを目と統合し、視線を制御したいと考えています」と述べている。

ネット上では「最終系はトーマスか何か?w」「モルカーって時代先取りだったのか」「これもうカーズだろ」と、交通事故の減少にかなり期待できる成果ではあるものの、まずは「目」のついた自動運転車の異様な見た目に注目が集まっていた。