米航空宇宙局(NASA)は米国時間の9月26日、小惑星「ディモルフォス」に無人探査機「DART」を衝突させ、軌道を軌道を変えようとする実験に成功したことを発表。衝突時の画像も公開した。宇宙で小惑星を動かす初の試みだ。
探査機の名前になっているDARTは、Double Asteroid Redirection Test(二重小惑星進路変更実験)の略で、NASAの惑星防衛戦略の一環となるミッション。今回の小惑星への衝突は、無人探査機を陰性機に衝突させることで、地球を脅かす可能性のある隕石の軌道を変更できるかどうかを確認するための実験だ。
探査機のDARTには、小惑星を観測するための光学航法カメラ・DRACOと、小天体操縦自律リアルタイム航法(SMART Nav)アルゴリズムと連動する高度な誘導・航法・制御システムが内蔵されている。この高度なシステムにより、1,260ポンド(570キログラム)の無人探査機を、56,000マイル(90,000キロメートル)の宇宙空間を通し、時速約14,000マイル(22,530キロメートル)で意図的にディモルフォスへと衝突させた。
今回衝突したディモルフォスは、地球から700万マイル(約1,100万キロ)離れた小惑星「ディディモス」の周りを周回する天体で、ディディモスとディモルフォスは二重小惑星の関係にある。ちなみに、ディモルフォスは直径約525フィート(160メートル)で、ディディモスはより大きな直径2,500フィート(780メートル)だが、どちらも放っておいても地球にとって脅威になる小惑星ではないとのこと。
この実験では、小惑星の軌道速度を減少させることを狙っている。研究者たちの推定によれば、ディモルフォスの軌道速度が、約1%(公転周期で10分相当)ほど短くなるそう。調査チームは、今後数週間にわたって、地球各地と宇宙に設置されている数十台の望遠鏡を使って、探査機DARTの衝突がどれだけ効果的に小惑星の軌道を変化させたか、ディモルフォスの軌道の変化などを観測する予定としている。
あわせてNASAは、探査機DARTの光学航法カメラ・DRACOが映し出した、ディモルフォスに衝突する瞬間までの約5分半の画像をつなぎ合わせた動画を公開している。動画冒頭では、ディディモスとディモルフォスの2つの小惑星を確認することができる。そこから、だんだんとディモルフォスの方へと近づいていき、衝突寸前の最後の場面には、ディモルフォス地表の鮮明な姿が動画の画面いっぱいに映し出されている。
NASAのビル・ネルソン長官は今回の衝突の成功に、「DARTはその中核において、惑星防衛のための前例のない成功を意味します。地球を守る1つの方法を示したのです」と述べている。また、NASAの惑星防衛担当官であるリンドリー・ジョンソン氏は「DARTの成功は、小惑星による壊滅的な衝撃から地球を守るためのツールとしての重要な役割を持ちました。小惑星衝突による自然災害を防ぐために、私たちはもはや無力ではないことを示しています」とコメントしている。
ちなみに、無人探査機DARTのミッション成功を記念して、Googleで「NASA DART」と検索すると、検索結果の画面上に無人探査機DARTが出現し、画面に衝突するという"しかけ"を見ることができる。
ネット上では「衝突成功は乙です。さて軌道はどれぐらい変わったのか」「こういう事を実際にやっちゃうのが凄い所だよね・・」「リアルで地球防衛ってあるんなあ」「これってマジですごいことだよね!!」などの声が寄せられた。
また、やはりあの映画を思い出した人が多いのか「ブルース・ウイリスの映画で見たな・・・」「これには自爆したブルースウィリスもええ笑顔」といった声も。映画アルマゲドンでは多大な犠牲と引き換えのミッションでしたものね。νガンダムとかラー・カイラムで押し返せるかも気になるところ。