アップルが今秋に正式リリースを予定するMac用の最新OS「macOS 13 Ventura」のパブリックベータテストが開始されています。新世代macOSのハイライトの中から、最も注目されている「連係カメラ」の新機能やデスクビューアプリの使い勝手を中心にレポートします。

  • macOS Venturaで新たに搭載される「連係カメラ」の新機能をパブリックベータ版で試しました

なお、パブリックベータ版の画面を公開することは禁じられていますが、本稿では特別に取材の許可を得たうえで、macOS Venturaパブリックベータの画面を掲載しています。また現在開発中であるパブリックベータ版のユーザーインターフェースは、正式版OSのローンチ時には変更になる可能性もあることをあらかじめご了承ください。

macOS Venturaのパブリックベータテストは、有効なApple IDと対応するMacを所有するユーザーであれば、Apple Beta Software Programの規約に同意・登録して誰でも無料で参加できます。次期macOS Venturaに対応するMacは以下の通りです。

  • 2017年以降のiMac、iMac Pro、MacBook、MacBook Pro
  • 2018年以降のMac mini、MacBook Air
  • 2019年以降のMac Pro
  • 2022年発売のMac Studio

iPhoneがユーザーの顔と手元を同時に写せるWebカメラになる

連係カメラ(Continuity Camera)とは、Macに同じユーザーのApple IDに2ファクタ認証でサインインしているiPhoneをペアリングし、iPhoneを外部カメラとして使うための機能です。

  • ユーザーのApple IDにひもづくMacとiPhoneがクラウドでつながり、連係カメラの機能を実現します

macOS Mojave以降、iOS 12以降から実現したMacとiPhone/iPadによる連係カメラがこのたび機能を拡張し、iPhoneをビデオ会議のWebカメラとして使えるようになります。

さらに、超広角カメラを搭載するiPhone 11以降の機種を組み合わせると、iPhoneがオーバーヘッドカメラのようになり、ユーザーの顔画像と一緒に手元の様子を同時に写せる「デスクビュー」アプリも加わります。

iPhoneとMacは無線・有線の両方の接続に対応

新しい連係カメラの利用には、macOS 13 VenturaをインストールしたMacと、iOS 16をインストールしたiPhoneが必要です。

MacとiPhoneの双方でWi-FiとBluetoothを有効にすると、対応するデバイス同士が自動で無線通信を始めて互いを認識。接続プロセスが完了すると、連係カメラが使えます。あるいはLightning-USBケーブルにより、iPhoneをMacに接続して有線接続で使うこともできます。

  • MacとiPhoneを近づけて、最初にビデオ会議アプリを立ち上げると、連係カメラ機能の使用を訪ねてきます。一度設定を済ませれば、以降ほかのビデオ会議系アプリを使う時にはカメラの切り換え操作のみ必要になります

デスクビューアプリはiPhoneの超広角カメラを使うことから、先述の通りiPhone 11以降の機種であることが条件になります。一部のカメラエフェクトは、対応するiPhoneがさらに限定されます。以下で各内容を詳しく説明します。

機器連携がとてもシンプル

Apple M1チップの登場以来、MacBookシリーズが搭載するFaceTime HDカメラの画質もかなり良くなりました。正直に言って、わざわざiPhoneを外付けカメラとして使う必要もないのでは、と筆者も考えていました。

ところが、実機で連係カメラを試してみると、さすがAppleデバイス同士と褒めてあげたくなるほどシンプルな使い勝手が実現されていて、積極的に使いたくなります。これは「アリ」だと考えを改めました。

  • ビデオ会議系アプリの設定メニューから、使うカメラをiPhoneに切り換えます

画質の向上を実感できるかは、使うMacの機種にもよると思います。macOS Venturaが入れられるIntel製チップ搭載のMacであれば、そのメリットがより強く感じられそうです。

ベルキンからMagSafe対応アクセサリーが登場

連係カメラはiPhoneのメインカメラを使います。MacのFaceTime HDカメラが搭載されている位置あたりでiPhoneのカメラを固定できれば三脚などを使っても構いませんが、今回はベルキンが連係カメラのために開発を進めている専用アクセサリーを早めに入手できたので、こちらを使ってテストしました。

  • ベルキンが発売を予定する連係カメラ用のMagSafe対応ホルダー

本製品は、MagSafeに対応するiPhone 12以降の機種に装着するマグネット式ホルダーです。iPhoneの背中にペタッと付けて、本体からフックを引き出してMacBookのディスプレイに載せるシンプルな使い勝手としています。通電箇所や回転機構は持ちません。そして、iPhoneを充電する機能もありません。Apple純正のMagSafe対応iPhoneケースであれば、iPhoneに装着したまま本製品を付けて、Macに載せられました。

筆者が手計測した直径は約6cm前後、質量は34g前後でした。価格や発売日については今のところ明らかにされていません。

  • iPhone 13の背面にマグネットで吸着します

  • アップルの純正ケースの上から装着可能

  • 背面のフックを引き出してMacBookのディスプレイに載せます

  • MacBook Airに装着。よほどパネルを傾けなければしっかりと座って安定します

  • 収納できるリングもあります。スマホリングやスマホスタンドとして活躍できそうです

Zoomで連係カメラを試した

今回のテストのため、macOS Venturaを入れたM1 MacBook AirとiOS 16入りのiPhone 13を用意しました。

MacにiPhoneを近づけてZoomアプリケーションを立ち上げると、iPhoneをWebカメラとして認証するように促すオンボードダイアログがMacの画面に表示されます。ここで連係カメラを有効化すると、iPhoneのカメラとマイクがZoomの入力デバイスになります。

連係カメラの使用中はビデオ会議等のコミュニケーションに集中できるよう、スマホに届く通知がすべてミュートされます。電話の通知はMacに転送されます。

FaceTime HDカメラとiPhoneのカメラによる画質を比べてみました。M1チップに統合されている画像信号プロセッサのデキがよいためか、画質に大きな差は感じませんでした。iPhoneによる連係カメラに切り換えると色の彩度がアップして、肌つやがよくなる印象はあります。通信回線が安定している環境で、Apple Studio Displayなどより解像度の高いディスプレイで映像を見比べれば、違いが明らかになるかもしれません。

  • ZoomアプリにiPhone 13のカメラを接続。肌の色が鮮やかになります

  • M1 MacBook AirのFaceTime HDカメラ。解像度は引けを取りませんが、色味はあっさりとしています

iPhoneは縦横どちら向きにしても連係カメラが使えます。縦向きにすると、画面は被写体の人物にズームインした表示になります。

  • iPhone 13を縦にして撮影。被写体の人物にズームインします

  • iPhoneを縦にした状態。ベルキンのホルダーには回転機構がないので、ペタッと貼り直す感じになります

  • 連係カメラはiPhoneを手で持ちながら撮影してもOK

  • 連係中、iPhoneの画面にはMacに接続中であることが表示されています

iPhone連係で使える「3つのビデオエフェクト」

コントロールセンターから各種ビデオエフェクトが選択できます。

常にカメラフレームの中央に人物を捉えるように追いかける「センターフレーム」は、その機能をビルトインしていないMacに、連係カメラが便利な機能を追加してくれる好例です。こちらは、超広角カメラを搭載するiPhone 11以降との組み合わせで使えます。

カメラに写る人物の背景に自然なボケ効果を付ける「ポートレートモード」は、Mac単体ではAppleシリコン搭載機だけで使えました。連係カメラがあれば、iPhone XRと第2世代のiPhone SE以降の機種を組み合わせることで、すべてのmacOS Ventura対応Macで利用できます。

  • 「ポートレートモード」をオンにすると、背景にボケ加工が付きます

さらにiPhone 12以降の機種であれば、人物の顔を明るく、周囲を暗くして引き立たせる「スタジオ照明」の効果が選択できます。

  • 背景を少し暗くして、人の顔を明るく見せる「スタジオ照明」。3つのエフェクトを同時にかけることもできます

iPhone 12以降であれば、センターフレームを含む3つのビデオエフェクトを同時にかけることもできます。3つのエフェクトを同時にオンにしても、カメラの映像はカクつかず安定していました。