大工にしても料理人にしても、道具の良し悪しが効率と結果に直結する。それはプログラマーやライターなどPCと対峙する時間の長い面々にとっても同じこと。使いやすいキーボード、手指にしっくりくるキーボードが“いい仕事”を生み出す。

そんなキーボードにおいて横綱級の評価と実績を持つ東プレ・REALFORCEの最新版「REALFORCE R3」に、Mac用配列モデルが登場した。実機を試した中で面白かったポイントを紹介したい。

  • REALFORCE R3 Mac用配列モデル。今回試したのはフルサイズの日本語配列モデル「R3HE11」だ。直販価格は34,980円

    REALFORCE R3 Mac用配列モデル。今回試したのはフルサイズの日本語配列モデル「R3HE11」だ。直販価格は34,980円

あの「REALFORCE R3」にMac用配列モデル登場

業務用キーボードで名を馳せる東プレが、2001年に発売したコンシューマ向けキーボード「REALFORCE」。キースイッチは業務用と同じく静電容量無接点方式を採用、さらに東プレ独自の機能を搭載することで揺るぎない評価を確立した。

静電容量無接点方式では、物理的な接点が存在しない。キーを押すと下部にある円錐スプリング(コニックリング)が変形し静電容量が変化、その値が一定レベルを超えたときにキー入力として認識されるしくみだ。

そのメリットのひとつは、耐久性・信頼性に優れること。金属電極の直接接触がなくバネも必要ないから摩耗・変形が少なく、ホコリも入りにくい。内部に接点がないから、キータッチが軽い/スムースというメリットもある。

そしてもうひとつは、同じキーが何度も入力される「チャタリング」が発生しにくいこと。構造がシンプルな他方式と比べると値段は高くなりがちだが、得られるメリットも大きいのだ。

そしてREALFORCEシリーズには、東プレ独自の「アクチュエーションポイントチェンジャー(APC)」が用意される。アクチュエーションポイント、すなわちキーを押し込んでから反応するまでの距離を、専用アプリを使えば0.8/1.5/2.2/3.0mmの4段階に設定できる。

このAPCはキーごとに設定できる。高速入力が必要なキーは反応位置を浅めに、誤って押しがちなキーは深めにすることで、入力スピード向上およびタイプミス軽減を図れるというわけだ。

  • 右上にはAPC切り替え用のキー(F19)がある

2021年11月発売のシリーズ第3世代となるREALFORCE R3は、有線/無線など接続方式やテンキーの有無などが異なる20種でスタート。2022年3月には英語配列がくわわり、この6月にはoption/commandキー付きのMac用配列モデルがラインナップにくわわった。基本機能はBluetooth/USB接続の(Windows用)ハイブリッドモデルと同じだが、スイッチ音は静音型のみとなる。

Mac用配列モデルは日本語配列と英語配列の2種類あり、それぞれにフルサイズとテンキーレス、2種類のカラーバリエーション(ブラック&ダークシルバー、スーパーホワイト&ライトシルバー)の計8タイプが展開される。ちなみにR3シリーズの価格帯はおおむね20,000円~35,000円といったところだ。

  • 裏面の滑り止め凹凸付きラバーシートは、R2のときに比べ2枚増えている

見事な安定感、APCやキーマップで自由自在にカスタム

レビューにあたり利用したのは、レーザー刻印日本語配列/テンキーあり(112キー)のブラック&ダークシルバーモデル。型番はR3HE11、R3シリーズの命名ルールから有線・無線ハイブリッドの静音タイプでキー荷重が45gであることがわかる。

なお、同じテンキーあり/112キーのスーパーホワイトモデルは「R3HE21」、テンキーなし/91キーのブラックモデルは「R3HG11」でスーパーホワイトモデルが「R3HG21」だ。

第一印象は「ずっしり」。箱の段階から重く、取り出してもなお重い。“高級”とされるキーボードは、強めにタイプしても位置がずれないようなんらかの対策を講じているものだが、R3シリーズでは基板の下に鉄板を配置することで重量を稼ぐ。単3形乾電池2本装着後の実重量は1,572g、M1チップ搭載のMacBook Air(1.29kg)と比べてもだいぶ重い。

Macと接続する前に試打してみたが、さすがの安定感。約1.5kgという自重にくわえ、裏面の四隅に貼られた滑り止め凹凸付きラバーシート――R2では計4枚だったものがチルトスタンド使用時を考慮し計6枚に増えている――の効果もあり、キーをターンと叩いたところでピクリとも動かない。側面/下面を強く押してもわずなかズレすら生じないほどだ。

キー配置はシリンドリカル・ステップ・スカルプチャー構造で、中央がやや凹んだキーが段差をつけて並ぶ。キーピッチは実測19mm、アルファベットキーのキートップは縦14.1×横12.0mm、細かい凹凸が施され布地のような感触だ。

  • シリンドリカル・ステップ・スカルプチャー構造

  • キートップには細かい凹凸があり、独特の感触をもたらす

まずはMacBook Airに有線接続し、メールの返信を書き始める。フィーリングは以前テストした「REALFORCE for Mac テンキーレス PFU Limited Edition」と似て“カチャカチャ”というより“スコスコ”、打鍵音は控えめだ。デフォルトのストローク設定は筆者にとって若干深めに感じられたため、REALFORCEシリーズの売りであるAPCで調節することにした。

APCの設定変更に利用するのは「REALFORCE R3ソフトウェア」。デフォルトではキーストローク判定が2.2mmに設定されているが、このソフトを使えば0.8/1.5/2.2/3.0mmの4段階で変更できるのだ。

早速0.8mmを選択、メール作成画面に戻ると、確かに感触は変わる。ストロークが浅くなったぶんタイプ速度はアップ、軽やかに作業できる。112あるキーのすべてではなく「A」と「S」だけ浅く/深くする、といったカスタマイズも可能だから、よほど“手クセ”が強いユーザでも、好みのポジションに落ち着くのではないか。

  • APCは4段階に変更可能、キーストロークの状態も右側の棒グラフでリアルタイムに確認できる

  • MY REALFORCE画面では、キーを押した回数でヒートマップを表示できる

APCで調整した結果、落ち着いたのは1.5mm。0.8mmはやや浅いし、MacBook Pro内蔵キーボードに慣れてしまった身としては、2.2mmはやや深い。幸いAPC設定は2つまでREALFORCEに保存できるし、右上のAPCキーを押すたびに設定をトグルできるから、ゆっくり自分のベストポジションを決めればいい。

カスタマイズ性という点では、「キーマップ入れ替え」が個人的に楽しめた。修飾キーやファンクションキーのみならず一般キーまで、REALFORCE上のあらゆるキーを入れ替え(正確にはキーコード設定、だから1つのキーの機能を複数のキーに持たせることも可能)できるという優れモノだ。

F13~F18などMacでは使わないファンクションキーに適当な機能をアサインしてもいいし、誤って押してしまいがちなCAPS LOCKを無効化してもいいだろう。よりMac仕様にカスタムすればさらに快適に使えそうだ。

  • あらゆるキーにキーコードを設定できる「キーマップ入れ替え」

キーボードというデバイスは慣れの部分が多いとはいえ、プログラマーやライターにとっては長い時間を共にする職人の道具であり、こだわりたいもの。

その点、このREALFORCE R3(Mac用配列)は静電容量無接点方式、4段階に変更できるキーストローク判定、キーマップ入れ替えなどカスタマイズ性が高く、あらゆる"職人"の要望に応えてくれそう。有線/無線両対応ということもあり、長く共に過ごせそうな1台だ。