自宅やスタジオ、ライブハウスあたりを主戦場としているギタリスト諸兄に人気のコンパクトエフェクター。手軽、身軽に良いサウンドを追い求めるとなると、どうしても足元で完結させたくなるので、この流れはある意味当然といえる。そして長年、各メーカーが製品を充実させている群雄割拠のジャンルに、フェンダーが9つの新作コンパクトエフェクターをぶち込んできたのはみなさんご存じの通り。
扱いやすいサイズ感と前評判の良さで気になっていた人も多いはずだ。今回はメーカーのご厚意でなんと全種類のレビューが可能となった。歪み系、空間・モジュレーション系の2回にわけてとお届けしたいと思う。では早速、歪み系エフェクターの気になる中身を見ていこう!
フェンダーの伝統を受け継いだ小さくて憎いやつ
62(W)×111.8(H)×55.9(D)㎜というコンパクトサイズで、ちょっとノスタルジックなシルバーを基調としたデザインが魅力的なフェンダーの最新エフェクター「Hammertone Series」。ジャックのイン/アウト、フットスイッチの位置も統一されており、ボードに並べた際にとてもまとまりが良い。
使い勝手が良さそうなことはもちろん、機能も素晴らしく、すべての製品がトゥルー・バイバス使用となっているため、ギターが持つ本来のサウンドを一切損ねることなく、アンプへ届けてくれる。もちろん、それぞれのサウンドにはフェンダーが培ってきたノウハウを惜しみなく投入しており、そのクオリティの高さには驚くばかり。そして、ユーザーにとって気になるコストに関しても、歪み系がメーカー希望小売価格で8,800円、空間系が11,000円と、実にリーズナブルな設定となっている。エフェクターとしての品質の高さとコストバリューを併せ持った、コンパクトエフェクターが「Hammertone Series」だといえる。
どんなエフェクターがある?
「Hammertone Series」は全9種類、歪み系の「Hammertone Fuzz」、「Hammertone Overdrive」、「Hammertone Distortion」、「Hammertone Metal」の4種類と、空間・モジュレーション系の「Hammertone Chorus」、「Hammertone Flanger」、「Hammertone Delay」、「Hammertone Space Delay」、「Hammertone Reverb」の5種類となっている。
どのような製品なのかはこれから解説するが、このシリーズだけでも音作りを完結させられるだけの実力を持ったエフェクター群となっているので、足元の統一感を持たせたいという人にもおすすめ。ワンポイント起用するのもよし、サウンドメイクのすべてを任せるもよしの万能選手に仕上がっている。それでは、さっそくどのようなエフェクターに仕上がっているかレビューをお届けしたいと思う。
では、歪み系エフェクターレビュー、いってみよう!
全種類を一度に掲載するには無理があるので、今回は、歪み系の4種類をレビューする。
Hammertone Fuzz
このファズはいわゆる60~70年代のロックンロールサウンドに代表されるような、ザラっとした歪みや唸るようなトーンを再現したエフェクターになる。筆者も好きでよく使う種類の歪みになるが、このエフェクターはかなり良く出来ていて、ありがちな低音のやせ細りや、詰まり感がまったくない伸びのあるトーンも魅力。動画ではストラト(シングルハム)での試奏をお届けしているが、ハムバッキングとも相性が良く、古き良きサウンドというよりも、「今使ってもいいかも」と思えるなかなかの完成度が感じられるエフェクターだ。
サウンドメイクはシンプルで、トーンとファズの二つのノブでコントロールするだけなので、サウンドを一発で決められるタイプなのも好印象。面白いのはオクターブ上のFUZZ回路がミックスされるという「オクターブファズモード」が搭載されていて、エフェクターのパネルにあるミニスイッチでオン/オフすることが可能。これをオンにすると、ワンランク太い音が再現でき、特にリードプレイでの艶やかさが増すのが魅力だ。FUZZトーンがますます好きになりそうな製品だと思う。
Hammertone Overdrive
このオーバードライブはトーン、ゲインの二つのノブでコントロールするほか、「プリミッドブースト」ノブが搭載されていることからもわかるように、ブースターとしても利用できるエフェクターになる。
オーバードライブとして使いたい場合はプリミッドブーストを下げて、ゲインを上げればOK。逆にブースターとして使う場合はゲインを下げて、プリミッドブーストを好みのレンジまで上げてやればよい。動画では同じシリーズのディストーションと絡めてサウンドチェックをしているが、チューブアンプとの相性もよく、オーバードライブ単体としてもブースターとしても良く出来ている製品と感じさせてくれた。王道的なサウンドなので少し面白味に欠けるが、安定感や多用途が欲しいギター弾きにはぴったりの効果が得られるのでおすすめだ。
Hammertone Distortion
このシリーズの中で、一番使い勝手がよいのがこのディストーション。音色作りに使用するコントロールノブはトレブル、ベース、ゲインなので、こちらもシンプルで迷うことなく好みのサウンドが作れる。ジャンルを問わない素直な歪みなので、ハードロックもポップスも演奏するジャンルの幅が広いギタリストに最適だ。
ブースターとしてプリミッドブーストで持ち上げたオーバードライブと組み合わせると、伸びと艶やかさが増してリードプレイに厚みが出る。それでいてノイズが少ないのもうれしいところで、フェンダーの開発力を垣間見ることができる仕上がりになっている。価格帯からも某有名ブランドのディストーションのよきライバルになりそうな予感がしてくる出来だ。
Hammertone Metal
モダン系のサウンドが好みなら迷わずこれを選ぶことになる超個性派のエフェクター。ハイ、ローのコントロールで最大15dbのブースト、カットができるという今どきの仕様も魅力だが、一回弾いただけでわかる圧倒的な歪み量を感じると、ついつい7弦ギターを引っ張り出してくるか、少なくともドロップDにしたくなる衝動に駆られてしまう。
動画ではサウンド比較の意味もあるのでストラトのまま弾いたが、実際にはハムバッキングとの相性が抜群でミュートとオープン時のニュアンスもばっちり再現できるので、今どきのギター弾きにも納得の仕上がりになっている。モダン系のサウンドを探している人はぜひ一度試奏していただきたいエフェクターだ。
【動画】レビュー動画はこちら
総論として、歪み系エフェクターの4種はどれも使い勝手がよく、これさえあれば現在のミュージックシーンのあらゆるジャンルに対応できると言い切ることができるぐらいの完成度の高さを感じさせてくれる仕上がりだった。これらの歪み系エフェクターがこの品質の高さで8,800円という希望小売価格なのは間違いなくコスパ最強を名乗れる製品だと思う。
さて、次回は引き続き「Hammertone Series」の空間・モジュレーション系エフェクター5種のレビューをお届けしたいと思う。