若年層を中心としたオンライン販売比率の向上や安価なオンライン専用プランの登場、スマートフォンの普及やコロナ禍による後押しを受けて生活に関わるサービスのデジタル化が急速に進んだことなどにより、携帯キャリアが展開するキャリアショップの役割は近年変わりつつあります。

  • 7月27日に開催された小田原市×ソフトバンクの屋外型スマホ教室を見学した

    7月27日に開催された小田原市×ソフトバンクの屋外型スマホ教室を見学した

たとえば、7月27日には大手3キャリアの店舗でマイナンバーカードの申請サポートが始まりましたし、他社ユーザーも歓迎の「スマホ教室」の実施店舗を見かける機会も数年前より大幅に増えました。単なる販売拠点や自社製品のサポート拠点には留まらず、デジタルデバイドを解消する“駆け込み寺”のような役割が関係省庁を含む各所から期待されているといえます。

今回は、小田原市とソフトバンクによる一風変わった屋外体験型スマホセミナー「はじめよう。スマートフォン。おでかけ講座」を見学しました。

  • 参加者は15名。すでにスマートフォンをお持ちの方も

    参加者は15名。すでにスマートフォンをお持ちの方も

「スマホ教室」を屋外で開催する意義

スマートフォンを自力で使いこなせる若い世代にとっては、なかなかこの手の講座の中身を知る機会は少ないでしょう。冒頭で触れたような背景から考えると、「スマートフォンを使えないと不便な時代になってきたから、最低限は使えるようにならないと」というような義務感に駆られて嫌々覚えるようなイメージを持たれるかもしれませんが、過去に何度か見学してきた筆者の印象としては真逆。どの回にお邪魔しても、新鮮な体験に驚きながら楽しく学ばれている方が非常に多いのです。

  • 基本操作の説明に終始せず、スマートフォンの便利さや楽しさを知ってもらえるようなカリキュラムになっている。上の写真は、カメラ機能を体験している様子

    基本操作の説明に終始せず、スマートフォンの便利さや楽しさを知ってもらえるようなカリキュラムになっている。上の写真は、カメラ機能を体験している様子

講座の内容そのものも、初歩的な操作から順を追って単調に説明していくのではなく、まずは「スマートフォンに変えたらこんなこともできるんだ」という楽しさや便利さの一端を知ってもらう内容になっています。

ここまでは、キャリアショップや貸会議室で開かれる通常のスマホ教室でも実現されていることですが、目玉機能として訴求されることが多いカメラやマップ(ナビ)などはやはり、狭い室内で操作を学びながら想像をふくらませるよりも、日常生活に近い場面で体験してみたほうが良さを実感しやすいでしょう。

  • 大勢のスタッフが待機し、分からないことがあればすぐにフォローに駆けつけていた

    大勢のスタッフが待機し、分からないことがあればすぐフォローに駆けつけていた

端末はシンプルスマホ……ではなく普通のスマホ!? 設定に技あり

今回のイベントには、すでにスマートフォンをお持ちの方を含む15名の方が参加。小田原市の公民連携拠点「おだわらイノベーションラボ」に集合し、基本操作を学んだ後、街に出て実際に機能を試してみるという流れで行われました。最高気温30度を超える真夏日、室内での授業を含めて約2時間の長丁場でしたが、どなたもとても元気に、そして学習意欲旺盛に取り組まれている姿が印象に残りました。

スマホ教室ではシニア向け端末の「シンプルスマホ」シリーズを使う回もあるのですが、今回の体験用端末はGoogle Pixel 5a (5G)、ごく普通のスマートフォンです。

ただし、フォントサイズやホーム画面のアイコンサイズはあらかじめ拡大されており、ナビゲーションバーもスワイプ操作が必要なジェスチャータイプではなく、操作になじみやすい3ボタンタイプに設定されていました。

  • 体験用端末はGoogle Pixel 5a (5G)。表示の拡大など、見やすく使いやすい状態で準備されていた

    体験用端末はGoogle Pixel 5a (5G)。表示の拡大など、見やすく使いやすい状態で準備されていた

ここまでは、筆者も「もし操作に不慣れなご年配の方にスマホを渡すなら、この設定はしておきたいよね」と思いつく項目でしたが、よく観察すると「高コントラスト テキスト」(文字に縁取りが付いて読みやすくなる機能)など、かなりマイナーなユーザー補助機能まで駆使した万全の状態で手渡されているのです。ここまで行き届いた対策ができるほどのノウハウが蓄積されているのなら、スマホ教室をきっかけにシニア向けではない普通のスマートフォンを買ってきたとしても家族は安心できるだろうなと感じました。

今回の主な体験項目は、Googleマップ、Googleアシスタント、Googleレンズ、カメラ、LINE、PayPay。本来、キャリアショップでの操作案内などのサポート対応であれば、何かあった際に責任を取れない外部アプリに手を出すのはご法度ですが、LINEやPayPayのような「スマートフォンに変える理由」になり得るレベルの大手サービスを自社系列に抱えていて大手を振ってレクチャーできるのはソフトバンクの強みかもしれません。

  • よく見ると、単にフォントサイズや表示サイズを拡大しただけではなく、高コントラストテキストなどのユーザー補助機能も使って整えられているようだ

    よく見ると、単にフォントサイズや表示サイズを拡大しただけではなく、高コントラストテキストなどのユーザー補助機能も使って整えられているようだ

マップやカメラなど、外に持ち出してこそ分かるスマホの便利さ

室内での授業を終え、いざスマートフォンを持って外へ。まずはGoogleマップのライブビュー(AR機能)を使い、実際の風景に重ねて道案内を表示できる機能を体験しつつ、小田原城へと向かいます。

Googleマップは屋内型のスマホ教室でも反応の良い“鉄板ネタ”といえるサービスですが、屋内の場合はストリートビューなどで「思い出の場所や行ってみたい場所をこんな風に現地さながらに見られるんですよ」という話が中心。実際に移動しながら、日常生活に根差したマップ/ナビアプリとしてのリアルな便利さを知れるのは屋外型だからこそです。

  • 街に出てGoogleマップのライブビュー(AR)機能を体験

    街に出てGoogleマップのライブビュー(AR)機能を体験

小田原城に着いた後は、スマートフォンのカメラを使った撮影タイム。通常モードでの撮影に留まらず、最新の画像処理技術が注ぎ込まれたGoogle Pixelならではのポートレートモード(背景ぼかし)も試し、本格的なカメラで撮ったようなボケのある写真に驚かれていました。

また、GoogleアシスタントやGoogleマップの音声入力で「話して検索する」、Googleレンズで「撮って検索する」といった操作も体験項目に含まれていました。便利だな、すごいなと感じてもらうだけでなく、「もしかしたら私でも使えるかも」と安心してもらう意味でもインパクトの大きい機能です。

  • 小田原城に到着。スマートフォンのポートレート機能を使った撮影会のはじまり

    小田原城に到着。スマートフォンのポートレート機能を使った撮影会のはじまり

  • 撮った写真をLINEでシェアする体験も

    撮った写真をLINEでシェアする体験も

  • こちらはGoogleレンズ。城内の案内板を使い、翻訳機能を試していた

    こちらはGoogleレンズ。城内の案内板を使い、翻訳機能を試していた

今回のような地域連携型のスマホ教室は、自治体個別の取り組みや総務省の利用者向けデジタル活用支援推進事業によるものなど、幅広く展開されています。前半でも少し触れたように、この手の教室は習い事のような感覚で、楽しみながら新しい物に挑戦してみたいという参加者が多いです。もしまだスマートフォンを持っていないシニアのご家族がいらっしゃれば、すぐにスマートフォンを持つかどうかは一旦置いておき、まずは気軽に参加してみることで良い刺激を受けられるのではないでしょうか。

  • 屋外型に限らず、スマホ教室はまず一度参加してみるだけでもデジタルへの苦手意識を軽減できると思う

    屋外型に限らず、スマホ教室はまず一度参加してみるだけでもデジタルへの苦手意識を軽減できると思う