高性能ながら手ごろな価格のスマートフォンで知られるOPPOですが、一部のハイエンドモデルは残念ながら日本への投入が見送られています。独自開発の最新チップ「MariSilicon X」を搭載してカメラ性能を重視した「Find X5 Pro」もその1つ。どれだけの性能を持つモデルなのか、日本にも導入してほしいと感じる仕上がりなのか、カメラ機能の仕上がりを大浦カメラマンにチェックしてもらいました。

  • 充実した撮影機能を搭載しているOPPOのハイエンドモデル「Find X5 Pro」。背面のOPPOのロゴの左には、ハッセルブラッドのロゴが。写真愛好家なら見逃せない部分です。背面はセラミック製とのことです。現時点で日本での販売予定はなく、今回入手したのは海外版の端末のため、機内モードにしたうえで試用しました

背面カメラは3つ、デジタルズームで最大1040mm相当の超望遠撮影も

OPPOの製品といえば、比較的手ごろな価格帯のAndroidスマートフォン、というイメージを持つ人が多いかと思います。ところが、同社のサイトなど見るとハイスペックなモデルもラインナップされており、なかでもフラッグシップのFind Xシリーズは基本的な性能の高さに加え、カメラのスペックも大きく向上させたモデルとなっています。今回、Find Xシリーズの最新モデル「Find X5 Pro」のカメラ機能をトライアルする機会が得られましたので、ご紹介したいと思います。なお、Find X5 Proは現時点では日本未発売となります。

  • ディスプレイは6.7インチと大きく、撮影にも適しています。搭載するOSはAndroidをベースにしたColorOS、ストレージは256GBとなります。本体サイズは163.7×73.9×8.5mm、質量は218g

Find X5 Proが搭載するカメラは4つ。背面のアウトカメラが3つ、前面のインカメラが1つとなります。ここでは、おもにアウトカメラを見ていきたいと思います。まずは、それぞれのスペックをチェックしましょう。

  • NPUである「MariSilicon」の名が記されたカメラ部。レンズは左端より時計まわりに超広角カメラ用、望遠カメラ用、広角カメラ用となります

  • カメラ部は少し膨らんでいます。レンズ先端のみが飛び出したものより、こちらのほうがスマートな印象がします

アウトカメラの1つ目、5000万画素の超広角カメラは、35mm判換算で15mm相当の画角となるレンズを搭載。開放値はF2.2。その画角は、気をつけないとスマートフォンを持つ指が写り込んでしまうことがあるほど広いもの。超広角レンズ特有のダイナミックな遠近感や画面の広がり感は圧倒的で、普段見慣れた風景でもこのカメラで撮ればちょっと違って見えてしまうほど。独特の写りから使うのが癖になってしまうかもしれません。

2つ目となる5000万画素の広角カメラは、35mm判換算で25mm相当の画角となります。開放値はF1.7。日常的な使用は、画角的にもこのカメラになるかと思います。特徴としては、3つのカメラのなかで唯一手ブレ補正機構を備えていること。3軸のセンサーシフト方式の手ブレ補正機構と、2軸のレンズシフト方式の手ブレ補正機構により、5軸の手ブレ補正として作動します。暗い場所での撮影や夜景のほか、通常の撮影でもたいへん心強く思えるものです。同時に、小さなイメージセンサーや光学系によく手ブレ補正機構を入れたなと感心してしまいます。

なお、イメージセンサーは超広角カメラ、広角カメラとも、ソニーの「IMX766」を採用しています。センサーサイズは1/1.56インチ。有効画素数は前述のとおり5000万画素ですが、さすがにそれでは内蔵するストレージがすぐにいっぱいになってしまうので、デフォルトでは1200万画素での記録としています(今回掲載した作例も1200万画素となります)。

3つ目の1300万素の望遠カメラは、35mm判換算で52mm相当の画角となるレンズを搭載。果たしてこのレンズが“望遠”であるかどうかは別にして、他の2つのカメラと比べると十分狭い画角であることは事実です。開放値はF2.4。こちらのイメージセンサーは1/3.4インチのサムスン電子製「ISOCELL 3M5」を採用しています。20倍まで可能とするデジタルズーム機能を使えば、最高1040mm相当の超望遠撮影が楽しめます。

  • 左から15mm相当の超広角カメラ、25mm相当の広角カメラ、52mm相当の望遠カメラ、望遠カメラのデジタルズームでの最高画角(1040mm相当)の比較写真となります。カバーする画角の領域が実に広いことが分かります

参考までに、インカメラは3200万画素、センサーサイズは1/2.74インチ。イメージセンサーはサムスン電子製の「ISOCELL JD1」を採用しています。カメラは本体正面左上に搭載され、基本自撮りがメインとなるためか、レンズの画角は超広角といえる21mm相当としています(開放絞り値はF2.4)。

ハッセルブラッドらしいモードも用意

カメラ機能で注目したいのが大きく2つ。

まず1つ目が、OPPOが自社開発した最新NPU「MariSilicon X」の搭載です。AIによるシーン認識や画像処理などを行うとしています。撮影モードとして、デフォルトの「写真」のほか「夜景」「動画」「写真」「ポートレート」を搭載していますが、「夜景」では生成された画像を見る限りHDR処理を施すようで、誰もが納得するような適切な明るさと美しさに仕上がります。処理にかかる時間は極めて短く、専用のエンジンならではと思えるところ。「ポートレート」では「バックグラウンドブラー」機能で背景をぼかすことができ、さらに肌をみずみずしく明るいものとします。ボケの大きさは調整が可能なのも便利に思える部分です。この背景の「バックグラウンドブラー」は人物以外でも有効で、被写体を背景から浮き立たせたることができます。

そしてもうひとつが、このカメラ機能の開発には老舗カメラメーカーのハッセルブラッドが関わっていることです。その証として、本体背面にはOPPOのロゴの横に同社のロゴが描かれているほか、撮影モードの「その他」にある「PRO」のアイコンには、よく見ると同社のロゴである「H」のマークが入っています。カメラ好きにはたまらない部分といえます。昨今、ドイツのライカの名を冠したカメラを搭載するスマートフォンも見受けられますが、それにならったものといえます。ただし、ハッセルブラッドがこのFind X5 Proにどのような関わり方をしているのか、現時点では情報がなく不明です。

  • 左は「写真」モードの設定画面。初見でも分かりやすく思えます。右は「その他」のモードで、「PRO」にはハッセルブラッドのHのロゴが入ります。「XPAN」は、かつて発売されていたハッセルブラッドのパノラマフィルムカメラの名前で、Find X5 Proでも横長のパノラマ写真が撮影できます

その「PRO」モードですが、露出の設定などができ、本格的な撮影が楽しめます。設定できる機能としてはISO感度、シャッター速度、露出補正、フォーカス(MF/AF)、ホワイトバランス。お気づきだとは思いますが、絞りは入っていません。もちろん、絞り機構自体はレンズに内蔵されていませんので当然なのですが、「ポートレート」モードの「バックグラウンドブラー」のように背景ボケが作れる機能を入れたら面白かったのにと思わずにはいられません。あくまでも想像ですが、デジタル処理によるボケ表現はハッセルブラッドとしては入れたくなかったのでは、思えます。一方、記録フォーマットはJPEGのほか、RAWおよびRAW+JPEGでも可能としているのは“PRO”らしい部分です。肝心の写り(絵づくり)については、「写真」モードと撮り比べてみた限り、明確な違いは見受けられませんでした。

  • 左は「PRO」モードの画面。ISO感度、シャッター速度、露出補正、フォーカス(MF/AF)、ホワイトバランスなどの設定ができます。右の「ポートレート」のモードには「ぼかし」(バックグラウンドブラー)を搭載。ボケの大きさの目安は、ダミーの絞り値で表示されます

  • 「PRO」モード(左)と通常の「写真」モード(右)の比較。どちらもデフォルトですが、作例を見る限り絵づくりに違いはないようです。おそらくここで言う「PRO」とは、露出やISO感度などが任意で変更できることを述べているのだと思われます

撮影モードの「その他」には「PRO」モードのほか、往年の写真愛好家には懐かしい響きを持つモードも搭載されています。それが「XPAN」。これは、1999年に発売された35mmフィルムを使用するハッセルブラッドのフィルムカメラ「XPan」をオマージュしたと思われるモードです。24×65mmのパノラマ写真を撮ることができたXPan同様、Find X5 Proの「XPAN」モードでもそれに近いアスペクト比の写真を撮ることができます。通常のパノラマモードとは異なり、適度なサイズのパノラマ写真が撮れ、しかも一発撮りですので、日常使いでも楽しめるモードといえます。

  • 「XPAN」モードでの撮影。「パノラマ」モードほど画面は長くならず、しかも通常の撮影と同じ一発撮りですので、日常的に楽しむことが可能です

6.7インチ、3216×1440ピクセルのAMOLEDディスプレイを通して見るスルー画や撮影した画像は鮮明で鮮やか。写真をより美しく見せてくれます。さすがフラッグシップモデルと思わずうなずいてしまうほどですし、スマートフォンで撮影した画像はスマートフォンで見るのが一番よいことを改めて感じさせます。画面が大きいので画像の閲覧のほか、レタッチなどの作業もしやすく思えます。

Find X5 Proが日本で発売に至らなかった理由は分かりませんが、ハッセルブラッド銘の入った本体に、特徴ある3つのアウトカメラの搭載など、日本の写真愛好家に対しも十分訴求できそうに思えますし、本来のスマートフォンとして見た場合でもスペックや作りなどとても魅力的に思えてなりません。

  • 超広角カメラでの撮影。アスペクト比は4:3ですが、それでもすぐ目の前にあるビルの全景を入れることができました。遠近感も圧倒的です

  • 「夜景」モードで撮影。超広角カメラを使用しています。空の色は若干作りすぎの感がなきにしもあらずですが、本来暗くなってしまうお寺の本堂などHDRによりしっかりと再現されています。画面の比率は16:9としています

  • 望遠カメラでの撮影です。「ポートレート」モードを選択し、「バックグラウンドブラー」機能で最大のボケとなるように設定しています。一部合焦部分と背景との境目が不自然な部分もありますが、手軽にボケのある写真を楽しむには十分な機能です

  • 逆光での撮影となります。こちらもHDR機能が働き、黒く潰れてしまった部分などありません。若干、太陽の周りにゴースト、フレアが発生していますが、スマートフォンのカメラ機能としてはよく抑えているように思えます

  • 望遠カメラのデジタルズームによる撮影。スマートフォンの画面で拡大せずに閲覧する分には、解像感の低下などさほど感じません

  • 広角カメラで撮影。スマートフォン任せの撮影ですが、個人的にはちょっとHDRが強く機能しているように思えます。解像感は高く、スマートフォンの画面で見る分には十分といえます

  • ISO1991と感度の表示としては馴染みのない数値での撮影となります。拡大して見るとノイズの発生や画像の荒れは見受けられますが、やはりスマートフォンの画面で見る分には気になりません。広角カメラで撮影

  • こちらのHDRはほどよく効いているように思えます。太陽に向かってスマートフォンを構えて撮影していますが、ゴーストやフレアの発生は見受けられません。超広角カメラで撮影

  • ぐっと被写体に迫って写しています。合焦速度は速く、ストレスを感じるようなことはありませんでした。合焦部分のシャープネスも良好で、精度の高い写りであるように思えます。広角カメラでの撮影となります

  • 陽が落ちてさほど経ってない時間でしたが、「夜景」モードで撮影しました。HDRがほどよく効いており、あまり不自然な感じはしないように思われます。広角カメラで撮影

  • 望遠カメラ+デジタルズームでの撮影となります。露出を切り詰めて撮影しています。デジタルズームによる解像感の低下は見受けられますが、スマートフォンの画面で見る限り、さほど気にならないものです