ついにASRockから、特に日本で大好評を博したというベアボーンキット「DeskMini」の後継モデルが登場しました。なんと2スロット厚(ショート丈)のグラフィックスカードの搭載に対応し、さらなるゲーミングを可能にする高い性能を実現したとのこと。今回6月24日の発売に先駆けて試す機会が得られたので、Intelモデルを借用して組み上げてみました。

  • 今回使ったパーツたち

DeskMiniからDeskMeetへ

そもそもDeskMiniとは、ケースと専用マザーボード、ACアダプタがセットになったベアボーンキット。別途好みのプロセッサとメモリ、ストレージ、OSを用意することで予算・用途に応じた小型PCを組み上げられるという製品で、Intel向けとAMD向けが用意されています。

特にDeskMini発売当時、強力なグラフィックスを内蔵するAMD Ryzen APUシリーズ(Renoir)が投入されたこともあり、DeskMiniを活用することで、小型ながらリッチな性能を安価で手に入れることができました。筆者もDeskMiniの大ファンで、AMD Ryzen 7 PRO 4750G、32GBメモリ、Samsung 960 EVO 500GBを組み込んで愛用中。Windows 11 Proをインストールしても問題なく使えており、DisplayPort端子のおかげで3,440×1,440ドット/144Hzの映像出力にも全く支障はありません。

そんなDeskMiniに、なんとグラフィックスカードの搭載に対応する大型モデルが登場したとあれば、試さずにはいられません。今回は第12世代Intel Coreプロセッサ対応モデルをお借りし、組み上げてみました。

  • 開封!高密度スポンジに包まれた本体とケーブル類がお目見え

  • 内容物。電源ケーブルとSATAケーブル、ネジ類、取説が付属します。多少自作PCに慣れていても取説は必見なので、捨てないようにしましょう

  • 取り出したところ。直方体というよりは立方体に近い印象で、やや分厚く見えます

  • 右側面には通気孔

  • 背面の様子

  • Intel B660モデルでは端子類がとても充実しています。まさかのD-Sub端子が続投

  • 拡張カードは2スロット

付属品を見て「おや?」と感じたDeskMiniファンの方もいるかもしれませんが、DeskMeetにはCPUクーラーが付属しないので、高さ54mmまでのCPUクーラーを別途用意しておく必要があります。今回はアイネックス取り扱いの「IS-40X」を別途用意しました。

  • CPUクーラー「IS-40X」を用意。高さ54mm以下でAMD/Intel両対応の有力モデル

  • ヒートシンクやヒートパイプは真っ黒で、高級感があります。写真ではシールで見えませんが、ヒートパイプが直接接触するタイプです

  • 気を取り直し、DeskMeetのチェックを再開。底面のネジ1本で後ろから引き出せるように改良されています。ただ、縦置きすると手回しネジは使えません

  • 慎重に高密度スポンジと電源ユニットを取り出し、マザーボードを確認

  • LGA 1700ソケットを搭載し、第12世代Intel Coreプロセッサに対応します。電源はおそらくメモリ用を含めて6フェーズ

  • メモリは一般的なサイズのDIMMスロットになりました。DDR4に対応し、奥にはSATAケーブルの端子を備えます

  • PCIe 4.0 x16スロット。すぐ横にM.2 2280スロットを用意しており、こちらもPCIe 4.0に対応

  • 別途M.2 2230サイズのWi-Fiモジュールを用意すればWi-FiやBluetoothも使えます

  • 反対側から。CPUソケットの裏側には十分なスルーホールが設けられており、マザーボードを外さなくてもCPUクーラーを取り付けられました。M.2スロットもあります

搭載パーツには第12世代Intel Core i5-12600K、DDR4 16GBメモリ、M.2 NVMe 500GB SSDを用意しました。ちなみに搭載できるグラフィックスカードは2スロット厚、幅は200mmまでのコンパクトモデルに限ります。今回はASRockから対応するグラフィックスカード「AMD Radeon RX 6600 Challenger D 8GB」もあわせて借りました。

  • CPUを装着

  • CPUクーラーを据え付け、ファンも接続

  • SSDを装着。ヒートシンクは付属していないので、別途用意するのもオススメです

  • メモリはG.SKILLの光るTrident Zを8GB×2搭載

  • グラフィックスカードの取り付けはかんたん。まずスロットのカバーを金属疲労でぐにゃぐにゃにして切り取ります

  • カバーを外して…

  • グラフィックスカードを装着

  • 反対側から見た様子。CPU上部に空間があるように見えますが、ここは電源ユニット搭載エリア。背が高いサイドフローのCPUクーラーは使えません

このグラフィックスカードの搭載スペースには、CPU用水冷クーラーのラジエーターや、ケースファンも固定できるようになっています。とはいえ、組んでみた感じでは水冷クーラーの内蔵は結構難しそう。電源ユニットとの隙間を縫うようにチューブを取り回すには、それなりに高い技術が必要になりそうです。

  • 全パーツを搭載したところで、電源ユニットも組み込みます。固定する前に、ケーブルを繋いでしまうのがオススメ。端子に接続先が書いてあり、とても親切です

  • 左手でしっかり電源ユニットを保持しつつネジを締めて……

  • ケーブルを隙間にうまく取り回して完成です。あとは黒い外装に押し込み、最初に外したネジを締めるだけ

ちなみに、この電源ユニットはDeskMini専用の特別仕様。電源ユニットと各パーツへの距離に最適化した短いケーブルを採用したほか、実はファンの気流が逆向きになっている点もポイント。PCケース内への吸気ファンとして動作しており、エアフローを高めています。

Radeon RX 6600を搭載した性能は?

内蔵GPUで踏ん張る必要があったDeskMiniとは異なり、DeskMeetではディスクリートグラフィックスを搭載可能。これによって大きくグラフィックス性能を引き上げられ、ゲームプレイやクリエイティブ用途にも利用できる点が特徴です。今回はAMD Radeon RX 6600を搭載しているので、3DMarkを用いてかんたんにゲーミング性能をチェックしてみました。

  • WildLife

  • NightRaid

  • FireStrike

この性能を高いと見るべきか、筆者個人としてはとても微妙なライン。もちろん一般的なデスクトップPCよりは十分に小型ですが、フットプリントの大きさが少し気になります。「性能の向上幅」を「サイズの大型化」で割った筆者独自の「サイズパフォーマンス指数」で表現すると、DeskMiniで感じた「この小ささでこんなに高性能」という驚きには一歩及ばない印象でした。

もっとも、DeskMeetへの搭載に対応しそうなコンパクトなグラフィックスカードが少なすぎるため、仕方がない面もあります。ASRock製以外にも目を向けると、一例としてMSIの「GeForce RTX 3050 AERO ITX 8G」は搭載できそう。ただ、これではRadeon RX 6600の性能には叶いません。

もちろん、Radeon RX 6600はGeForce RTX 3060に拮抗するパフォーマンスで、1080pでの快適なゲームプレイを行えます。Radeon RX 6600なら動画ファイルの高速なハードウェアエンコードも利用でき、高負荷なクリエイティブワークフローにも対応します。

  • 動作そのものは当然かなり高速。Speedometerのスコアは189にも及びます

どこに置き、何に使うかが難しそう

グラフィックスカードの搭載に対応し、電源ユニットを内蔵してサイズを8リットルに抑えたDeskMeet。ただ、個人的にはちょっとケースが大きく感じられました。立方体に近いケースはなかなか存在感があり、デスク上には置きにくそう。搭載できるGPUの選択肢が限られていることもあり、用途や設置場所との相談が必要になると思います。

この記事で紹介したIntel向けモデルの価格は37,950円(メーカー想定売価)。AMD Ryzenプロセッサの搭載に対応する「DeskMeet X300」もラインナップしており、こちらの価格は30,690円(メーカー想定売価)です。小型デスクトップPC愛好家への福音となるのか、とても気になる製品です。

  • ゲーム以外の全てを一手に担う、愛用のDeskMini X300と並べてみたところ。高さは控えめですが、試用を通してどうしてもサイズ感が気になりました