Appleは5月10日(米国時間)、「iPod touch」の販売を在庫がなくなり次第終了すると発表した。

現在販売されている第7世代のiPod touch(2019年5月発売)はiPodを冠する唯一の製品であり、販売終了によって、2001年10月登場の初代「iPod」から20年以上にわたって親しまれてきたiPodシリーズがAppleの製品ラインナップから消えることになる。

初代iPodはMP3プレーヤー市場の競争が激化し始めた2001年に、約1,000曲の音楽を収納できる5GBのHDDを搭載した音楽プレーヤーとして登場した(10月発表、11月発売)。大きなホイールを回転させてスクロールし、中央のボタンを押して選択するスクロール-ホイール機構によって、数多くの音楽を収納していていても簡単に聴きたい音楽にアクセスできる。その使いやすさで瞬く間にデジタルオーディオプレーヤーのトップセラーに成長した。2003年にWindows版の「iTunes」をリリース。それまでApple製品ユーザーといえばMacユーザーだったが、iPodからApple製品に触れるユーザーが現れ始めた。

  • オリジナル「iPod」

    2001年末に登場したオリジナル「iPod」

2004年にポータブルな「iPod mini」、2005年にディスプレイを持たない「iPod shuffle」を発売。また、2005年に2GBのフラッシュメモリーを内蔵した「iPod nano」をリリースし、ポータブルメディアプレイヤーのHDDから大容量フラッシュメモリーへのシフトを先導した。そして2007年夏に初代「iPhone」を発売した後、秋にiPhoneと同じタッチとジェスチャーで操作する「iPod touch」を発売した。

将来iPodを冠する製品が再び登場する可能性は残るが、10日にAppleが公開した発表文「The music lives on」は、iPodの約20年の歴史を振り返る同シリーズの終了を思わせる内容になっている。その中でGreg Joswiak氏(ワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデント)は、iPhoneからApple Watch、HomePod mini、そしてMac、iPad、Apple TVまで、今日の全ての製品にAppleは音楽体験を統合しており、「the spirit of iPod lives on(iPodの精神は生き続ける)」と述べている。

iPod touchの販売終了はAppleの歴史の節目となる出来事だが、今日のユーザーの立場でiPod touchは、携帯サービスを契約せずにiOSアプリ/ゲームを使用できるハンドヘルドのiOSデバイスである価値の方が大きい。その役割は今後、コストパフォーマンスに優れるタブレットの「iPad」や、小型タブレットの「iPad mini」が担うことになりそうだ。