アイロボットのロボット掃除機「ルンバ」シリーズから、新モデルの「ルンバ j7+」「ルンバ j7」が登場しました。新しいルンバはさらにかしこくなって、部屋の床にあるコード類、靴下、さらにはペットの排泄物(固形の糞のみ)などを見分けて、避けながら掃除するとのこと。さっそく使ってみました。

  • 「ルンバ j7+」(右側)には、横長になって使いやすくなったクリーンベースが同梱されます。写真左側は床拭きロボット「ブラーバ ジェット m6」

今回使ったのは、クリーンベース付きのルンバ j7+(以下、j7+)です。公式オンラインストア価格は129,800円。クリーンベースなしのルンバ j7(以下、j7)は99,800円です。クリーンベースは、ルンバが集めたゴミをさらに吸い上げて内部の交換式紙パックに溜める装置。ルンバの充電も行います。j7には充電のみのホームベースが同梱されます。

既存モデルと見比べると、ファブリック調の「ルンバ i3」シリーズ、カッパーゴールドでメタリックなデザインの「s9」シリーズとは異なり、ルンバ j7シリーズはブラックとグラファイト調の落ち着いたデザイン。また、クリーンベースは、従来の縦型から横長になりました。後述しますが、これが大きなポイントのひとつです。

  • 前面にカメラを搭載したことは、障害物を認識する精度アップに大きく貢献しています

ルンバ j7シリーズと従来ルンバのおもな違いは次の4点です。

  • カメラを本体前側に搭載
  • 障害物を認識。アプリで確認可能
  • 本体のボタンが1つ
  • クリーンベースのデザインが縦型から横長に

j7シリーズでは、ロボット掃除機の本体前面にカメラを搭載。これにより、より広範囲で障害物を認識できます。床面や、床面に近い位置の障害物もしっかりチェックします。特に、ケーブル類(ヘッドホンのケーブル、電源ケーブル)、ペットの排泄物、靴(スリッパ)、靴下、充電ステーションを認識し回避します。認識できる物体は、今後のアップデートでより高精度に、そして物体の種類も増えていく予定です。

  • LEDライトも備えました

一般的に、ロボット掃除機を動かす前は部屋を片付けて、ケーブル類などをまとめておかないと引っかかってしまう心配がありますが、j7+・j7はケーブルを自動で認識して避けながら掃除するので、引っかからないというわけです。

我が家の場合、子どもが小さいころは「ルンバのためにお片付けする!」とはりきっていたのに、小学生にもなると、片付けずに靴下などを脱いだまま放置するように……。また、パソコンのケーブルやデスクスタンドのコードが垂れ下がっていることも多いので、ロボット掃除機を動かす前に一度子ども部屋をチェックしたり、家の中を片付けていました。この手間がなくなるなら、すごくうれしいですよね。さっそく、j7+がどれくらいかしこく動き回るのか確かめてみました。

床に散らかった物を自動で回避、その様子は?

j7+・j7の障害物認識機能を使うには、スマホの専用アプリ「iRobot HOME」(Android・iOS・iPadOS)と連携させる必要があります。連携後は、最初にj7+・j7で何度か家中を掃除して、マップを作っていきます。我が家の場合、4回ほど掃除させると全体のマップができあがりました。

その後、マップを編集して部屋の名前をつけたり、境界線を指定していきます。こうしておくと、あとから「子ども部屋だけ」「キッチンと書斎だけ」「キッチンのあと、子ども部屋を掃除して、最後にリビング」というように、部屋や順番を指定して掃除できます。

  • 部屋の境界線を作ったり、ルンバを侵入させたくない場所を指定

  • 部屋を指定して掃除できます

では、「プレイルーム(子ども部屋)」を指定してj7+で掃除してみます。パソコンのケーブル、靴下などを置いたまま動かしました。j7+・j7はペットの排泄物も認識するというので、排泄物に見立てた粘土も部屋の床に置いています。

  • パソコンのケーブル、子どもの靴下、粘土も置いてみます

【動画】パソコンのケーブルや粘土(ペットの排泄物のつもり)を避けるように動いています

j7+が子ども部屋を掃除している最中、コードなど障害物を認識すると少しゆっくりした動きになり、障害物からやや距離をおいて回避。その後は障害物以外の場所を掃除していき、掃除が完了するとアプリに掃除結果のレポートが届きます。

障害物があった場所をマップで表示するだけでなく、その障害物がいつもあるものなのか、それとも一時的な障害物なのかを確認できるようになっています。障害物があった場所はあとから掃除をやり直せるため、電源コードなどを移動(片付け)したあと、再びj7+・j7をスタートさせれば、キレイにできるというわけ。

  • 掃除後にマップに障害物を発見した場所が表示されます

  • 粘土も障害物として認識。多分ペットの排泄物だと思っているはず……

ユーザー宅で動かしたj7+・j7の学習情報は、アイロボットのクラウドへとフィードバックできます(個人を特定する情報は送られず、フィードバックしないことも可能)。ユーザーがフィードバックした障害物の情報は、ほかのルンバユーザーの情報と合わせてクラウド上で管理、今後の機能アップに反映されます。

j7+・j7の発売時点で認識するのは、ケーブル類(ヘッドホンのコード、電源ケーブル)、ペットの排泄物(固形の糞のみ)、靴(スリッパ)、靴下、充電ステーションです。

今回、上記以外の障害物を試したところ、ぬいぐるみや大きめのクッションは避けながら掃除してくれました。ペンや鉛筆は認識せず、引きずることに……。また、回避するはずのスリッパは、最初のうちはぶつかってしまうことがありましたが、何度か掃除するうちに学習したようで、ぶつからなくなりました。

  • ぬいぐるみは障害物として認識し、アプリからフィードバックできました

  • 鉛筆やペンはまだ認識せず、そのまま押していきました

  • ケーブル類は、パソコンのケーブル、スマホのケーブルなどをきちんと認識

  • 障害物があって掃除できなかった場所はあとから追加で掃除できます

この機能のポイントは、学習するところ。クラウドには膨大な情報が集まり、それを学習・分析することで障害物の認識精度が高まり、認識できる障害物の種類も増えていくとのこと。個人的には、子ども用のブロックや文房具類は、早く認識できるようになってほしいと思っています。

家具への「当たり」が柔らかく

j7+・j7は本体前面にカメラを搭載したことで、家具などの認識精度も向上しています。具体的には、家具への当たり方が柔らかくなりました。例えば、カーテンがある窓際などは、カーテンに少しずつ近づきながらそーっと距離を縮めて窓際を掃除します。また、テーブルやイスの脚なども、ゆっくりとタッチしています。以前のルンバはガツガツと家具に当たっていくイメージでしたが、これなら家具も傷が付きにくくなったと感じました。

当たり方はソフトですが、家具の脚ギリギリまでブラシを寄せて、いろいろな方向からブラシを何度も当てていきます。掃除が終わって確認すると、脚まわりや壁際はしっかり掃除している印象でした。

【動画】イスなど家具のまわりを掃除するときは優しくタッチ
(音声が流れます。ご注意ください)

  • LEDライトで照らしながら、家具の下や暗い場所を掃除

ただ今回の試用では、j7+がゆっくり動きすぎてカーテンがかかっている掃き出し窓のサンにはまってしまい、助けが必要になることが。何度もはまる場所は、アプリで進入禁止エリアに指定しました。住居の環境にもよるので一概には言えませんが、こんなときアプリから簡単に進入禁止エリアを指定できるのは便利です。ちなみに我が家では、すべての段差にj7+・j7がはまり込むわけではなく、玄関の段差はしっかり避けて掃除できてます。

ラグの掃除は何度かトライしたほうが安心

j7+・j7はフローリングや硬めのラグは得意ですが、低反発で沈み込むような柔らかいラグの掃除は、一度でキレイにするのは少し苦手かもしれません。重曹(微細なゴミを想定)と猫砂(ちょっと大きいゴミを想定)をラグの上に撒(ま)いて動かしましたが、掃除を終了したあとも、まだゴミが少し残っていました。

  • 柔らかいラグの上に重曹と猫砂を撒きました

  • 何度か往復します

  • 猫砂が少し残りました

一方、フローリングなどゴミを吸い取りやすい床は、一度の掃除でもゴミの取り残しがほとんどなくキレイになりました。そこはロボット掃除機の良いところで、自分が掃除をするわけじゃないので、ゴミが取れにくい場所の掃除は一日に複数回掃除をするよう指定するとよいでしょう。

それでも気になるときは、アプリで場所を指定して掃除します。アプリでは「掃除にかかる時間」を確認できるので、予定があって外出するときも確実に掃除ができて助かりました。または、柔らかいラグなどはコードレススティック掃除機を使うようにして、ルンバと併用するのもおすすめです。

  • 掃除にかかる時間をアプリで確認できます

クリーンベースに予備の紙パックをストックできるように

j7+では、クリーンベースが従来の縦型から横長になり、置いたときの圧迫感がだいぶ少なくなりました。クリーンベースは、ルンバ本体のダスト容器に溜まったゴミを自動で吸い込んで、クリーンベース内の密封型紙パックに移していきます。

紙パック1つで30回分のゴミを溜めるので、1日1回の掃除ならゴミ捨ては1カ月に一度。毎回ゴミを捨てなくていいのでとってもラクです。さらに新しいクリーンベースは、クリーンベース内に予備の紙パックを1つストックできるようになりました。これなら交換の作業もスムーズ。

個人的には、たまに交換すると「あれ、予備の紙パックをどこに置いたっけ?」と探してしまうので、1回分だけでなく数回分ストックできてほしい……(ちゃんと管理すればいいことですが)。

  • クリーンベースは充電台も兼ねています

  • レザーのタグがついて、デザインのアクセントになっています

  • 予備の紙パックを入れておけます

クリーンベースをよく見ると、前面にシールが貼ってあります。j7+はこのシールの模様を読み取って(QRコードのようなもの)、クリーンベースの場所を把握しています。ムダなくスムーズに戻れる仕組みですね。

  • シールの模様をルンバが読み取ります

【動画】クリーンベースに戻る動きから吸引まで。動作音は大きめです
(音声が流れます。ご注意ください)

クリーンベースに戻ると、ルンバ本体のダストボックスからゴミを吸い上げます。このときの音が大きいので最初はびっくりします。クリーンベースへの吸い込みをオフにする設定はありません。今回は、家族が家にいない時間帯や全員が外出しているときにj7+を動かしていました。ちなみに、アプリではスマホの位置情報を使って、「外出したらルンバが掃除を開始する」という設定が可能です。

なお、髪の毛などが絡みにくいゴム製のデュアルアクションブラシや、洗えるダスト容器は従来モデルから継続しています。お手入れしやすいのは大きなポイントです。

  • ゴム製の2本のデュアルアクションブラシは髪の毛などが絡みにくく、使い勝手を高めている部分です

  • エッジクリーニングブラシは黒色になって一体感が出ました

  • ダスト容器は外して洗えます

  • ボタンはシンプルに1つだけ。清掃の開始、一時停止、再開ができます

障害物の回避能力は今後の学習が楽しみ

個人的には、ロボット掃除機の掃除が終わったあと毎回本体のダストボックスからゴミを捨てるのは手間だったので、クリーンベースは必須です。ただ我が家の場合、ロボット掃除機はリビングの一番目につく場所に置いていることが多いため、設置性とデザインも重要。j7+のクリーンベースは横長になったことで、今までのクリーンベースよりもインテリアとして考えたときの見た目がだいぶ良くなったと思います。

j7+を試用してみて、掃除性能は満足。掃除する部屋の指定や念入りに掃除したい場所の指定はアプリで簡単にできるので、掃除が足りないと思ったらすぐに動かせばいいのです。アプリは画面も操作もわかりやすくできています。

j7+・j7のウリである障害物の自動回避機能は、今後の学習状況に期待です。ペットの排泄物を回避するのは大きなポイントですが、ペットのいない家庭も多いと思うので、いろいろな物を避けるように育ってくれるとうれしいところ。ちなみに、お菓子やパンの大きめの食べこぼしは、障害物として認識して避けるときもあれば、押してしまうときもありました。湿った食べこぼしを広げてしまうと後始末が大変なので、ペットの排泄物を同じように認識してくれると一層便利になりそうです。