パナソニックは1月19日、賃貸住宅向けサブスクリプションサービス「noiful(ノイフル)」を開始しました。パナソニックの最新家電を何種類かセットにして、賃貸住宅向けに月額料金で貸し出すサービスです。第1号の物件として1月19日から入居者公募を開始した「noiful base 駒込」を見学してきました。

  • 「noiful(ノイフル)」の第1号物件となる賃貸住宅「noiful base 駒込」(東京都北区中里)

noifulは、賃貸住宅のオーナーや管理会社向けのサービス。簡単にいうと、パナソニックの家電が最初からまとめて備え付けられた部屋に入居できるようになるというものです。親元を離れて一人暮らしを始める人や、これから二人暮らしを始めるカップルなど、新しい居住環境が必要な人にとって、noifulを導入している物件はかなり魅力的。

パナソニックが賃貸住宅を運営するのではなく、基本的には賃貸住宅のオーナー(大家)がサービスに申し込み、オーナーは入居者が払う家賃から毎月一定額をパナソニックに払うサブスクリプション型の賃貸住宅向けサービスとなります。

オーナーや管理会社にとっては部件の価値向上、入居者にとっては家電を用意せずに暮らし始められる豊かな住まい方、noifulにとってはリカーリング型の安定・高収益事業の確立――。この三方良しの形をnoifulで目指すとしています。

  • noifulの全体像。入居者、オーナー・管理会社、noifulの三者にメリットのあるビジネスモデルを提示しています

noifulは、大きく2つのサービスにわかれます。1つは物件のオーナー(大家)が準備した部屋にパナソニックが家電のセットを提供する「noiful ROOM」。もう1つは、オーナーや管理会社と一緒に物件をリノベーションして、生活動線や家電の納まり方といった物件のマネジメントまで相談に乗る「noiful LIFE」です。

オーナーから見た場合、noiful ROOMなら部屋が空いたタイミングで部屋ごとに導入していけます。一方、noiful LIFEはマンションやアパートを新築・改築するタイミングに、丸ごと相談する形になると考えて良さそうです。

  • noifulは、noiful ROOMとnoiful LIFEの2つのサービスで構成しています

noiful ROOMにおける家電のセット(家電パッケージ)は、カスタマイズに対応しています。立地・間取り・家賃・入居者像といった物件の特性や、オーナーと管理会社の要望に応じて、家電の種類や点数、月額料金、契約期間などをプランニング。家電の配送・設置・改修費用、そしてアフターサポート・修理・交換費用は、パナソニックの負担となります。

カスタマイズにはかなり柔軟に応じる方針です。例として、部屋中の家電をスマホで操作できる製品でそろえたり、美味しい調理が手軽に作れる調理家電を重視したり、美容家電の充実したパッケージにしたりといった、家電パッケージを企画しています。また、こだわりのハイスペック家電に加えて一人暮らしにちょうど良い生活家電を組み合わせて、リーズナブルながらちょっと豪華な家電も混じった環境なども提案しています。

  • カスタマイズの例

noiful LIFEでは、パナソニックの家電がいろいろな意味で生きるように、デザイン性だけでなく機能や使い勝手まで考えた賃貸物件の空間全体を演出。仲介業務や物件の管理、入居者に優しい敷金・礼金ゼロの物件マネジメントを行います。これにより、物件価値を向上し、家賃単価や入居率の向上に貢献するとしています。

入居者が決まるまでの月額料金はどうなるのかや、家賃単価を上げてもパナソニックに払う月額料金しだいでは、オーナーの収入は減りかねないのではないか、といった疑問も出ると思います。このあたりは基本的にオーナーがメリットを感じられる料金設定で相談に乗っていく形を取るそうです。

高級感あふれる「noiful base 駒込」のモデルルーム

前置きが長くなりましたが、さっそく第1号物件「noiful base 駒込」を。企画から約1年、施工には7カ月かけたそうです。敷金・礼金は、どの部屋も0円! 興味がわいたら、特設サイトをのぞいてみてください。特設サイトは不動産関連企業のイタンジが手がけており、noiful base 駒込の内見や入居の相談、内見予約を申し込めます。また、入居手続きまですべてWebで完結することも可能です。

  • noiful base 駒込の入り口には、ロゴの「n」の字をかたどったデザイン

さて、noiful base 駒込はJR山手線・地下鉄南北線の駒込駅を最寄り駅として(徒歩4分)、閑静な住宅街に立地しています。近所には商店街もあり、池袋まで電車で10分という、なかなか生活しやすい地域ではないでしょうか。建物は地上3階建て。築24年ながら、フルリノベーションによって新築と遜色のない内装に仕上がっています。

賃貸用住戸は2階と3階に3戸ずつ、計6戸です。201号と301号がワンルーム、202号と302号が1DK、203号と303号が1LDKで、このうち303号室はモデルルームとなっています。1階はパナソニックが入り、事務室やプレゼンルーム、プライベートショールームとして利用するそうです。建物全体の管理は野村不動産パートナーズが担当します。

1階の入り口のあと、2階と3階のそれぞれで玄関ホールがあり、各戸用に一畳分ほどの収納(納戸のようなもの)を用意。また、2階の入り口には後述するシェアサイクルのバッテリー充電機があります。

6部屋とも、玄関にはスマートキーが設置されています。スマートフォンやICカードで解錠するほか、カバー下のダイヤルボタンで暗証番号を入力することでも解錠できます。

  • 3階の廊下

  • ここでは交通系ICカードを利用して解錠

まずはモデルルームの303号室から。

  • 303号室は47平方メートル、1LDKの部屋で二人暮らしを想定した間取りです

この部屋には、パナソニックの家電だけでなく、ソファやベッドなどの家具・調度品も搬入されており、実際に住む光景をイメージしやすくなっています。リビング・ダイニングキッチンにはIHクッキングヒーターを内蔵したテーブルを設置し、既製品の枠にとらわれずに対応することをうかがわせます。鍋料理や焼き肉を楽しむにはもってこいですね。

テーブルに用意されているコンセントは、陰になっている反対側と合わせて計4口。モデルルームですが賃料が設定されており、24.4万円/月となっています。

パナソニックの最新家電が勢ぞろい

リビング・ダイニングキッチンの中央には冷蔵庫やオーブンレンジが設置されており、パナソニックの担当者は「家電タワー」と呼んでいました。家電タワーの向かって右がキッチンシンク、左は広めのカウンターデスクになっていて、足元右側にはロボット掃除機「RULO(ルーロ)」の姿も。カウンターデスクの横からバルコニーに出られます。奥の洋室は寝室を想定しています。

  • 収納されているオーブンレンジは「ビストロ」シリーズのハイグレードモデル「NE-BS2700

  • ビルトインのIHクッキングヒーター

  • 洋室(寝室)

  • 洋室の出入り口にもカウンターデスクがあり、夫婦かカップルで場所を分けて作業できるように作られています

  • クローゼットの天井にはナノイー発生装置が

  • トイレはもちろんアラウーノ

  • サニタリールームにはドラム式洗濯乾燥機のCuble

  • サニタリールームの天井には室内干し用の設備も。「Cubleがあるのに」と突っ込むのは野暮ってものです

  • 洗面台にはヘアドライヤーと美顔器

  • 湯船はゆったりサイズ。湯船に浸かったまま浴室の照明を操作できます。「このままここに住みたい。帰りたくない」と語る、マイナビニュース・デジタルの林編集長

203号室

203号室は、303号室と間取りが似ていますが、廊下が若干長く、洋室と洗面所の作りが異なってウォークインクローゼットを設けています。リビング・ダイニングキッチンと洋室を区切る引き戸を閉めたまま、どちらの部屋からもクローゼットが利用できるようになっています。賃料は23.6万円/月です。

  • 203号室の間取り。203号室は洋室が少し狭くなる代わりに、リビング・ダイニングキッチンが少し広くなり、ウォークインクローゼットがあります

  • 203号室の様子。303号室ではソファの陰で見づらかったロボット掃除機のRULOが見えます(赤い矢印の先)。ここの奥にRULOの充電台があります。目立ちやすいロボット掃除機を、こういうふうに収納しておけるのはすばらしい!

  • リビング・ダイニングキッチンから洋室方向へ目を向けると、ウォークインクローゼットが見えます

  • シンク横にあるビルトイン食器洗浄機。これはモデルルームの303号室でも同じ場所にあります

  • 洋室のエアコン。梁(はり)に収めることで機能性を損なうことなく、空間と調和させています。前面の板は取り外せるので、エアコンをお手入れするときジャマになることもありません

1DKと1Rにも工夫がいっぱい、パナ製品もいっぱい

続いて1DKとワンルームを。1DKの202号室と302号室、ワンルームの201号室と301号室で間取りが同じとなるため、今回は202号室と201号室を見てきました。

202号室(302号室)はダイニングキッチンと洋室を備えた一人暮らし用の部屋。バルコニーが広く、使いやすいキッチン、3枚扉を使った洋室のクローゼットが特徴的です。この部屋もエアコンは梁に埋め込まれて目立たなくなっています。賃料は202号室が15.1万円。302号室が15.4万円です。

  • 202号室(302号室)の間取り。カウンターデスクがないため、洋室にベッドを置くと食事や仕事のための机をどこに置こうかとちょっと迷いそう

  • 内食を意識してIHクッキングヒーター、オーブンレンジなどをしっかり完備。レンジフードも大きくて使いやすそうです

  • オーブンレンジの下はビルトイン食器洗浄機。一人暮らしなので、このまま食器入れとして使っても良さそう

  • トイレの向かいにある両開きの扉は棚になっていて、一番下にはRULOがいます

最後は201号室(301号室)です。18.2平方メートル(約11.2畳)という広めのワンルームで、2方向に窓があり、バルコニー側は掃き出し窓。「中食」中心のライフスタイルを想定しつつ、コンロを省くという割り切りでレンジフードもなくし、シンク横に開放感のあるリモートワークスペースを確保しています。

IoT対応の高機能オーブンレンジ、ビストロ「NE-UBS5A」と、365L冷蔵庫を設置しているほか、引き出しの中にポータブルな卓上IH調理器を収納しています。このビストロは「マイスペック」シリーズの製品で、自分に必要な機能や使いたい機能をスマホアプリから追加していくというコンセプトが特徴です。賃料は201号室が13.6万円。301号室が13.8万円となります。

  • 201号室(301号室)の間取り

  • シンク横の引き出しにポータブル卓上IH調理器

  • カウンターデスクの足元にはRULOがいます

  • 洗面所の奥には、Cubelが目立たないように壁にはめ込まれた形で鎮座しています

シェアサイクルも利用できる

居住者用のシェアサイクルも準備しています。外の自転車置場に電動アシスト自転車が3台置いてあり、利用登録した居住者はスマートフォンの専用アプリから予約し、自転車を解錠して使います。自転車にはGPSが内蔵され、管理室でモニターしているので、自転車が行方不明になることはありません。

  • 自転車のメンテナンスは管理人が行います

  • スマートフォンの専用アプリから予約し、解錠処理も行います。バッテリー状況も可視化されていて、充電状態の良い自転車は早い者勝ちになりそう

  • 2階の入り口にあるシェアサイクルの充電ステーション

どっちを向いてもコンセント

noiful base 駒込のどの部屋を見ていて、コンセントが至るところにあることに気が付きました。部屋の壁という壁にコンセントがあり、家電を利用しがちな場所にはことごとく目につきます。洋室(寝室)、調理台、洗面台、カウンターデスクはもちろん、廊下や玄関、棚の中段などにもあります。

これだけコンセントあれば、デスク周り以外はまずタコ足にならないのではないでしょうか。豊富なコンセントを見て「いいな」と思うことはあっても、「ムダだ」と思うことはありません。今後の住宅は、賃貸であってもこのくらいコンセントの豊富な部屋が増えていくのかも感じさせられました。

  • 303号室と203号室のIHクッキングヒーター横にある浅い棚には、中段にコンセントがあり、調理中にタブレットを充電しながら見るといったことも可能です。USB充電専用のコネクタまであります

  • 303号室のテレビの後ろにあるコンセント。室内はWi-Fi 6が標準で利用でき、有線LANコネクタも。各戸に1Gbpsのインターネット回線が引かれています。203号室にも同じコンセントがあります

  • 202号室のRULOのいる棚にも中段にコンセントが。何に使おうかと思わず考えてしまいます

  • 201号室のシンク横のカウンターデスク。見えるだけでコンセントが7口

  • 201号室の壁際。同じ側の別の場所にもコンセント

一人暮らしを始めるときのイニシャルコストを大きく抑えられる

noiful base 駒込はnoifulの第1号物件ということで、フルリノベーションのうえで最新家電の上位機を中心とした取りそろえとなっており、家賃もそれなりに高額。ただパナソニックのロードマップでは、2024年で12,000戸、2030年には20万戸までnoiful導入住宅を広げる計画で、いずれはもっとリーズナブルなプランも提供されるに違いありません。

2022年1月20日時点ではnoifulの公式サイトで、noiful LIFEのnoiful base駒込のほか、6件のnoiful ROOMで入居者を募集しています。noiful ROOMはいずれも浅草橋の物件で、1DKが賃料12.3万円&管理費1万円からとなっています。

学生や新社会人、単身赴任など、家族から離れて賃貸暮らしを始めるときは、家具や家電がそろわない環境でスタートすることもあるでしょう。そういう人にとっては、家電の購入やメンテナンスのコストを、月々の家賃に上乗せするランニングコストに振り替えることで、イニシャルコスト(初期費用)をぐっと下げられます。

入居者はもちろん、物件に少しでも付加価値を付け、空き物件をなくしたいオーナーにとっても、検討する価値が大いにあるサービスになりそうです。