2019年に設立された「Good Game Company(GGC)」は、アマチュアのeスポーツ大会を定期的に開催している同人団体。主催するeスポーツイベントは、コミュニティ大会ながら公式トーナメントを凌駕する参加チーム数を誇ります。

直近の『Apex Legends』の大会では、320チーム960名が参加。コロナ禍ではオンライン大会を開催しやすくなりましたが、参加者を集めることに苦労している主催者は少なくありません。では、GGCはどのような工夫で集客を行っているのでしょうか。GGCの兒玉康平さんに秘訣を聞きました。

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    参加者が1000人近くとなった『Apex Legends』の大会

参加者のストレスを軽減させるために、一つひとつ課題をシステムで解決

「GGC設立のきっかけは、ゲーム動画の配信をしていたときに、視聴者参加型イベントのおもしろさを実感したことです。なのでGGCでも、視聴者参加型配信のイベントを中心に開催しようと決めていました。GGCを作ってから最初に行ったイベントは『Call of Duty Mobile(CoD:M)』のバトルロイヤルモードの大会。それから主軸を『Shadowverse』、『Apex Legends』へと移しました。1人でも参加しやすいソロの大会では、40~50人集まったと思います」(兒玉さん)

GGCの活動を始める前、兒玉さんは『マインクラフト』の視聴者参加型配信などを行う動画配信者でした。動画配信サービス「ミラティブ」では、バトルロイヤルゲーム『荒野行動』の配信などを行い、配信者ランキング6位を記録します。

『荒野行動』の動画配信をやっていた経験から、GGCでもそれなりの人数が参加することは見えていましたが、タイトルを変更してからは、『Apex Legends』の動画配信をしている人や大会を開いている人にも声をかけました。

「最初は相手にしてもらえなかったんですけど、1人でも多くの人に知ってもらうために、いろいろなところに声をかけました。回数を重ねるうちに認知度が上がり、少しずつ参加者も増えていきました」(兒玉さん)

『Apex Legends』の1回目の大会では「カスタムマッチ」を行う権限がなかったので「スナイプ大会」を実施。カスタムマッチとは、サーバーを立てて、そこに選手を招待することで、全員が同じステージで戦えるようにできるシステムです。参加者以外のプレイヤーがいたり、参加者が複数のサーバーに分かれたりすると、参加者以外のプレイヤーがマッチに勝利したり、優勝者が何人も出たりするため、大会では同じサーバーでプレイする必要があります。

しかし、一般プレイヤーは基本的に「カスタムマッチ」の権限がありません。そこで、同時刻にサーバーに入ることで、同じサーバーに入る確率を高める「スナイプ大会」を実施します。

とはいえ、スナイプ大会の場合、カスタムマッチに比べて、どうしても参加者のランキング作成やキル数の集計などに時間がかかってしまいます。その結果、参加者からもっと早く進行してほしいという要望が出てくることになりました。

「参加型のイベントなので、みんなで楽しみたいと思っていました。現状楽しめない部分があって、それを技術力やシステムでクリアできるのであれば、挑戦していこうと、システムの開発を進めることにしました」(兒玉さん)

スナイプ大会では、当然同時にスタートしても、同じマッチに入れるとは限りません。最初は、参加者が交流する場「Discord」に対戦結果のスクリーンショットを貼っていましたが、本当に同じ時間にプレイしているかどうかわからないため、時間を表示するように変更。同じくらいの時間に合わせて開始してもらうようにして、その画面を解析するシステムの開発計画を立てます。

徐々に問題点が改善され、参加者の満足度も上がると、自然と参加者の数も増加。すると、メーカーからカスタム権限をもらえるようになりました。

「カスタムマッチの権限をもらえたので、次はカスタムAPIを使って集計するシステムの開発を進めました」(兒玉さん)

快適に大会を楽しめるよう、さまざまな手段を講じた結果、参加者はどんどん増えていきます。ついには1回の予選で最大320チームが集まるようになり、1カ月間行った大会の参加延べ人数が1000人を超えることもありました。

さらに、『Apex Legends』のカスタムマッチがクロスプレイに対応したことも追い風になります。もともとPCユーザーしか参加できない制限がありましたが、PlayStation 4(PS4)ユーザーも参加できるようになり、多くのユーザーが集まりました。

しかし、参加者が増えた1番の理由は「参加者自身が多くの人を呼び込んだから」だと兒玉氏は考えます。そして、知名度が上がることで、さまざまなコラボ企画も進行し、有名VTuberが参戦する大会も行えるようになりました。

「大会はTwitterで告知するのですが、そのツイートを参加者や視聴者がリツイートしてくれるんです。引用リツイートが多く、『一緒に参加してくれる人募集』といった感じで、参加者が参加者を呼んでくれました。この点が参加型イベントの魅力だと思います。特に、これまであまり大会に出ていなかったPS4勢に対して声をかけてくれていましたね」(兒玉さん)

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    FPSタイトル以外にも宇宙人狼と呼ばれる『Among US』の大会も開催。VTuberをはじめ、有名ストリーマーが参加しました

次のステップは収益のエコシステム構築

現在GGCのスタッフは13人。全員が兼業で、動画を作る人、ディレクション、APEXのイベント管理、システム、カスタムの運営、大会のカスタムのサーバー管理などの役割をそれぞれに担います。しかしこれでは、320チームの参加者を回すのが手一杯。さらに多い人数が参加する大会にするには、スタッフを増やさざるを得ず、そうなった場合は、無償もしくは持ち出しでやり続けることが難しいとの判断に至りました。

「現在はAdictorがスポンサーとして各大会で賞品を提供してくださっていますが、スタッフが専業で大会に専念できるように収益のエコシステムを確立していきたいと思っています。たとえば、視聴者数を増やす施策を考えたり、大会で物販のコーナーをテスト的に立ち上げたり。また、GGCでは、主催以外で大会運営を請け負う活動を始めています。将来的には公式大会などの商業的なイベントの運営を目指していますが、現在はコミュニティベースの大会の運営が多いですね」(兒玉さん)

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    GGCが運営を請け負っている「声優e-Sports部」のイベント

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    ボートレーサー峰竜太選手が開催する『Apex Legends』のイベントもGCCが運営を担当

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    GGC主催イベントとしては『Apex Legends』と『Shadowverse』

大会運営をGGCに依頼するメリットは費用の安さだと、兒玉氏は話します。あまり運営費がないコミュニティにはうれしいポイントではないでしょうか。

「単純にディスカウントしているわけではありません。これまで開発したシステムがあるので、通常であればスタッフ100人が必要なところ1人で済むんです。トーナメントを全部自動化できないかという話も出ています。エントリーや勝敗報告をすべて自動でできれば、もっと大会に参加しやすくなるのではないでしょうか」(兒玉さん)

オフラインの大会でわからないことがあれば、常駐しているスタッフに聞くことで解決できるケースもありますが、オンラインだとある程度ネットリテラシーがないと、Discordで聞いても理解できないことがあります。それを全部自動化することができれば、参加者の負担はかなり軽減されるでしょう。

コミュニティ大会を中心として活動してきたGGCは、あくまでも参加者目線で、ストレスのない大会を目指しているのがわかります。その結果が、参加者の多さにつながっているのはないでしょうか。若きeスポーツ大会運営集団の今後の活躍を期待したいところです。