コンビニに置かれているマルチコピー機、近年は高機能化が進んでいます。単純なコピーだけでなく、写真プリントやチケット出力など、利用したことのある人も多いでしょう。そんなマルチコピー機ですが、ファミリーマートで最新機への置き換えが順次始まっています。

東京・田町の「ファミマ!! ムスブ田町店」を皮切りに12月1日以降、マルチコピー機を設置している全店で置き換わります。今後は、同じく店頭に設置されているマルチメディア端末「Famiポート」との統合も計画中。利用者にとっては利便性の向上、コンビニ加盟店側にとってはDX化や省人化につながることが期待されています。

  • ファミリーマートに順次導入される新型マルチコピー機

今回導入される新型マルチコピー機はシャープ製の「MX-3631DS」。型番を見る限りは、ローソンに設置されている最新型と同型機のようです。ファミリーマートとしては、8年ぶりの機材刷新となります。コンビニ業界では、マルチコピー機の刷新は6~7年の周期なのですが、ファミリーマートは少々時間がかかりました。理由は、マルチコピー機の機能に関してさまざま検討を重ねてきたから。

  • 新型が設置されているファミマ!! ムスブ田町店

マルチコピー機は、単純なコピーからFAXや写真プリントなどと機能が拡充されてきて、最近ではネットワーク経由でのプリントやスマートフォンからの直接プリントにも対応しています。ただ、ファミリーマート設置の既存機は8年前のモデルということで、動作速度に対する不満などもありました。

  • UIはローソンのものと同等。機能としては、ローソンに続いてシールプリントに対応しました

新型となったことで、機能面もパフォーマンス面も充実。最近のモデルということでUSB Type-Cポートを搭載したものの、ついに赤外線通信機能は省かれました。

  • 複数メディアに対応。USB Type-Cに対応した代わりに、赤外線通信がなくなっています

新たに、ハガキプリントとシールプリントという2つの機能も追加されています。コピーやFAXといった従来機能の利用は減少傾向ですが、プリントして楽しめるコンテンツの人気が高まっているとのこと。キャラクターなどをシールにプリントする機能を追加したことで、マルチコピー機の利用を高めたい考えです。

従来機との違いとしては、15型のディスプレイを搭載した点も挙げられます。これまでは本体の操作パネルとして小型ディスプレイがあっただけですが、大幅に大型化。タッチパネル対応で利用するサービスを選びやすくなりました。水平から垂直まで角度を自由に変更できるのも新しいポイントです。

  • 本体脇に設置された大型ディスプレイ。下段にはマイナンバーカード読み取り、QRコード読み取りがあり、左側にはカードリーダーがありますが、こちらは後述する「第2弾」の展開に向けたもので、導入の初期段階では動作しないそうです

大型ディスプレイの角度を柔軟に変えられるのは、車椅子ユーザーなどが操作しやすいよう調整できるように――という理由からだといいます。もちろん、角度が変えられるのは誰にとっても使いやすい変更点でしょう。加えて、ディスプレイにはプライバシーフィルターを内蔵。画面に表示されたプリントデータが他人から見えづらいように配慮されました。

  • 水平まで倒したところと、垂直まで立てたところ。この間は無段階で角度が変えられるので、使いやすい位置で固定できます

プライバシーフィルターなどの実装は、特に公共サービスの利用が拡大している点を考慮したそうです。マイナンバーカード使って住民票をマルチコピー機で取得するといった場合に、画面に表示されたデータを確認してからプリントしますが、公共の場のため意図せずに他人から画面が見えてしまうこともあるでしょう。そこでフィルターを搭載することで、横合いから見られにくくしたわけです。

  • プライバシーフィルターによって、横からは画面が見えなくなります。店舗によってはコピー機の隣にATMがあったりと、横に来た人にうっかり見えてしまった――という状況を回避できます

同様に、コロナ禍のリモートワークが増えたことで、自宅に仕事を持ち帰った人がデータをプリントする例も増えているそうです。そんな場合も、画面で内容を確認するときに他人に見られたくないという声があり、フィルターの搭載が必要でした。

Famiポートの統合でより便利に

2022年春に向けての大きな変更が、Famiポートの統合です。これまではマルチコピー機とFamiポートで2つの端末が必要だったところを、両者を新型マルチコピー機に統合する方針です。加盟店からは一体化の要望もあったものの、当初は従来通り分離型とする予定だったそうですが、一体型へと舵を切ったことで、全体の更新スケジュールが長くなったそうです。

  • ファミリーマートといえばFamiポート。各種カードリーダーやテンキーなどが配置されていますが、こうした機能は今後マルチコピー機に引き継がれます。テンキーは、大画面を生かしたソフトウェアキーになるそうです

新型マルチコピー機にはすでに、Famiポートに搭載されていたカードリーダーが備わっているなど、ハードウェアとしての準備は整っています。今後は、各種サービス搭載に向けてシステムを更新していきます。ハードウェアとしてのFamiポートはなくなりますが、「Famiポートサービス」として継続です。基本的に、現状のFamiポートで提供されているサービスは踏襲します。

Famiポートには、チケット発券をはじめとして多彩なサービスがあり、ディスプレイに表示されるUIもそれに合わせて刷新する予定です。現状は同じシャープ製を使うローソンと同じUIですが、Famiポートの機能を統合することでサービスメニューが拡大することから、利用者が使いやすいUIを検証、搭載していくとしています。

ファミリーマート側も「業界1位を自負している」と話すとおり、メニューが多いために利用者が混乱し、店員に声をかけるという例もあったそうです。もともとセルフ端末なので、店側の負荷を減らすことを目指した画面設計を行っている最中とのこと。

また、「Famiポートで発券してレジで支払いをしたあとに、コピー機で印刷をする」というサービスもあり、これは二度手間。統合によって、こうした手間も省けるようになります。

狭い店舗はどうするか

Famiポートが統合されることで、マルチコピー機とFamiポートを2台設置していた店舗にとっては、スペースの削減につながります。マルチコピー機しか置けなかった店舗にとっては、Famiポートの機能も使えるようになるのは大きなメリットでしょう。ただ、Famiポートしか置けないような狭い店舗を考えると、マルチコピー機へのFamiポート統合には課題があります。そもそもマルチコピー機を置くスペースがないので、ファミリーマートでは対策を検討しているそうです。

マルチコピー機の本体を見る限り、コピー機の横ディスプレイと決済端末を一体化したものなので、ディスプレイ側だけを分離すればFamiポートの機能は提供できそうにも感じます。狭い店舗向けの対策は明らかになっていませんが、新型マルチコピー機に付随したFamiポートの機能は変わらず提供できるようにするとしています。

  • この左側の部分だけを切り出せば、Famiポートサービス専用機になりそうです

コールセンターを設置

コールセンターを新設して、利用者自身で解決できるようサポートを提供します。Famiポートにはサポート用の受話器が設置されていましたが、新型マルチコピー機にはありません。時代背景もあり、利用者のスマートフォンからフリーダイヤルに発信してもらうことにしたそうです。

これによって、使い勝手の向上といざというときのサポートを提供し、店側の負担軽減につなげます。ここでの画面設計は、開発中の画面を利用者に使ってもらって反応を見ているほか、ATMを設計している企業にも協力してもらうなど、さまざまな観点から設計しているそうです。

課題も残る

コロナ禍で伸びている公共サービスの利用に関しては、マイナンバーカードを読み込んで情報を出力できるため、今後はワクチン証明書の発行にも期待したいとしています。コンビニでいつでも出力できるとなればニーズは高そうです。

こうして新型になったマルチコピー機ですが、課題も残されています。それは決済手段。現状は、コピーなど少額であればその場で現金を投入しますし、Famiポートでの支払いはレジです。マルチコピー機ですべての支払いが完結すれば、利用者の利便性はもちろん、店舗側の負荷もかなり減るでしょう。無人(省人化)店舗でのマルチコピー機設置も可能になります。

とはいえ、現状はチケット発券や料金が高額になる場合などは、最終的な支払いに有人レジを使う必要があり、無人化には至っていません。ファミリーマート側も課題は認識しており、今後マルチコピー機単体で決済が完了できるよう、解決に取り組んでいるとしています。

  • 現状は現金決済のみのマルチコピー機。マイナンバーカードリーダーではFeliCaによる電子マネー支払いやクレジットカードのタッチ決済、コード決済もできそうです

マルチコピー機自体には、すでにマイナンバーカードの読み取り機やQRコード読み取り機が搭載されているため、クレジットカード、電子マネー、コード決済への物理的な対応は難しくなさそうです。将来的な実装が期待されます。

ただ、Famiポートで利用できるサービスは事前にオンラインで購入して、スマートフォンのQRコードをレジで見せてそのまま発券と決済――という使われ方が増えています。基本方針としては、その方向を進めていきたいとのことです。

ファミリーマートのマルチコピー機が狙うのは、「デジタルに弱い方でも使えるタッチポイント」。スマートフォンだけで解決できない例もあるため、新型マルチコピー機には重要な役割があるとの判断です。

第1弾としては新型マルチコピー機への置き換えで、従来機に比べてスピードや機能は強化されたものの、本番は2022来春以降のFamiポートとの統合でしょう。単なる機能の統合だけでなく、UIの刷新、新たなサービスの提供、利便性の向上につながってほしいところです。