ASRockから、究極のオーバークロックを志向する「Formula」ブランドを冠したグラフィックスカード「AMD Radeon RX 6900 XT OC Formula 16GB」が登場しました。このFormulaブランドの製品は主にマザーボード向けに提供されていたもので、直近ではIntel Z590を搭載するマザーボード「Z590 OC Formula」を展開中。巨大なE-ATXフォームファクタを採用しているにも関わらず、メモリスロットは2本のみというストイックな仕様で注目を集めていました。

そこで今回は、エクストリームなオーバークロックを目指すFormulaブランドから初めて投入されたRadeon最上位グラフィックスカード「AMD Radeon RX 6900 XT OC Formula 16GB」をチェック。メーカー想定売価は約30万円前後と強烈なものでしたが、今の実売価格はおよそ20万円といったところ(記事掲載時点)。今回お借りすることができたので、最強モデルを眺めてみました。

ASRock Formulaブランドって?

上述したように、FormulaブランドはASRock製品シリーズにおける究極のオーバークロック向けモデルです。厳選された高性能なコンポーネントをふんだんに用いたほか、同ブランドに属するマザーボード「Z590 OC Formula」の開発では著名なオーバークロッカーであるニック・シン氏が開発に参加している点もポイント。実際にエクストリームなオーバークロックに挑んだ経験を活かした製品開発が行われています。

このAMD Radeon RX 6900 XT OC Formula 16GBに目を向けてみると、とにかく巨大な冷却機構「OC Formula 3X Cooling System」を採用している点が目を引きます。製品ページを見てみると、この冷却機構に凝らされたさまざまな工夫について知ることができます。ふと思いましたが、別途冷却機構が必要なマザーボードとは違い、Formulaブランドとして冷却機構も設計したことは珍しいことなのかもしれません。

  • OC Formula 3X Cooling Systemの概要

  • ファン表面には溝を備え、背面はツヤツヤに磨き上げられています

  • ファンからの風を一身に受けるヒートシンクも風切り音を低減するよう設計されています

  • エアフローは緻密に制御され、ヒートシンクを通過して最大限放熱 を行います

  • GPUに接触するのはニッケルメッキの銅製ベースプレート

  • もちろん電源回路部にはサーマルパッドをあしらい、ヒートシンクと接触して放熱を補助します

  • なんとファンカバー部は総金属製。ラグジュアリーでエレガント、かつ冷却性能向上にも寄与するとあります

  • ライティングはスリットの中に奥ゆかしく搭載。ASRockの「Polychrome SYNC」に協調し、対応する製品と組み合わせたイルミネーションを利用できます

  • GPUとVRAMに供給する電源回路は21フェーズと極めて大規模。90AのDr.MOS仕様です

  • ASRockマザーボードにも共通する2オンス銅PCBや

  • 耐湿ガラス繊維も採用されています

実物を見てみる

特徴について学んだところで、実物を見てみましょう。パッケージはかなり巨大で、生半可なサイズのバッグには入りそうにありません。実店舗で購入する場合は、傘などで手が塞がらない日が良さそうです。

  • パッケージ外観。シンプルなデザインながら、箔押しの金色が高級感を伺わせます

  • AMDリファレンスモデルよりも大きな外箱

  • 化粧箱から引き出して開封! 天面が大きく開き、中身にアクセスしやすいタイプです

  • 梱包材は高密度スポンジが採用されていました。かんたんなマニュアルが同封されており、このグラフィックスカードの手前にサポートステーも入っていました

  • これがそのサポートステー。ケースの拡張スロットに設置するタイプです

  • 実物外観。金属製ファンカバーから漂う高級感はかなりのものです

  • ファンをアップで。ブレードに3本のスリットが刻まれているのは上述のとおりです

  • 電源回路はサーマルパッドを介してヒートシンクに接触しており、安定動作に寄与します

  • バックプレートの外観。GPUコアはむき出しになっており、素子がたくさん並んでいる様子が直接見て取れます

  • LEDのオンオフは側面のスイッチで直接行えます

  • Dual BIOSのSwitchも側面に搭載しています

  • 側面の様子。ブラケット側は黒いネットで銀色のヒートシンクをそれとなく隠しつつ、反対側はバックプレートとぴったり合わさったまとまりのあるデザインになっています

  • 補助電源は驚異の8pin×3を要求。高クロック動作でのパフォーマンスには必要な装備です

  • 映像出力端子はHDMI×1、DisplayPort×3

  • ブラケット上部にかなり大きく張り出しているので、かなりスリムなケースでは干渉するかもしれません

  • 電源ケーブルは8pin×3なので、分岐させて接続することはできません。3本のケーブルを電源ユニットから引き回しましょう

  • イルミネーションの様子。グラデーションはシームレスで美しく、ケースに収めると間接照明のような風合いになります

  • 参考までにAMD Radeon RX 6900 XTのリファレンスモデルと並べてみました。大きく、分厚いです

  • 赤ではなく、Formulaブランドを象徴する緑をあしらったところが印象的

やはり目を引くのはその威容。とても大きく、高密度なヒートシンクの採用でずっしりと重量感があります。金属製のファンカバーに加え、バックプレートも金属製。マザーボードのPCIeスロットにかかる負荷はかなりのものになりそうなので、付属のサポートステーをしっかり装着して使いましょう。なお、重量は実測したところ1,816gでした。

  • サイズもさることながら、重さがかなり規格外です

これでファン全開!? というほど静かなベンチマークテスト

AMD Radeon RX 6900 XTのベンチマークは、既に【Radeon RX 6900 XTを試す - RTX 3090と最強対決、更に新世代GPUを総ベンチマーク】で紹介していますが、せっかくなのでRadeon Software Adrenalinでの簡易オーバークロック機能を試してみました。

  • これがRadeonグラフィックス製品向けに提供されているRadeon Software Adrenalinでの設定画面。OCのほか、GPUの電圧を下げて省電力化するオプションもあります

  • 操作は「GPUのオーバークロック」をクリックするだけとかんたん

  • 自動OCでは2,689MHzになりました。ちなみにリファレンスモデルでのブーストクロックは最大2,250MHzです

  • 右側にはチューニングプリセットとして「クワイエット」「バランス」「レイジ」の3モードが用意されていますが、これを選択すると「GPUのオーバークロック」がグレーアウトしてしまう点がよくわかりませんでした。レイジモードのまま使えばそれとなくブーストクロックが高まるんでしょうか

ブーストクロックを最大2,689MHzまで引き上げたところで、ベンチマークテストをいくつか実行してみました。使ったのは3DMark各種、「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」、「ファイナルファンタジーXV:ベンチマーク」「Watch Dogs: Legion」です。

  • 3DMark「Fire Strike Ultra」

  • 3DMark「TimeSpyExtreme」

  • 3DMark「Port Royal」

  • 3DMark「DirextX Raytracing featu re test」

  • 「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」

  • 「ファイナルファンタジーXV:ベンチマーク」

  • 「Watch Dogs: Legion」

やはり競合のフラッグシップモデル「NVIDIA GeForce RTX 3090」に比肩する圧巻の性能。極めて重いベンチマークばかり実行しましたが、60fpsを維持して普通のゲーム画面のように見える始末です。

さらに特筆すべきは、ベンチマークの実行中でも全然動作音が気にならない点です。ファンの風切り音はとても静かで、特に耳に付きやすい「シー」のような高周波が完全に取り除かれています。ケースに入れてしまえば、動作音を気にすること自体なくなりそうです。

手に取りやすくなってきたASRock最強グラフィックスカード

ここまで、ASRock最上級グラフィックスカード「AMD Radeon RX 6900 XT OC Formula 16GB」をチェックしてきました。超重量級の本体はとても贅沢な仕様で仕上げられてており、冷却性能や静音性に申し分はありません。

しかも、初出時の30万円という超弩級プライスからはかなりお手頃になっている点もポイントです。ちょうどGeForce RTX 3080とGeForce RTX 3080 Tiの間に収まるような形になっており、ここに来てコストパフォーマンスがかなり高まってきました。せっかく最上位Radeon搭載カードを導入するなら、少し背伸びしてASRockの「Formula」ブランドから投入された最強モデル「AMD Radeon RX 6900 XT OC Formula 16GB」を選んでみるのも良さそうです。

  • 試用ケースの都合でE-ATXの「Z590 Formula」は使えず、Taichiと組み合わせてみたところ。幅は332mmと長めですが、ATX対応ケースならだいたい入りそうです