デル・テクノロジーズは11月11日、第2回目となる「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」コンテストの本選をオンラインで開催した。
このコンテストは、従業員1,000名以下の中堅中小企業が、IT技術を活用した社内の業務効率化やコスト削減、売上拡大などのビジネスプランを発表し、8名の審査員により「実現可能性」、「新規性/優位性」、「継続性」、「発展性」、「経済性」の5つの評価基準により総合得点で競うもの。主催はデル・テクノロジーズと奈良先端科学技術大学院大学。大阪産業局、SoftBank、ミライコミュニケーションネットワーク、カゴヤ・ジャパンが協賛している。
活用するIT技術は、第1回では、AI、ブロックチェーン、IoTだったが、今回はAI、VR/AR (with 5G)、Edge Computingとなっている。
コンテストでは、1位~3位の上位入賞者、および特別賞(カゴヤ・ジャパン賞、ミライコミュニケーションネット賞)が選出され、受賞者には、1年後の実現を目指し、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)研究員がメンターとしてビジネスプランの実装や定着化を支援するほか、デル・テクノロジーズや協賛するカゴヤ・ジャパン、ミライコミュニケーションネットからインフラ支援が受けられる。
コンテストの冒頭には、デル・テクノロジーズ 代表取締役社長 大塚俊彦氏が「DXにおいては、人材、どういう優先度で進めていくかなどの難しさもあるが、こういったプログラムを立ち上げてみなさんを支援していく。これが、みなさんのDX推進の一助になれば幸いだ」と挨拶した。
また、審査員を務める奈良先端科学技術大学院大学 先端科学研究科 教授 松本健一氏は、「先日は、第1回の中堅企業DXアクセラレーションプログラムの成果報告会に参加したが、研究者が思いつかないアイデアや事業の進め方があり、非常に有意義な取り組みになっていたと思う。今回は2回目となるが、それぞれのアイデアや今後の展望をアピールしてもらえればと思う」と述べた。
コンテストには7社が参加し、eスポーツ支援の日本AIコンサルティングが優勝
今回のコンテスト(本選)には、7社が参加したが、1位には、日本AIコンサルティングの「AKT-Fighters」が選ばれた。
日本AIコンサルティングは、データ解析や人工知能の開発を行っており、人工知能では、「AKT」という製品で、マウスやキーボード操作をAIで解析し、業務の自動化、習熟度の把握、人事評価・教育などを支援している。
今回はこの技術をeスポーツに適用し、選手の成長支援やセカンドキャリア支援に生かしたいという。
成長支援では、1つの案として、優秀者と練習者のデータを比較し行動やコンピテンシーを抽出、パフォーマンス向上につながるトレーニング支援を行うという。
セカンドキャリア支援では、アセスメントシートやプレイログの相関を調べ、適正/就職マッチングを行うという。
審査員からは、AIを活用したeスポーツのサービスの可能性の高さやセカンドキャリア支援というビジョンに共感が持てるというコメントが寄せられた。
2位には、オンダ国際特許事務所の「知的財産管理システムのAI対応」が選ばれた。
同社は特許庁に書類を提出して、知的財産権特許権・実用新案権・意匠権・商標権の取得を代理する業務を行っているが、過去の事例や書類の確認、特許庁に提出する際の文章チェックに多くの工数がかかっているのが課題だという。そこで同社は今回、「AIを活用した画像検索の実現」と「AIを活用した文章チェックの実現」を提案した。
画像検索では似た画像データが存在する過去の出願書類の検索、文章チェックでは、主語が存在しない文章、多義文が存在する文章のチェックを実現するとした。
3位には、サンフロンティア不動産の「不動産データ基盤プロジェクト」が選ばれた。
同社は都心で中小型オフィスビルの内外装リニューアル工事を行い、不動産再生事業を行っている。
ただ、コロナ禍でのテレワークの普及によるオフィス解約・縮小の動きがあり、大手不動産会社が 中小型オフィスのマーケットに参入してきているほか、ESG推進(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つの観点)の潮流により、 不動産再生事業に参戦するプレーヤーが増加しているという。
そこで同社は現在の属人的な営業スタイルを脱却し、 積極的なデータの利活用によって顧客の潜在的なニーズを捉えたデータドリブン経営にシフトするため、サイロ化された社内データの収集と蓄積を行い、統合データ基盤の活用を目指す。将来は、外部システムとの連携やAIを利用した深度の高いデータ解析と可視化、AIによる予測分析なども行う予定だという。
特別賞のカゴヤ・ジャパン賞には共立ヒートテックの「AIを活用した異物混入の特定/検知」とレニアスの「図面のOCRテキストマイグレーション 見積自動化」が選ばれた。
金属の熱処理加工を行う共立日ヒートテックは、現在は目視で行っている異物混入の特定/検知をAIを活用したカメラ映像で実現したいとした。
輸送用機器及び特殊車両の部品、セキュリティ商品の開発・製造・販売を行うレニアスでは、、設計部門が見積もり業務を行っているが、同じような製品を探すことから始め、過去データやその注釈などを探すことに多くの時間と労力を割いているという。そこで今回、PLMなどの基幹システムと横断連動したシステムを構築し、見積もりに必要な情報を過去データから抽出し、年200時間を削減する。また、営業自身が AIシステムで見積もりを作成できるようにし、年1500時間の削減を目指すという。
特別賞のミライコミュニケーションネット賞には、水上の「DXの成功の3つのキー」と高圧化工の「画像認識による検品」が選ばれた。
金物店への卸や住宅や建材メーカヘ製品や部品の供給を行っている水上は、第1回に続き、連続の参加となった。
同社は第1回で「何をすべきで」、「何が不足している」かが明確になり、外の情報、社外有識者とのつながり、考える機会、デジタル人材の4つの不足があることがわかったという。2回目では、受注データのAI OCR化によるデータ抽出での転記時間の圧縮、棚、ロケーション管理していない倉庫での人の動線の可視化、顧客の要望に合った商品の設計/開発のいずれかに取り組むという(メンターと相談の上決定)。
化粧品・健康食品の容器、検査器具等プラスチック製品の製造と販売を行う高圧化工では、製品の画像認識による検査の精度が低く、目視で異物混入、欠け、割れなどが無いかのチェックを行っている。そこで同社は、目視に頼らず、画像認識だけで検品を行い、不良と判断したものが異物によるものなのか、傷によるものなのかを判断できるようにするという。
全社が1年間の支援
今回の本選では、7社すべてが入賞したため、全社が1年間、奈良先端科学技術大学院大学がメンターとしての支援やデル・テクノロジーズや協賛各社からのインフラ支援が受けられることになった。
コンテストの最後には、デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏が、「昨年にも増して、熱意の感じられるプレゼンで、大いに刺激を受けた。部門単位ではなく、全社単位での提案も増え、課題、解決策、効果もより具体的な対策が多かった。技術面ではAIが多かった。日本はAIの導入が遅れているが、今回、AIの波がきていることを実感した。今後は、中堅企業DXアクセラレーションプログラムやDell De AIプログラムなどを通して、日本のAI活用に貢献していきたい」と総評した。