KDDIは9月13日、オンラインで新サービス発表会を開催。5Gエリア拡大の進捗、バーチャル渋谷におけるイベント、新料金「povo」の新たな展開、果てはイーロン・マスクCEO率いるスペースXとの取り組みなど、バラエティに富んだ内容が発表されました。

  • KDDIが新サービス発表会を開催。松田翔太さん、菜々緒さん、川栄李奈さんらがゲストに登場した

ユーザーの生活動線に5Gを

まずは、5Gネットワークについて。登壇したKDDI代表取締役社長の高橋誠氏は「KDDIでは、皆さまの生活動線に5Gをどう展開していくかにこだわっています」とし、現在は鉄道、商業地域についても重点的にエリア化を進めていると説明しました。

  • KDDI代表取締役社長の高橋誠氏

KDDIでは、2021年6月にJR東日本の山手線とJR西日本の大阪環状線の全駅ホームの5Gエリア化を完了しています。これに続き、9月13日には山手線と大阪環状線の駅間、そしてJR中央・総武線、京浜東北線、埼京線、西武鉄道新宿線の計47駅のホームにおいても5Gのエリア化を完了したと報告。さらに、2021年末までには関東21路線、関西5路線を5Gエリア化していく見込みです。

  • 鉄道、商業地域における5Gのエリア化が進んでいる

  • 主要駅を中心とした半径500m圏内も5Gエリア化へ

続いては、リアルとバーチャルを融合した“ボーダレスな未来社会”の実現に向けた取り組みについて。KDDIおよび参画企業73社で組成する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」では、今年も「バーチャル渋谷au 5Gハロウィーンフェス 2021 ~FUN FOR GOOD~」を10月から開催予定です。昨年、40万人を動員して盛り上がった同イベントですが、今年はさらにパワーアップ。事前に、渋谷の街に設置されたスポットで自身の姿をスキャンすることで、ハロウィーン当日はアバター化した姿で参加できるようになりました。

  • バーチャル渋谷au 5Gハロウィーンフェス 2021 ~FUN FOR GOOD~が10月より開催される

  • 完全自動アバター生成システム「AVATARIUM」と連携し、自身をアバター化してハロウィーンに参加できるようになった

スポーツ、音楽、お笑いのバーチャルステージも実施します。例えば、バーチャル渋谷のスクランブル交差点に設置されたパブリックビューイングでは、サッカーW杯の最終予選「AFCアジア予選Road to Qatar」を楽しめる予定です(10月中旬実施)。またバーチャル渋谷 ハロウィーンライブとして、新しい学校のリーダーズなどのアーティストが続々と登場し、ライブパフォーマンスを展開します(10月下旬実施)。このほか、若者の夢を応援するプロジェクト「smash.スカラシップ」が今冬からスタート。第1弾として、次世代のお笑い芸人を育成する「お笑いスカラシップ」が始まります。

  • スポーツ、音楽、お笑いのバーチャルステージも実施

バーチャルシティの取り組みは、来春以降、渋谷以外の都市にも拡大していく予定です。自身のアバターがバーチャルセレクトショップで洋服や靴などをフィッティングし、そこで注文すると実際に商品が自宅に送られてくる、というようなリアルとバーチャルが融合したサービスも準備されています。

  • バーチャルシティの取り組みが拡大。KDDIでは、手軽に旬のエンタメを楽しめる「au 5Gチャンネル」を2021年10月から月額無料で提供開始する

「povo2.0」は何が変わる?

auのオンライン専用ブランド「povo」では、利用者のライフスタイルに合わせて10種類のトッピングを自由に選択できる月額基本料0円のオールトッピング「povo2.0」を9月下旬(予定)からスタートすることが発表されました。

  • povo2.0が9月下旬(予定)からスタートする。ちなみに、現在のpovoの契約者数は90万ほどとのこと

データプランは1GB(7日間、390円)~150GB(180日間、12,980円)のほか、データ使い放題(24時間、330円)も用意。コンテンツでは、DAZN使い放題パック(7日間、760円)、smash.使い放題パック(24時間、220円)などを予定しています。

  • データプランも豊富

KDDIでは、ベースプランを0円にすることで、ユーザーの契約時の迷いを払拭。そのうえで生活環境や利用シーンに合わせて通話、データ、コンテンツを適宜トッピングしていく新しいスタイルを提案します。

povo2.0はどんな利用シーンが考えられるでしょうか。例えば、リモートワーク中心で外出が少ない月は、自宅のWi-Fiを利用することを考えて1GB(7日間)+1GB(7日間)くらいで済むかもしれません。通常勤務に戻った月は、20GB(30日間、2,700円)あたりを契約。あるいは、はじめからコスパの高い150GB(180日間、12,980円)を契約しておけば、毎月25GBを月額2,163円ほどで利用できる計算になります。

  • 利用シーンの例

povo2.0のスタートに合わせて、KDDIでは日常で利用する店舗でギガを「もらう」、街中やバーチャルイベントなどに隠れているギガを「さがす」、抽選などでギガが「あたる」、というユニークなサービス『#ギガ活』を開始します。例えば、コンビニ、スーパー、ファストフード、ドラッグストアなど身近なショップで買い物をするだけでギガがもらえる仕組みです。「せっかくなら、ギガの貯まるショップで買おう」なんて考える人が増えそうです。

  • 身近なショップで買い物をするだけでギガがもらえる「#ギガ活」の取り組みがスタート。コンビニやファストフードなど、身近なショップが対象になっているのがうれしい

  • ギガを「さがす」、抽選などで「あたる」の例

スペースXとの業務提携は「夢のような話」

スペースX社の「Starlink」との業務提携も発表されました。KDDIでは、高速・低遅延の衛星ブロードバンドインターネットであるStarlinkをau基地局のバックホール回線に利用する考えです。高橋社長は「山間部、離島などに基地局を設置するには、そこまで光ファイバーの伝送路を伸ばす必要があります。しかし、コストの問題もあり、なかなか太い回線を設置できません。そこでStarlinkを活用します」と説明します。

  • Starlinkと業務提携

Starlinkでは、すでに低軌道衛星1,500基を運用中で、低遅延の下り100Mbps超のネットワークを提供しています。これを利用することで山間部、離島でも、まるで都市部にいるかのような快適な通信環境が実現できるという仕組みです。「全国のau基地局1200箇所の高速化を進めることで、auの高速体験を日本中どこでも体験できるようにします」と高橋社長は意気込みます。

続けて「災害時のバックホールにも利用できます。災害時は、地域の通信会社やNTTさんに一生懸命お願いをして回線を再構築いただくんですが、どうしても時間がかかってしまう。これまでも苦労してきました。これが大容量の衛星ネットワークで補えるなら、災害時にも大きなメリットがあります」としました。

このあと、質疑応答で記者からネットワーク通信をエンドユーザーに直接提供する考えについて聞かれると「バックホールでの採用ということで、今回はスペースXと地上基地局の設計を一緒にやっていくというお話です。一方で、Starlinkは法人向けIoTでも活用できるサービスですし、日本国内市場については我々も知見があるので、今後、スペースXと協力しながら市場を広げていければ」と高橋社長。

ただ、ユーザーの所有している個々の端末が衛星通信とつながるサービスについては「いまの時点でコメントはありません」。スペースXの構想、衛星通信を受信できる端末の開発、などの話が出てきてからになる、との見解を示しました。

「いまや1500基の低軌道周回衛星が地球を回っている。夢のような話ですね。スペースXの取り組みには前から参画したかったし、今回の提携は非常にありがたかった」と語った高橋社長。ちなみに、CEOのイーロン・マスク氏には、まだ会っていないそうです。