ソフトバンクグループは8月10日、2022年3月期 第1四半期の決算説明会を開催しました。それによれば当期純利益は7,615億円、時価純資産(NAV)は26.5兆円。登壇した孫正義会長は、不退転の覚悟でAI革命に取り組んでいくと強調しています。

  • 代表取締役 会長兼社長執行役員の孫正義氏

SBGの投資額が世界最大に

冒頭、新型コロナウイルスの感染拡大について懸念を示した孫会長。そのうえで「様々な分野でオンライン化が進みました。この1年間を振り返ってみると、情報革命、AI革命といった分野では(新型コロナウイルスのために)進化が加速する側面もあったかと思います」と総括しました。

ここから、話題はAI革命に。SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)は2017年のスタートから4年が経ちました。この間、未上場のAI分野におけるユニコーン企業に投資を重ねてきたのがソフトバンクグループです。

もちろん、世界中の投資家もAI企業に投資してきたわけですが、ソフトバンクグループの資金は、世界がAI企業に投資した総額の約10%にも達したそう。このことを受けて孫会長は「間違いなく我々はこの分野において、世界最大の資本家になったわけです」と評価します。

  • 未上場AI企業への出資額(17年度以降)。世界の未上場AI企業の資本調達額の1割をソフトバンクグループが提供している

そして、次のようにも続けました。

「今後10~30年でAIを活用する企業の価値は上がっていくのか、と問われたら、もう間違いなく100%上がると確信を持って言えます。その分野で、最も大きなリスクを取りにいっているのがソフトバンクグループです」

今期の業績と懸念事項

当期純利益は7,615億円でした。前年同期比では大幅な減益となっていますが、これはT-MobileとSprintの合併にともなう一時益が、前年同期には1.1兆円ほど、今期には2,500億円ほど含まれていたから。それらを差し引けば今期も「それなりの成績であった」(孫会長)とのことです。

  • 当期純利益。Sprintによる一時益をのぞけば、20年度Q1は1,500億円ほど、21年度Q1は5,000億円ほどになる

ビジョンファンド事業の投資損益(累計)は6兆7.276億円の規模になりました。

「受難の時期もありましたが、4年間の累計で見ると利益が出ている。それなりに順調にいっている。ということであります」(孫会長)

  • ビジョンファンド事業の投資損益(累計)

時価純資産(NAV)は26.5兆円となりました。その中身を見てみると、アリババグループ関連が39%、SVFが34%、その他が27%という内訳。ここ最近の傾向として、SVFの成長がNAVを押し上げる形になりつつあります。

  • 時価純資産(NAV)

現在、ソフトバンクグループのビジョンファンド事業は、SVF1(92社)、SVF2(161社)、LatAm(48社)の合計301社で展開しています。

孫会長は「どこか1社に依存することなく、リスクが分散できるようになりました」としながらも「ただひとつ、リスクをとっていることがあるとすれば、それはAI企業にしか投資していないこと。AI革命を進めることが我々の想いでもあるわけですが、これはAIがコケたらソフトバンクグループもコケる、ということです」と話します。

とはいえ「でもこれは、インターネットがコケたらGAFAがコケるのと一緒。AI企業が必ず伸びるという我々の信念があるからリスクをとっています」と続けました。

  • ソフトバンクグループのビジョンファンド事業

なお、投資先(地域)の分散化もはかっており、最近では米国市場への投資が多くなりました。孫会長は「中国依存がなくなりバランスがよくなってきた」と評価します。

  • SVF1+SVF2+LatAmなどの投資先 時価

ここで中国について言及したのには理由がありました。中国当局の介入により、ここ最近、中国の株式市場におけるハイテク株(アリババ、テンセント、バイドゥなど)が軒並み下落しているのです。

これについて孫会長は「いまは受難のときですが、長い目で見れば、どこかでバランスを取り直していくと思います。業績は伸び続けているので、株価も持ち直すと信じています」との見方を示しました。

最後に、孫会長は「AIはこれからすべての産業を革新していきます。我々も世界中のAI起業家集団とビジョンを共有して、未来を創っていく。この4年間、ソフトバンクグループは資本家として“フルスイング”できているんじゃないか。今後もしっかりとリスクをとって、堂々とこの分野にコマを進めていきます。AI革命は始まったばかり。不退転の覚悟でこれに取り組んでいきます」と力強い言葉で締めくくりました。