楽天は8月4日、同社独自の通信技術をドイツの通信企業1&1に提供すると発表した。両社はドイツにおける第4のモバイルネットワーク構築について長期的なパートナーシップを締結することに合意。欧州初となる完全仮想化モバイルネットワークを構築する。

具体的には、楽天が1&1社の既存ネットワーク機器の構築を引き継ぎ、同社が整備する5G(第5世代移動通信システム)などの通信網向けに技術を提供する。通信網の設計から保守・運用までを受注し、10年間の契約で2000~3000億円のオーダーで収入を得る見込みだ。

ネットワーク構築においては、無線アクセスネットワーク、コアネットワーク、クラウド、オペレーションに関するさまざまソリューションで構成される楽天の「Rakuten Communications Platform(RCP)」と、パートナー企業のエコシステムを活用する。また、1&1社のネットワーク運用を自動化するために専用に開発したオーケストレーション・ソフトウェアも提供する。

楽天グループ 代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、「1&1社と同様に、楽天は業界を変革することを目指して日本でモバイル事業を立ち上げた。当社の知見やノウハウを共有し、ドイツで未来を見据えたモバイル通信の新しい標準となる次世代ネットワークを共同で構築していく」とコメントした。

また楽天は同日、無線アクセスネットワークの仮想化に関する技術を持つ米Altiostar Networks(アルティオスター)を買収し完全子会社化することを発表した。2011年に設立されたアルティオスターは、仮想化されたオープンな無線アクセスネットワーク(Open vRAN)ソリューションを提供しており、同社の企業価値は10億ドル(約1096億円)だという。

同社の提供するソフトウェアは、オープンインタフェースへの対応とベースバンドユニット(BBU)の仮想化により、ハードウェアとソフトウェアを分離させたマルチベンダー制モバイルネットワークの構築を可能にしているという。これにより、移動体通信事業者(MNO)は、異なるサービスやオペレーションの自動化をネットワークに適応させ、ネットワーク拡張や総所有コスト(TCO)を削減することが可能になる。

楽天とアルティオスターはパートナーシップを強化し、世界のモバイル業界に向けて、ソフトウェア中心の仮想化されたサービスの導入をさらに加速させていく方針だ。

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これらの動きに伴い楽天は、「RCP」を含むクラウドネイティブなOpen RANインフラストラクチャに関連するプロダクトやサービスなどを集約し、ひとつの新しい事業組織「Rakuten Symphony:楽天シンフォニー」として新たに始動させる。

  • Rakuten Symphonyの5つの事業領域

同組織は、日本、米国、シンガポール、インド、欧州、中東・アフリカでソリューション事業を展開するグローバルな事業組織。楽天が保有する通信事業者向けプロダクト、サービス、ソリューションを横断的なひとつの事業組織の下に集約させ、4Gおよび5G用のインフラストラクチャとプラットフォームソリューションを世界市場に提供していく方針だ。