ついにNVIDIAの新GPU「GeForce RTX 3080 Ti」と「GeForce RTX 3070 Ti」がベールを脱ぎました。これでGeForce RTX 3000シリーズは、GeForce RTX 3090を除くほぼ全てに“Ti”版が用意されることになります。FE(Founders Edition)版の主な性能はすでに掲載済みのベンチマーク詳報記事「GeForce RTX 3080 Tiを試す - 性能はほぼ3090?ほぼ史上最速GPUの実力検証」などをご覧いただくとしまして、今回はASUS JAPANからRTX 3080 Ti搭載で質実剛健な仕様が特徴の「TUF Gaming GeForce RTX 3080 Ti OC Edition」をお借りできたので、さっそくレビューしてみたいと思います。

  • ASUS「TUF Gaming GeForce RTX 3080 Ti OC Edition」

ASUSのグラフィックスカードといえばフラッグシップモデルの「ROG」シリーズが大人気ですが、タフネスを前面に押し出した「TUF Gaming」シリーズの製品も見逃せません。その名の通り高い耐久性が特徴で、今回レビューする「TUF Gaming GeForce RTX 3080 Ti OC Edition」も高耐久仕様。3つのファンは耐久性に優れるデュアルボールベアリングを採用した「Axial-techファン」で、中央のファンが逆回転して乱流を低減します。さらにヒートシンクは巨大なGPUダイにしっかり密着する「MAXCONTACT」仕様を採用し、より熱伝達効率を高めたとのこと。まずは外観からチェックしていきましょう。

  • パッケージ外観。少し前から新しくなったシンプルな「TUF Gaming」のシンボルがあしらわれています

  • 裏面には本製品が備えるさまざまなタフネスについて説明書きがありました

  • 化粧箱から引き出し、頑丈な厚紙製のパッケージを開梱

  • 付属品をチェック。保証書とセットアップガイド、製品がクリアしたMIL-STDテストの内容、カードが同梱されていました

  • これが同梱されていたカード。星3とありますが、ROGモデルは星4だったりするんでしょうか

  • 3つの「Axial-techファン」を組み合わせるスリムなクーラーを搭載しています

  • クーラーをアップでよく見ると、GPUやVRAMなどはもちろんのこと、電源回路の特に発熱が大きくなる箇所でしっかりとヒートシンクが接触していました。負荷がかかっても安心です

  • 映像出力端子にはDisplayPort×3、HDMI×2を搭載し、最大4画面の同時出力に対応します。ここしばらくHDMI端子が1つしかない製品が多かったので、これは嬉しいポイント

  • ファンの厚みはそれなりにコンパクト。2.7スロットを専有します

  • ブラケットの上部の張り出しは一般的なレベル。大半のケースでは特に問題なく使えると思います

  • 補助電源には8pin×2を要求します。ライティングはこのエンブレム部と、その下の小さなスリットだけに抑えられています

  • バックプレートはヘアライン仕上げの金属製で、かなりしっかりとした印象。後端部は3つめのファンに吹かれた風が吹き抜けるデザインです

  • GPUの裏側はバックプレートから露出しているタイプ。ここにホコリが積もりがちなので、個人的にはバックプレートで保護してほしかったところ

  • カード裏面には「Performance Mode」と「Quiet Mode」を切り替えられるスイッチを備えます。Performance Modeでも全然静かなので、よほど消費電力を抑えたい場合はあまり操作しなくて良さそうです

すみずみまで外観を見てみると、かなりガッシリとしつつもカード自体が案外スリムな印象。スペック上は2.7スロット厚を専有しますが、ブラケット部からの張り出しも少なくなかなかコンパクトにまとまっています。LEDライティングの搭載も最小限となっており、見た目に「古き良き」デザインを求めるユーザーにとってはかなり有力な選択肢になるのではと感じました。

全力運転でも全然静か

  • 今回ベンチマークを実施した構成

  • ダイサイズが628平方ミリメートルと巨大です

すでにGeForce RTX 3080 Tiの詳細な性能は、上述したベンチマーク記事「GeForce RTX 3080 Tiを試す - 性能はほぼ3090?ほぼ史上最速GPUの実力検証」にてテスト済みですが、せっかくなのでFounders Editionに対してオーバークロック版となる本製品でも性能を計測してみました。構成はAMD Ryzen 7 3700X、16GBメモリ、本製品というもので、OSはWindows 10 Homeです。

  • 3DMark「Fire Strike Extreme」

  • 3DMark「TimeSpy」

  • 3DMark「DirextX Raytracing feature test」

  • 3DMark「NVIDIA DLSS Feature test」

  • 「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」

  • 「ファイナルファンタジーXV ベンチマーク(※フルHD、DLSSオフ)」

  • 「ファイナルファンタジーXV ベンチマーク(※4K、DLSSオン)」

こんなに重いベンチマークでも難なく動作するんだ……というGeForce RTX 3080 Tiの驚異的な性能を体感。3DMarkの重量級テストもガリガリ描画していく上、FF15ベンチマークも難なくパスしていきます。また、動作音がかなり静かに抑えられていた点も好印象。PCケースに収めずテストを行いましたが、ファンの動作音を不愉快に感じることはありませんでした。

加えて、連続して大きな負荷をかけ続けた際の温度もチェック。実際のゲームプレイでここまで大きな負荷が連続してかかることはそうないと思いますが、ファン全開時の動作温度を確認しましょう。

  • OCCT V8.2.1

室温24度で実施したところ、GPU Tempratureは62度を超えません。かなり高い数字が出るGPU Memory Junctionでも72度前後に収まったほか、GPU Hot Spot Tempratureも65度以下とかなり健闘しています。350Wという巨大な電力を消費しながら、しっかりと対処できているという印象です。

番外編 マイニング性能は?

既報の通り、今後新しく製造されるGeForce製品はすべてマイニング効率を落としたLHR(Lite Hash Rate)仕様になっています。本格的にマイニングを行うには効率化を図るためGPUやVRAMのクロックを適切な値にチューニングする必要がありますが、今回はかんたんにそのままの状態でマイニングを実施してみました。使用したアルゴリズムはethashとetchashです。

  • ethashでのハッシュレートは56.88MH/sくらいのようです

  • etchashではおよそ57.01MHzという結果に

GeForce RTX 3080 Tiのイーサリアムマイニング性能は、およそ57MH/sくらいと言えそう。マイニングプールに掲出されているGPU別のハッシュレートランキングを見てみると、非LHR仕様のGeForce RTX 3090のハッシュレートは120MH/s強というものなので、ほぼ同規模のCUDAコアを備えるGeForce RTX 3080 Tiでは、たしかにおよそ50%前後のマイニング制限が施されていると言えそうです。

350WのGPUを静かに使える製品

ここまで、ASUSの「TUF Gaming」ブランドのグラフィックスカード「TUF Gaming GeForce RTX 3080 Ti OC Edition」のレビューをお送りしました。最小限のライティングとシンプルな外装を採用し、クーラーは2スロット厚を若干上回るスリムサイズ。全幅も299.9mm前後と、一般的なミドルタワーケースなら特に気を配る必要もなく安心して利用できそうです。

「在庫があるならROG仕様の方を買いたいけど、仕方なくTUF Gamingのグラフィックスカードを買う」というような製品ではなく、質実剛健な製品づくりで個性を強め、競争力を高めてきた印象。性能だけでなくお値段も229,900円前後とハイエンドですが、とても魅力的な製品になっていると感じました。