1990年に設立されたITコンサルティング会社「ITbook」は、今年の4月からレガシーシステム分析サービス「Smart Tool」の本格展開を開始した。

「Smart Tool」は、稼働中のシステム内のソースコードを読み込み、可視化ドキュメントを作成し、独自特許技術の「手繰り寄せ」機能を用いて、より実態を把握できる。

  • 「Smart Tool」の機能概要

作成する可視化ドキュメントとしては、フローチャート、親子関連図、類似メソッド一覧、モジュールネスト図、モジュール一覧、関連項目調査表などがある。対応する言語は、COBOL(日立/IBM/富士通/NEC)、 Java、 C、C#、C++、VB6.0、VB.Net、PL/I、PHP、Perl、Delphi(Object Pascal)、SQL(Oracle、PL/SQL対応)、ABAP、RPG、アセンブラなど。

  • 作成する可視化ドキュメント(例)

日本郵政グループのシステム会社である日本郵政インフォメーションテクノロジー(JPiT)やジェイアール東海情報システムなどで利用実績がある。さらに、日本郵政インフォメーションテクノロジーでは、継続的な採用も決まっている。

日本郵政インフォメーションテクノロジーでは、数年前から実験的にこのツールを利用。昨年から本格的に導入し、受入テストで活用してきたという。

日本郵政インフォメーションテクノロジーは、日本郵政の100%子会社で、郵便局をはじめとした日本郵政グループのITインフラ、アプリ開発・保守・運用を行うほか、日本郵政のデータセンターの運営や各種システム構築に関する支援などを行っている。

同社が管理しているシステムとしては、郵政総合情報通信ネットワーク(PNET)というネットワーク基盤があり、全国24,000の郵便局をつなぎ、携帯端末を含め40万の端末が接続されている。

また、郵便局等の窓口やバックオフィスで利用されるPC基盤システム(JP-PC)はPNETに接続される形で、全国の拠点に10.5万台配備されており、PC管理のほか、ヘルプデスク機能も提供する。

さらに、約23万人のグループ社員給与などを管理する人事システムや会計システムなども提供。そのほか、プライベートクラウドシステムとして、人財マネジメントシステムや広告業務取扱システムなど、80ほどのシステムを提供している。

同社でのシステム開発の多くは外部委託されており、納品されたシステムの受入テストやソースコードの管理が課題だった。見積りの妥当性評価や品質評価のために、ユーザー視点で開発/改修規模、改修前後の変更箇所を把握する必要があったという。

日本郵政インフォメーションテクノロジー 品質向上推進部長 山田智子氏は、「Smart Tool」導入前の課題について、「これまでパートナーが開発したシステムの受入テストは運用面を中心にやっており、ソースコードの細かな点までは確認してきませんでしたが、より品質の高いものを提供するため、ソースコードの中身まで確認するようなことをやっていかなければならないという思いがありました。しかし、どのレベルでソースコードを見ていけばいいのかが悩みでした。Smart Toolだと、プログラム構造全体を把握できます」と語る。

同社はソースコードをSmartToolで解析。類似コード、複雑な構造、モジュールの親子関係を把握している。

仕様書の内容が実際のコードに反映されているかは、作業量的に実際のコードを見て確認することはできないが、フローチャートを追うことで、内容を確認しやすいという。これにより、次の改修では共通化や保守性といった点を考慮した改修が可能になる。さらに、改修した部分の影響範囲を把握でき、試験漏れの防止に役立っているという。

同社は昨年度、7つのプロジェクトにこのツールを活用し、改修の際にフローチャートやモジュール一覧などを利用することで、設計の効率化、複雑なJavascriptの可視化、実際の開発規模の把握などで効果を上げたという。開発規模の把握では、既存のソースの流用が判明し、開発規模を1.7Mから0.4Mへと、約76%減少させることができたという。

Smart Toolではプログラムのソースコードからどんな風にシステムがつくられているのかを把握でき、IF、THEN ELSEを明確にしながらフローチャートのような資料を出せる。 また、修正前と修正後の変更点も抽出でき、副次的な効果として、空白行やコメント行を除外した実際の開発規模を把握できるという点もある。

日本郵政インフォメーションテクノロジー 代表取締役執行役員社長 雪野誠二氏は「私としては、開発の見積もりが妥当かどうかという点にも関心があります。あるシステムは1社がずっと担当して開発や改修をやってきましたが、その会社でないと改修の規模がどれくらいなのかわからない面があります。このツールを利用すれば、見積りの妥当性を判断できるようになります」とメリットを語った。

同社は現在内製化を推進しており、今後は単体テストなどで活用することで、バグが少なく保守性の高いシステムを構築していきたいと考えているという。

「コーディングのところから活用することで、きれいなプログラムをつくることができると思います。保守性の高いプログラムをつくれば、運用コストも下げられると思います。将来的には、良いプログラムのポイントなどの資料を作成し、設計者のスキル向上など人材育成に活用していきたいと思います。また、外部に委託しているシステムにおいても、受入テストのみではなく、より前の工程からプログラム解析を利用し品質を確認していくことも検討しています」(山田氏)

  • 日本郵政インフォメーションテクノロジー 代表取締役執行役員社長 雪野誠二氏(左)と 品質向上推進部長 山田智子氏(右)