一部のユーザーに絶大な人気があるハードウェア「nasne」(ナスネ)をご存知でしょうか? nasneとは、ソニーのPlayStation、各社のスマートフォン、タブレット、パソコンとつながるネットワークレコーダーです。
nasneは発売元のSIE(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)が2019年に惜しまれつつ出荷終了を表明。その後、バッファローがSIEの協力のもとnasneを継承して販売すると発表し、界隈で大きな話題となっていました。新nasneの発売は2021年3月末、amazon内バッファロー公式ストアにて29,800円で販売されます(2021年3月25日から予約の受け付けを開始)。
今後は、ハードウェア面をバッファロー、ソフトウェア面では「torne」(トルネ)アプリの開発と保守をSIEといったように、バッファローとSIEが連携して取り組んでいくことになります。ハードウェア開発元がSIEからバッファローに変わり一体nasneはどう変わったのか? ここではnasneとtorneの大ファンである筆者が新nasne(試用機)をいち早く使い、使用感などをレポートします。
どこにでも設置できるからゴチャつくテレビ周りがスッキリ
前述の通り、nasneはテレビの視聴や録画などができるネットワークレコーダー。2012年の発売から2019年の出荷終了まで約7年間、SIE(ソニー・インタラクティブエンターティメント)が開発と販売を行っており、おもにPlayStation上でテレビや録画番組を楽しむ機器でした。
「ネットワークレコーダー」とあるように、PlayStationだけではなく、スマホやタブレット、パソコンともつながります。スマホを使って外出先から録画予約をしたり、録画した番組を外出先でチェックしたりと、場所を選ばず好きなときに好きな番組を楽しめるのが魅力のひとつです。
ところで、皆さんはリビングの大きなテレビやレコーダーを「ジャマだなー」と思ったことないでしょうか? 部屋に十分な広さがあればよいのですが、狭い我が家のリビングではテレビとゲーム機がかなりの空間を占有しています。これが特に掃除するとき激しくジャマに感じるのです。
著者がnasneで一番便利だと思っているのが「置き場所の自由度が高い」点です。nasneにはリモコンがありません。ブルーレイドライブもありません。それどころか電源スイッチもありません。すべての設定と操作はネットワーク越しに行います。
そのぶん本体は小さく、テレビのアンテナ線が届いて有線LANにつなげられる場所なら、テレビから離れた場所に置いてもOK。机の下でもタンス裏でも好きな場所に置けます。一度設置すればハードウェアとしての存在は意識しなくてよくなる――。これはnasneの物理面における最大の魅力でしょう。我が家では仕事部屋に光ネットワーク回線のルーターが設置されているので、仕事机の下にnasneを置きました。nasneの有線LAN端子はGigabit Ethernet(1000BAST-T)です。無線LAN(Wi-Fi)には対応していません。
見た目と操作感は同じでも、中身はばっちり機能アップ
新nanneは中身も新しくなっています。一番の違いは本体内蔵のHDD容量。旧nasneは1TBが最大でしたが、新nasneは2TBが標準となりました。また、増設用ストレージ(USB接続、USBバスパワー駆動の外付けHDD・SSD)の最大容量も、2TBから6TBに増強されています。
従来は1台あたりの容量上限が3TBだったため、2台目のnanseや別のレコーダーを増設することがありましたが、1台で最大8TBを使える新nasneはその心配も小さくなりそうです。
新nasneの内蔵チューナーは地上デジタル・BSデジタル・110度CSデジタル×1ですが、新旧nasneを最大4台までデイジーチェーン接続で増設していけます。また、テレビ番組のほかにも、nasneのストレージに写真や動画、音楽を保存して、スマホやパソコンから再生可能です。
対応デバイスは、Windows 10パソコン、iPhone・iPad、Android端末、PlayStation 4で、SIEからPlayStation 5用のtorneアプリが2021年末にリリース予定。iPhone・iPad用の「torne mobile」アプリは、視聴の解像度が720pへと向上したのも強化点です。今回はおもにPS4とAndroidスマホで使っています。
もうひとつのハードウェアの変更点が、付属するB-CASカードがフルサイズからminiサイズになったこと。メインの録画機を新nasneに後継させる場合、BSやCSの有料チャンネルではカード番号の変更が必要となる場合がある点には注意が必要です。
torneは一度使ったら手放せない!
一般的なレコーダーはテレビに接続してリモコンを使って操作しますが、nasneの操作全般を担うのはTVアプリケーション「torne(トルネ)」です。torneにはPS4用「trune」とiOS・Android用「torne mobile」の2種類があります。
どちらも基本は無料ですが、PS4用はスキンやソニー製ブルーレイレコーダーとの連携機能といった一部オプションは有料です。torne mobileはテレビや録画番組の視聴も書き出し機能も有料。PS4版は無料でもテレビの視聴や録画が可能ですが、torne mobileは課金が必須です。
我が家ではおもにPS4でtorneを利用していますが、torneのユーザーインタフェースがとにかく優秀。特にPS4版の操作レスポンスは爆速といってもいいレベルです。筆者もPS3時代から現在までtorneを使っていますが、ほかのレコーダーやテレビの操作画面でここまでレスポンスのよい製品はほとんどないのでは?
一方、モバイル版torne mobileのメリットは柔軟性です。宅内外を問わずに録画予約やリモート視聴を行えます。さらに「外出先から録画番組を視聴すると通信データ容量が心配」という人のために、録画番組の「書き出し機能」もあります。自宅で録画番組をあらかじめスマホのストレージに書き出しておけば、通信容量を気にせず外出先でも録画した番組を楽しめます。この書き出し機能はPS4版にはありません。なお、ダビング10とコピーワンスについては番組に設定されたものに準拠します。
ユーザーインタフェースの使いやすさ(と、トルネフのかわいさ)ゆえに、nasneのすばらしさはtorneアプリと組み合わせてこそです。nasneに録画した番組はテレビのネットワーク機能を使っても視聴できますが、録画したタイトルがリスト表示されるだけで検索性が悪いうえ、レスポンスも遅いという問題点があります。torneを使うと、快適性には速さと一覧性が重要だと実感します。
全体的な使用感としては、旧nasneも新nasneも、PS4から使うぶんにはまったく違いがわかりません。新nasneの登録が終われば、それまでつながっていたレコーダーたちと一緒にシームレスな操作が行えます。操作レスポンスも同等、録画モードも旧nasneと同じく「DRモード(高画質)」と「3倍モード(標準)」が用意されています。「使う」という面では、いまある環境に新nasneを追加しても「自然に融合して変わりない」というのがとても気に入りました。
torne mobileでは、480pから720pへと大幅な再生画質のアップが図られました。これまで個人的には画質に不満を感じたことはなかったのですが、新nasneで720pのHD画質に対応したことは素直に歓迎です。
複数台のnasneをつないだときの動作は変更ありません。録画番組は複数の端末から同時再生が可能ですが、放送中(録画中)の番組視聴は1台のnasneにつき1台の端末に限られます。
2012年のnasneから2021年のnasneへ
新nasneを使ってみて最も強く感じたのは「なじみ感」です。新nasneの内部は刷新されましたが、使用時はこれまでの環境に何の違和感もなくなじみます。
バッファローがSIEからnasneを継承すると発表したとき、ネットでは同じものが出るのか新型が出るのか? 4Kチューナーが搭載されるのではないか――など、さまざまな予想がありました。今回、短時間ですが試用してみて、新nasneは期待以上の完成度です。
旧nasneのユーザーボイスにあった「もっと録画容量が欲しい」には、新nasneでは内蔵HDDの2TB化と増設ストレージの最大容量アップで対応。通信環境の進化には、モバイル版torne mobileの720p再生を実現。旧nasneから新nasneへと、見た目は引き継ぎながらも中身はしっかり2021年のnasneに仕上がっています(我が家のテレビは4K解像度ですがチューナーは2Kなので、個人的には新nasneに4Kチューナーが欲しかったところです……)。
2021年末にはPS5用のtorneアプリも予定されています。torneアプリはPS3時代から驚くほどの高速レスポンスを誇っていました。しかし、PS4ではさらに起動時間をはじめとして格段の速度アップを実現。速さをひとつのウリとするPS5でtorneはどう進化するのか、いまからとても楽しみです。