リコーは3月8日、全方位から裸眼で立体映像を見られる投影装置を開発したと発表。この技術を用いた立体映像の認知度拡大と市場性の検証をするため、デジタルサイネージ用途で2021年3月から「WARPE」(ワープイー)ブランドとしてビジネスパートナーを募り、市場探索を開始する。
同社の新事業創出に向けたプログラム「TRIBUS 2020」において、現実空間に全方位映像を映し出すことのできる体積走査型の投影装置を社内チームで開発。装置の真下から上に向けて光を投射し、独自に開発した特殊な回転スクリーンに当たった光の残像で立体映像を表示させる仕組みで、現時点では人の頭のサイズ(直径200mm、高さ250mm)で立体映像のカラー動画表示を実現している。
立体映像はこれまで、特殊な眼鏡や専用のヘッドセットを通して見るものが大半だったが、リコーの同技術では、全方位から裸眼で立体映像を見ることが可能になる。仮想空間の三次元デジタルコンテンツを、現実の世界に同化するかのように立体投影し、顧客とコミュニケーションをすることで「新たな体験価値を提供し、ワクワクできる場所へと進化させることに寄与する」としている。
開発にあたっては、三次元酔いを起こさずに、現実空間に実在するような完全立体表示を実現することにこだわったとのこと。現時点で約3.7億ボクセル(三次元像を構成する画素の数)のカラー動画立体表示を実現したという。ちなみに、フルハイビジョンの平面映像では二次元像を構成する画素の数は約207万画素だ。
2021年度中に試作機による実証実験や試験的な稼働を始め、2022年度中の実用化を目指す。将来的には、働く場における立体映像によるリモート会議や、立体構造物のシミュレーション、モデリング支援、教育分野における立体構造把握支援、エンターテインメント、家庭用バーチャルアシスタントなど、幅広い用途でデジタルコンテンツを使ったコミュニケーションの高度化に貢献するとのこと。