AIデータ活用コンソーシアム(AIDC)は2月10日、AIに対応したデータ取引サービス「AIDC Data Cloud」を構築したと発表した。同サービスは円滑なデータ流通を実現するための契約モデルに基づくさまざまデータ流通を可能とするクラウド基盤であるという。同日よりプレビュー版の提供を開始し、3月1日より実際のサービス提供を開始するとのことだ。

AIデータ活用コンソーシアム理事・副会長 兼 東京大学未来ビジョン研究センター教授の渡部俊也氏は、「従来のデータ活用はオープンデータによるマーケット分析などの消費型(一回で完結した利用)であり、データが形を変え製品・サービスに組み込まれて流通することがなかった。ディープラーニングや統計的学習などのAIが一般的に活用されるに従い、データが学習済みモデルなどに形を変え、製品やインターネットサービスに組み込まれ利用される事例が増えてきている」とAIとデータを取り巻く現状を説明した。

  • AIデータ活用コンソーシアム 理事・副会長 兼 東京大学未来ビジョン研究センター教授 渡部俊也氏

一方、データの所有者とそれを活用して研究を行ったり、製品・サービスを提供する利用者は、必ずしも同一でなく、両者間でのデータの流通体制が望まれているとし、AIの学習用データとしての流通は、倫理、知的財産、製造物責任、商流に基づく利益配分など複雑な課題があることも明らかになっているという。

特に細分化されたデータ提供者、異なるライセンスの考え方、個人情報、計算リソースの連携など、AI研究、オープンイノベーション、ソリューション化には課題が山積みだ。具体的には、データ提供・活用における契約プロセスの標準化とデータ共有基盤の構築や、個人情報・プライバシーに考慮したデータ活用のモデルの実現などだ。

そこでAIDCでは、コンソーシアムの活動を通してデータ取引サービス基盤を開発・提供すると同時に、データ取引に欠かせない課題および商流に対応した契約モデルの開発を法律の専門家、有識者とともに進めてきている。今回提供を開始するデータ取引サービス「AIDC Data Cloud」は、その検討結果に基づき、種々のデータ提供および利用条件に対応したデータ取引サービスを提供する。

同サービスは、データ提供者が望む条件でデータを登録しカタログとして一覧化されたデータを、利用者が選択し利用契約の締結が可能。商流と知的財産保護、および倫理・製造物責任・保証・来歴に考慮したデータ取引サービスと契約モデルに対応している。

また、さまざまな種類・サイズのデータに対応しており、ファイルのアップロード、ダウンロードだけでなくWeb APIに対応することで、データの提供および取得が可能になる。さらに、オープンデータからワンタイム、レベニューシェアなど多様なデータ取引形態に対応しているとのことだ。

  • データ取引サービス「AIDC Data Cloud」の技術要素

取引対象となるデータは、オリジナルデータ、クレンジングデータまたはアノテーションデータ。契約の当事者となる者としては、AI製品をエンドユーザーが利用するまでのプロセスで登場するデータ生成者、データアノテーター、AI研究者・AI開発者、コンポーネントメーカー、最終製品メーカー、エンドユーザーを想定しているとのこと。

AIDCは今後、同サービスに設定値などを前もって調整できるAIモデルや、深層学習などの技術要素を追加する方針だ。