2月になり徐々に暖かい日が増えてくると、気になってくるのが花粉問題です。一般的に花粉対策は「花粉を家の中に持ち込まない」ことが最善とされています。とはいえ、コロナ禍のいまは定期的な換気も推奨されていて、どうしたらよいか迷っている人も多いのではないでしょうか?

そんな状況のなか、羽根のない空気清浄ファン「Dyson Pure」を販売しているダイソンが「Dyson花粉対策勉強会」と題したプレス向けオンラインセミナーを開催。専門家である帝京大学大学院医学研究科 医真菌学教授の槇村浩一博士が、コロナ禍における花粉対策について解説しました。

  • 花粉について語る帝京大学大学院医学研究科 医真菌学教授 槇村浩一博士

  • セミナーでは、空気清浄機と加湿器を併用することによる効果について語られました。写真はダイソンの加湿空気清浄機「Dyson Pure Humidify+Cool」。実験(後述)でもダイソンの空気清浄機が使われています

そもそも今年の花粉量は多い? 少ない?

冒頭では、ダイソンから2021年の花粉量について説明がありました。2021年の花粉飛散傾向は、2020年と比較すると多め。ただしこれは、花粉飛散量が比較的少なかった2020年と比較したからで、実は全国的には平年を下回る予想となっているそう。

全国平均でみると、2021年の花粉は平年(2011~2020年)の70%ほどの飛散量になる見込み。また、花粉が飛び始める時期に関して、一部地域はすでに飛散が始まっているほか、多くの地域が2月上旬から本格的に影響を受けるだろうと予測しています。例年より花粉量は少ないとはいえ、花粉対策は早めに準備したほうがよさそうです。

  • 2020年の飛散量と比較した2021年の花粉飛散予想

  • 花粉の飛散開始時期を予想した分布図。静岡の一部はすでに花粉が飛散しています

子どもの花粉症が17倍に増加! 花粉症じゃなくても対策は必須

槇村博士のセミナーでは、まず現在の花粉症の状況について。昭和58年からスギ花粉症の症状で困っている人の推移を集計した調査では、なんと平成28年までの約30年で「0歳~14歳」の発症率が17倍に増加。さらに、調査の初期段階ではスギ花粉症の症状にわずらわされているのはおもに30歳~44歳の大人だったのに対し、現在は一番症状に困っているのは15歳~29歳と、若い世代にシフトしています。

  • スギ花粉症、子どもの発症が増加

もうひとつ興味深いデータが、スギ花粉の飛散量と、花粉症患者の数をグラフ化したものです。グラフからは、花粉の飛散数が多いほど花粉症患者が増えていることが見て取れます。槇村博士は、このグラフから「まだ花粉症ではない人も、スギ花粉を浴びることで花粉症の症状を起こしやすくなる」と解説。そして、花粉症の症状の有無に関わらず、これから花粉症にならないためにも、どんな人でも花粉はできるだけ浴びないようにするべきだとしました。

  • ある日突然、花粉症になったという声は聞いたことがあります

家庭ではどんな対策をすればよい?

花粉症対策は、外出先ではマスクやメガネを身に着け、帽子などをかぶるほか、帰宅したら衣服の花粉を落とし、うがい、手洗い、洗顔が推奨されています。それでは、自宅内の対策はどうすればよいでしょう?

現在はコロナ禍のため、部屋の定期的な換気が推奨されていますが、もちろん窓を開けて換気をすれば、部屋へ花粉が入ってきてしまいます。槇村博士はこれに対して「そもそも積極的な換気が必要なのかをチェックすべき」と。コロナ禍で換気が必要なのは、コロナウイルスが部屋に持ち込まれている可能性があるから。つまり、たとえば自分だけがいる部屋なら、住宅設備の24時間換気や、空気清浄機を使った日常レベルの換気で十分な可能性もあるそうです。

もちろん、新型コロナウイルス感染の可能性がある人がいる部屋は、積極的な換気が必要。この場合は窓を全開にせず少しだけ開け、その近く(外気が入ってくる位置)に空気清浄機を置くことで、花粉の流入を抑えるのがおススメとのこと。

  • その部屋にどんな人がいるかによって、換気を使い分け

槇村博士が提言する、もうひとつの換気に関するチェック項目は、花粉が飛散しやすいタイミングの確認です。花粉は気温が上昇し、さらに湿度が低下すると急激に増加しやすいといいます。また、雨の間は雄花が閉じるため、雨が止んだ後は溜めていた花粉を一気に放出するので大量の花粉がまき散らされるそう。天気予報をチェックし、こういった「花粉が飛びやすいタイミング」を避けて換気することは、かなりの花粉対策になるのです。

  • 温度が高く、湿度が低いとスギ花粉の飛散量が増加

花粉の「悪者」はコロナウイルス並みの小ささ?

ところで、花粉は空気中に漂う粒子のなかでは、比較的大きなサイズと聞いたことはないでしょうか? スギ花粉自体は20~30μmと、空気中の汚れのなかでは大きな部類です。このため、比較的すばやく床に落ちるといわれてきました。

槇村博士によると、人間に花粉症の症状を引き起こすのは、スギ花粉のCryj1・Cryj2という2種類のたんぱく質。このCryjはスギ花粉全体と比較すると非常に小さく、なんと新型コロナウイルスとほぼ同じ大きさのものもあるそう。つまり、空気中に漂うとなかなか床に落下せず、人が呼吸から吸い込んだりしやすいのです。さらに、スギ花粉は水に浸かることで破裂し、この小さな粒子であるCryjも空気中に飛散します。

  • スギ花粉はこんな構造をしています

  • スギ花粉と新型コロナウイルスの大きさ

槇村博士は、このような空中を漂う浮遊粒子に対して、空気清浄機はかなり有効だといいます。槇村博士が関わったCryjと同程度のサイズである浮遊粒子を使った実験では、窓を開けると部屋内の微粒子濃度が200%増加。窓を閉めると微粒子濃度は徐々に減りますが、窓を閉めただけの部屋は、窓を開ける前の濃度に戻るだけだったのに対し、ダイソンの空気清浄機を導入した部屋は、30分の稼働で微粒子の濃度が80%減少したといいます。

  • 窓を開けて換気すると、部屋の中の微粒子濃度が一時的に急増。空気清浄機を運転させることで、微粒子濃度が大きく下がるという実験結果

加湿器も花粉症対策として有効。小さくて軽い粒子は床に落下せず漂い続け、人の気管などに入って悪さをしますが、湿度が十分に高いと微粒子が水滴に吸着して「大きな塊」となり、床に落下しやすくなるのです。

  • 部屋の中の花粉対策には、加湿器も効果的。十分に加湿すると、空気中の微粒子に水分が付着して(重くなって)床面に落ちやすくなるので、こまめに掃除機をかけたいところ

槇村博士は「住宅はそれぞれ環境が異なるので、花粉対策に『これをすれば正しい』というものはない」としながらも、家族の生活や家の間取り、自宅がある地域の天気など、複合的に考えて、自分に最適な花粉症対策をしてほしいと結びました。

コロナによるステイホームで室内環境は悪化傾向に……?

セミナーの最後には、ダイソンから東京都内の空気質についての報告が。2020年4月7日から5月25日にかけて、東京都内で使用されたダイソンの空気清浄機で空気質の統計データを調査した結果(スマホアプリで各種情報を得られる機種)、2019年同時期と比べてNO2(二酸化窒素)が30%増、VOC(揮発性有機化合物)が27%増だったそうです(※)。ダイソンはこの理由として、コロナ禍によるステイホームで普段よりも多くの人が家で活動しているためと推察。現在は自粛期間が延長されており、「室内の空気質の悪化は当分続く可能性がある」としています。

※:一般的にNO2は、喫煙や、ガスレンジ・ガス給湯器・開放型暖房機器を使用することで室内に発生。VOCは、喫煙、殺虫剤、消臭・芳香剤、滅菌材、接着剤、塗料、インクなどが室内でのおもな発生源とされています。

さらに「ダイソンの空気清浄機は独自のAir Multiplierテクノロジーで空気を送り出して部屋中の空気を循環させる。部屋の隅の微粒子までしっかり引き寄せてとらえるので、花粉に限らず自宅の空気質を向上させるために活用してほしい」とDyson Pureシリーズについてアピールしました。

  • ダイソンの資料から。「羽根のない扇風機」でおなじみの、Air Multiplierテクノロジーを搭載したダイソンの空気清浄機シリーズ。部屋の空気をしっかり循環させ、離れた場所の微粒子もとらえるのが特徴です