意外に電子化は進んでいる?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によりテレワークやリモートワークの普及が進み、ペーパーレスへの関心が高まっている。しかし、ペーパーレスの全体像は把握が難しく、どこから着手すべきか、またどこを目指せばよいのか迷っている企業も少なくない。そこで本記事では、ガートナーが開催した「テレワークの効率を高めるペーパーレスとファイル活用の基本とは」と題するセミナーの内容を紹介する。
同セミナーは、同社が11月17日から19日にかけてオンラインで開催したオンラインイベント「Gartner IT Symposium/Xpo 2020」の一環として開かれた。講師は、同社バイスプレジデントでアナリストの鈴木雅喜氏。
鈴木氏によると、同社のクライアントである一般企業から寄せられる質問が、コロナ禍に伴い2020年4月あるいは5月頃から急増しており、その中でも最も多かったのが、電子契約と電子サインに関するもので、これらと電子帳簿保存法との関連する質問も多かったという。また、ワークフローやAI OCRを含むOCR、ペーパーレスに関する質問も多いとのこと。
「世の中が大きく変わりつつある中で、何も対応しなかったらどうなるかということは、考えておかなければいけません。時代遅れの企業になってしまう恐れが、また改めて出てきていると言えます」(鈴木氏)
こうした流れに乗り遅れて時代遅れの企業となってしまうと、世間の声は非常に厳しいと鈴木氏は警鐘を鳴らす。
ブランド力や実行力、知名度の評価が高い企業でも、いざパートナーを組もうとした段階で、「あの会社は決断や動きが遅過ぎて、組んでいくのは難しい」との声を聞くこともあったという。
鈴木氏は、社内からの批判も意識すべきだと指摘する。
例えば、若手社員はスマートフォンを使いこなしている世代だが、いざ入社してみると紙の書類やハンコがあふれており、無駄な仕事をしていると感じたり将来性に期待を持てなくなってしまったりする場合も見受けられると鈴木氏は語る。
「今は大丈夫でも、3年後や5年後にこんなことを言われてしまわないように、しっかりと社会の流れと、できればそれよりも先取りして次の世界に行くことを考えていくべき時に来ています」(鈴木氏)
コロナ禍以前となるが、同社は2020年1月に国内企業におけるペーパーレスに関する取り組み状況を調査した。これを見た鈴木氏は、少し驚いたとのことだ。
この結果によると、回答企業の1/3が電子化をほぼ全て終えている。これについて鈴木氏は、中小企業では財務パッケージなどで電子化を進めやすい状況にあること、新興企業やネット企業では紙を使わない業務から始めていることといった実状を挙げる。
この他、8割を電子化した企業が1/4、半分から1/4を電子化した企業が1/4で、ほとんどが紙だという企業は全体の8%弱しかない。こうした状況を受けて、実は世の中におけるペーパーレス化の動きは思ったより進んでいるということを、社内に向けて話すのもいいことではないかと鈴木氏は推奨した。