スマホだけでZoom生活できるかも?

新型コロナウイルスに端を発する緊急事態宣言によって、多くの企業が勤務形態のシフトを迫られることになった。多くの企業が勤務形態を物理的な出勤からWeb会議やコミュニケーションサービスを活用したテレワークへシフトさせた。緊急事態宣言は2020年5月25日に解除されたが、緊急事態宣言解除後もテレワークへのシフトを継続している企業もある。テレワークを活用することで、オフィスビルにかかる賃貸料、通勤にかかる手当などの削減も期待できる。テレワークは働き方改革の一環として国が推奨してきた勤務形態でもあり、新型コロナウイルスインシデントは良くも悪くも働き方を変更するきっかけとなった。

ここで問題になってくることがある。テレワークは技術に依存した勤務形態であり、技術基盤を構成する要素がインターネットであり通信回線であるということだ。固定回線で定額の高速インターネット通信を使用しているのであれば問題はないが、スマートフォンだけで生活している世帯や学生は影響を受けた。Web会議は通信量が多く、契約した通信容量の範囲を超えてしまいがちだからだ。

試してみた、Wi-Fiがない環境でZoomはどこまで使えるのか?」で、Wi-Fiのない環境でZoomによるWeb会議がどこまで現実的かを取り上げた。当時の計測で1時間の会議で700MBほど通信量が消費された。何度かWeb会議を行うと、契約しているプランにもよるが、上限を超えて通信制限の対象となるレベルだ。

頻繁にWeb会議を行うケースでは、プランをより大容量なものに変更するか、固定回線を導入する必要がある。プリペイドのSIMを購入して急場をしのぐ方法も取り上げた。

しかし、2020年6月に入ってから状況が変わった。格安スマホ(格安SIM)において通信制限時の速度を1Mbpsへ引き上げたサービスが登場したのだ。格安スマホだけでZoom会議生活が実現できる可能性が出てきた。Web会議に必要な設備が変わることも考えられる。

格安スマホと通信制限「1Mbps」

使い方によって変わるが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの主要な携帯大手キャリアの提供しているプランを使った場合、1カ月当たりのスマートフォンの通信料は7000円~9000円をベースに、割引やオプションまたは使用状況などで料金が上下するケースが多い。毎月の支払いとしては決して安いとは言えない。これに比べ、格安スマホと呼ばれるサービスは通信料が廉価だ。半額やそれ以下になるケースもある。

なお、言葉としては「格安スマホ」が使われることが多いが、実際には「格安SIM」と表現するほうが現実に即している。しかし、ほとんどのユーザはSIMそのものを意識することは少なく、スマートフォンを連想することが多い。そのためか、言葉としては「格安スマホ」が使われている。実際には「携帯大手キャリアの提供しているプランよりも安いプランを利用できるSIMカードを搭載したスマートフォン」ということになる。

格安スマホ(格安SIM)は選択肢が多い。しかし、Zoom生活をするにあたっては通信制限を前提とする必要があり、その観点から次のサービスに注目したい。

プラン 通信容量 通信制限速度
ワイモバイル スマホベーシックプランR 14GB 1Mbps
ワイモバイル スマホベーシックプランM 10GB 1Mbps
UQモバイル スマホプランR 10GB 1Mbps
楽天モバイル UN-LIMIT2.0 5GB 1Mbps

上記のサービスは消費した通信量が契約容量を超えて「通信制限」モードに入っても、通信速度1Mbpsが提供される。このサービスは最初に楽天モバイルが導入し、2020年6月にワイモバイルとUQモバイルが追従した新しいサービスだ。1Mbpsという通信速度は結構速い。使い方によってはこの通信速度で十分だ。従来の通信制限はかなり使いにくかったが、このレベルになってくると通信制限が入っても制限が入ったことを感じない可能性すらある。

1MbpsでZoom生活はできるのか?

UQモバイルおよび楽天モバイルには、通信速度を最初から1Mbpsに制限する機能が用意されている。UQモバイルなら「節約モード」、楽天モバイルなら「データ高速モードをOFF」がそれだ。さらに、UQモバイルと楽天モバイルは、使いきれなかった通信容量を翌月まで持ち越すことができる。

つまり、常に1Mbpsの状態で通信をするようにして、大容量の高速通信が必要になった時だけ高速通信機能を有効にする、といった使い方ができるのだ。実質2カ月分の通信容量を常に持っている状況にしておくこともできるので、安心だ。

もし、Zoomをこの1Mbpsの状態で使用できるなら、手持ちの通信容量は減らないし、格安スマホだけでZoom生活を送ることが可能になる。

ということで、実際にUQモバイルの「スマホプランR」でZoom会議生活を送ってみた。次のスクリーンショットはある会議の前の状態だ。モバイルデータ通信の統計データをリセットしてある。通信モードは「節約モード」にしてある。

  • モバイルデータ通信の統計データをリセット

    モバイルデータ通信の統計データをリセット

  • 通信を1Mbpsの節約モードに設定

    通信を1Mbpsの節約モードに設定

本稿執筆時点で無償で利用できるZoomの時間は1会議当たり40分だ。次のスクリーンショットはまるまる40分を使い切ったあとの統計データのスクリーンショットだ。40分で550MBを使っていることがわかる。

  • 40分のZoom会議で550MBを消費

    40分のZoom会議で550MBを消費

この状態でUQモバイルの消費状況を確認すると、まったく消費されていないことがわかる。節約モードにしておくと通信容量は減らないためだ。

  • UQモバイルの通信容量は減らない

    UQモバイルの通信容量は減らない

Zoom会議は節約モードで使っている時とそうでない時で、違いを感じることはなかった。試しにZoom会議以外の通信もすべて節約モードにして使ってみているが、特に不便を感じたことはない。もちろん使い方によるのだが、1Mbpsの通信制限モードは普通に使えるという印象だ。

通信制限1Mbpsの格安スマホでZoom生活はできそう

Zoomは既に無償で利用できる時間が40分へ戻っている。Google Meetも2020年9月で無償で利用できるWeb会議は制限ありの状態(1会議1時間まで)に戻るはずだったが、Googleはこれを2021年3月末まで延長すると発表した。したがって、本稿執筆時点では実質的にGoogle Meetは無償で24時間使い続けることができる。24時間も会議をすることはないが、会議が長引いて2、3時間になることはある。Google Meetはしばらくの間そうした用途でも使用できる。

Web会議が一般的になってくると、ここで取り上げたような通信制限時1Mbpsの速度を提供している格安スマホは魅力的な選択肢だ。固定回線を契約する場合と比較して、料金をかなり削減することができる。格安スマホのサービスや料金は頻繁にアップデートされるので、時々に応じて適切なプランを選んでいくことが賢い使い方ということになりそうだ。