最後のセッションは「5G SAについて」と題し、同社の大内宗徳氏が発表を行った。大内氏はMVNO事業の技術開発を担当されており、発表内容も非常に専門的な、IIJmio meetingらしいヘビーなものとなった。

  • 大内氏はMVNO事業部 技術開発部 MVNOサービス開発課に所属。前回(IIJmio meeting #27)では「5G NSAについて」という発表を行なっており、今回はその対となる内容だ

まず、5Gとは何かという基本的な問題から。5Gでは「超高速接続」「IoTなどの多数同時接続」「高信頼性/低遅延」という3つの目標が立てられた。ここで気をつけねばならないのは、この3つを同時に満たす必要はなく、例えばスマートフォンであれば超高速接続、IoTは超多数接続を、業務用途などでは高信頼・低遅延接続の実現がそれぞれできる技術の総称が5Gということだ。

  • LTEなどと比べるとはるかに高い目標が置かれた5Gだが、要素が複雑なだけに、メディアにすら正確な姿が伝わっていない感がある。3つの側面を持つのが5Gの特徴だ

この、5Gの全ての機能を実装したネットワークが「5G SA」(Stand Alone)となる。ただし、導入直後の現状では、4Gの周波数も併用した「5G NSA」(Not Stand Alone」形式となっている。

海外では米国でT-Mobileが8月に5G SA方式の導入を開始しており、国内でも各キャリアが2021年度移行に導入を発表している。今後は4Gが使用中の周波数帯を5Gに転用してエリアを改善したり、5G SAへ移行することで高信頼性・低遅延の接続も可能になる。またIoT向けの低消費電力仕様も策定中だという。

  • 4Gと5Gのネットワーク模式図。略称ばかりでなんのこっちゃ、という感じだが、4Gとは構成要素がこれだけ違い、複雑化していることがわかれば十分だ

さて、この低遅延・高信頼性接続はどのようにして実現するのか。これには「新しい無線方式の導入」(高速化&低遅延化)と、低遅延構成を実現しやすい「新しい5Gシステムの導入」が重要になる。

新しい無線方式(NR:New Radio)については、利用可能な周波数を大幅に拡張し、デシメートル=センチメートル波(FR1:450MHz〜6GHz)に加えて、いわゆるミリ波(FR2:30GHz以上)も導入。さらに1コンポーネントキャリア(CC)あたりの周波数幅を、FR1では4Gの5倍にあたる100MHzに、FR2では400MHzへと拡張し、さらに最大16CAという莫大な帯域幅を使って高速化を図る(実際にはそこまで拡張できないが)。

また、低遅延化については、サブキャリア間隔を広げることで時間単位で送信できるデータ量を増やし、結果として応答にかかる単位時間を早めるという。また、フレーム構成を変更したり、受信応答確認(ACK/NACK)の時間を短縮するといった方向性が検討されているようだ。

さらに新たな5Gシステムでは、認証や制御系にかかる時間を短縮でき、4G LTEと比べてセキュリティも強化されたシステムが導入されることになるようだ。

  • 4G LTEでは初回のアクティベーション時にIMSIの数値が暗号化されずに送信されるため、その機会を掴んで傍受される恐れがあったが、5Gでは完全に暗号化されてやりとりされる(公開暗号鍵を利用)

IIJでは今年初頭から社内に5G検証用のラボ構築に着手し、電波暗箱の中で5G SAを利用したローカル5G向け製品の評価や5GフルMVNOを目指しての動作検証、デモ環境などを行なっているという。冒頭でも述べたが、5Gについては当面業務用、IoT向けを中心としつつ、やがては5GフルMVNOも含めたビジネス化を目指していくとのことで、大いに期待したい。