毎日触れる部分だからこそ、使いやすさと質感を追求

――デザイン上のキーとなるのは、やっぱり斜め45度のパネルにまとめられたスイッチや端子類ですね。

武藤氏:ケースの中で一番手が触れる部分を使いやすく、そしていちばん質感を高めたいという想いがありました。

瀧吉氏:アーケードコントローラーにゲームパッド、ヘッドセットと、ゲーマーは特にこうした端子を多用します。そこから出たコードが邪魔にならないかなど、端子類の位置と向きは使い勝手に与える影響がとても大きいんです。

――質感にも配慮したということは、このコンソール部分が金属パネルであることもわりと早い段階から決まっていたということですか?

瀧吉氏:そうですね。ここにはさまざまなチャレンジが詰まっていて、USBコネクタ内側の周囲にある金属を見えないようにしたり、細かいところにも気を配りました。ヘッドフォンとマイクの端子を色分けしていないのも、毎日使っている人にとっては一見してのわかりやすさよりも、シンプルな美しさのほうが大事だろうという判断です。

当然、デザインの検討段階では、数十通りのデザイン案を比較して話し合いました。重視したのは「すっきりした印象であること」という点ですね。

――筆者が個人的に使用しているフルタワーケースも、同じように端子やスイッチ類が最上部にまとめられている点が選択の決定打となりました。使い勝手を重視した結果のデザインという点にはとても納得がいきます。

瀧吉氏:実はこのコンソールパネル、両サイドが三次元曲面であるため、デザイン通りに部品類を実装できるかどうかなど、課題は多くありました。USB 3.0の端子を4つ並べることをはじめ、スイッチや端子をまとめるためには、ケースの製造メーカーだけでなく、マザーボードメーカーなど、関係各社のご協力があって初めて実現したといっても過言ではありません。

  • 電源スイッチ、リセットスイッチのほか、頻繁に利用するUSB 3.0端子を4つ、ヘッドフォンとマイクの端子、そしてLEDのインジケータ。PCの使用時に重要な意味を持つものを、すべて最上部の斜め45度に傾けた金属パネルに配置した

「省く」ことで生まれる使いやすさと、原点回帰

――BTOパソコンとして考えると、フロントに拡張用のベイが1つしかない点に少し驚きました。

瀧吉氏:確かにBTOパソコンでは、拡張用ベイが数個あるのが伝統ですね。ただ、以前光学ドライブを標準では搭載していないモデルを販売した経験から、「ゲーマーには拡張用のフロントベイは1つあれば問題ない」という確信がありました。私がゲーマーであるためわかります。

もちろん、内部にはストレージを増設するためのシャドウベイは用意してありますから、機能美を追い求めているのであれば、なくてもよかったかもしれません。ですが、あえて付けたのは、BTOからはじまったブランドの意地ですね。汎用性のある5インチベイを1つだけ残してそこに光学ドライブを入れることにしました。

――1つだけある5インチベイは「死守した部分」なんですね。

瀧吉氏:わかりやすさ、使いやすさのために割り切りつつも、弊社が運営するパソコンショップ「ドスパラ」のお客さまの『心意気』を大事にしたい想いもありました。「ドスパラ」は自作のお客さまに支えられてきましたから。

また、今回は、ハードウェア的な仕様でもシンプルさを心がけました。たとえば、SSDとHDDを標準では一緒に載せないといった点です。

最初から両方が搭載されていても、その違いを理解して使い分けるのは難しい。SSDよりも遅いHDDにゲームなどをインストールしてしまい、「パフォーマンスが落ちた」と誤解する原因を作るのであれば、いっそ外してしまったほうがいいと判断しました。何よりお客さまに無駄なお金をお支払いいただかなくて済みますし。HDDを付けるのは、動画や画像をたくさん入れたいといったニーズが生まれてからでも遅くはないわけです。

――HDDも、「省くこと」がサービスの向上につながっているのはおもしろいですね。

瀧吉氏:製品に載せるものは、一つひとつに意味があります。なぜこのパーツを選んだのか、なぜこういう構成なのか、すべて考え抜いて作っています。

武藤氏:ゲームを快適に遊ぶことにフォーカスした結果ですね。

瀧吉氏:そもそも我々が提供してきたようなBTOパソコンが評価を得たのは、余計なソフトウェアが大量にプリインストールされていない、そのシンプルさにあったわけです。ところが、ユーザー層が広がっていくなかで、いろいろなものを付けすぎてしまいました。

今回はハードウェア的に我々が盛りすぎてしまっていたところにも目を向け、取捨選択を行いました。言うなれば、BTOパソコンへの「原点回帰」みたいな面もありますね。

武藤氏:「GALLERIAとはゲーミングPCである」という原点に立ち戻ったと言えるでしょう。

  • フロントベイは5インチが1つだけ。交換するときのことやベイの汎用性を考え、光学ドライブのスリムドライブ採用は見送った。光学ドライブを搭載しないときに穴を塞ぐパネルも用意されている

  • 内部が確認できる窓が設えられたサイドパネル。吸気用のメッシュパネルを彩る青は、サードウェーブのコーポレートカラーだ