中外製薬は7月15日、「デジタル技術によって中外製薬のビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターになる」という「Chugai Digital Vision 2030」に向け、AWSを基盤とする全社データ利活用基盤「Chugai Scientific Infrastructure(CSI)」を構築すると発表した。

同社は、中期経営計画「IBI 21」の中で、治癒/疾患コントロールを目指した革新的新薬の創製を行う「ValueCreation」、患者中心のソリューション提供による成長ドライバーの価値最大化を行う「ValueDelivery」、デジタルを活用した高度な個別化医療の実現とR&Dプロセスの革新を行う「個別化医療の高度化」、「人財の強化と抜本的な構造改革」、「Sustainable基盤強化」の5つを掲げているが、CSIを主に活用するのは、「個別化医療の高度化」の部分だという。

  • 中期経営計画「IBI 21」の5つの戦略

中外製薬 執行役員デジタル・IT 統轄部門長 志済聡子氏

中外製薬 執行役員デジタル・IT 統轄部門長 志済聡子氏は、「個々の患者に適した医薬品を開発していくことに対してデジタル技術を活用していきたい」と語る。

同社はCSIによって、デジタル基盤の強化することにより、「デジタルを活用した革新的な新薬創出」、「バリューチェーン効率化」を行い、「Chugai Digital Vision 2030」の達成につなげていきたい考えだ。

  • 3つの基本戦略

「デジタルを活用した革新的な新薬創出」では、AIを活用した創薬、RWD(リアルワールドデータ)/RWE(リアルワールドエビデンス)、ゲノム診断、デジタルバイオマーカーの活用を、バリューチェーン効率化では、AIと人間が協働し、自動化された生産設備デジタルプラントの構築やDrニーズを予測し提案する営業を行っていくという。

  • 中外製薬のDxの絵姿(仮説)

  • 中外製薬のDXのロードマップ

CSIにより、アカデミアおよび医療機関、パートナー企業等、外部との共同研究プロジェクトをセキュアに推進することができるようになり、同社が共同研究を進める外部のパートナーは、AWS上でゲノミクスやデジタルバイオマーカーなどのリアルワールドデータを保存し、分析しつつ、最新成果を共有することができるという。

同社はAWSの利用で共同研究に必要なITリソースの調達期間を6カ月から2週間に短縮するとともに、導入コストを従来と比べて90%削減したという。

  • CSIの活用事例

AWSを採用した理由について志済氏は、短期間に構築できる点、スケーラビリティ、セキュリティを挙げ、メリットとして、コストと品質のバランスや新しい技術を取り入れられる点を挙げた。

同社は2021年末には、中外社内の研究プロジェクト、アカデミアや病院との共同研究プロジェクトを迅速に進められる研究環境を提供することや、大規模データを、安全かつ高速に解析できる環境を迅速に提供する体制を構築したいという。

  • CSIの2021年末のゴールイメージ

AWS ジャパン 技術統括本部長 執行役員 岡嵜禎氏

AWS ジャパン 技術統括本部長 執行役員 岡嵜禎氏は、CSIに求められる主な要件として、共同研究先からのID・アクセス管理、外部とのセキュアなデータ転送・共有、ゲノムデータ等を取り扱うための高いスケーラビリティーとセキュリティ、 柔軟なデータ解析、作業の共通化・自動化があるが、これらをAWSで解決したとした。

  • CSIに求められる主な要件