米大統領選挙の民主党候補者を選ぶ予備選挙で1000ドル/月のユニバーサルベーシックインカムを提唱して注目を集めたアンドリュー・ヤン氏の新プロジェクト「Data Dividend Project」が米国で発足した。個人データが個人の財産として守られ、個人データの利用に適正な対価が支払われるような制度の確立を目指す。

GoogleやFacebookといったオンラインサービスは、サービスを無料で提供するのと引き換えに収集したユーザーの利用データを広告配信などに利用している。近年のプライバシー保護意識の高まりで個人データを巡る状況は改善しており、カリフォルニア州では今年1月にCalifornia Consumer Privacy Act (CCPA)が施行された。どのような個人情報が収集され、どのように利用されているかを知る権利、収集されたデータの消去を求める権利などを認めている。しかし、実際には個人データの権利が適切に保護されているとは言いがたい。例えば、サービス利用規約だ。長くて難解な文章で書かれており、個人データの権利が骨抜きにされる内容が含まれる可能性があるにも関わらず、18〜75歳の91%、18〜34歳だと97%が読まずに同意している (Deloitte調査)。

Data Dividend Projectによると、北米のFacebookユーザーがサービスを継続的に使用する場合、その個人データのライフタイム価値は2,070.50ドルになる。「これらの権利は無視され、テクノロジー大手によって乱用されている。そして残念なことに個人消費者がそうした企業に対抗する力を持っていない」と指摘している。

そこで個の力を集めて個人データの権利の確立を目指す。WebサイトでData Dividend Projectへの参加を受け付けており、その際にオンラインプラットフォームで使用しているメールアドレスの提供を求めている。オンラインプラットフォームが個人データから上げている収益の規模を知り、法に従って個人データの権利を求めるのに十分な情報を武器にIT大手に対抗していく。Data Dividend Projectへの登録は無料だ。

ヤン氏は民主党の予備選挙においてユニバーサルベーシックインカムのほかにも、オートメーション化やAI導入で変わる社会に備えた職業トレーニングの提供といった斬新な政策で話題を集めた。今年2月にニューハンプシャー州で敗退した後に大統領選から撤退したが、新型コロナウイルス禍による不況の広がりから、その主張が再び関心を集めている。選挙戦においてヤン氏は、ユニバーサルベーシックインカムの財源の1つとして、個人データから収益を上げているIT企業からの徴収を挙げていた。個人データの権利を確立し、その価値を誰もが主張できるようにしようとしているData Dividend Projectは、同氏のユニバーサルベーシックインカム案の一部とも言える。