Googleは6月19日、日本向けの検索サービスで表示する天気予報のモデルを刷新。ウェザーニューズと提携し、最新のニューラル気象モデル「MetNet-3」をベースにカスタム構築した、新しい雨量予測モデルを発表しました。

この新しい雨量予測モデルを組み込んだ天気予報「Google ナウキャスト」では、最大12時間先まで5分ごとの降水量予測が可能に。2024年7月からGoogle検索やAndroid OSを通じ順次提供される予定です。

  • 新たなモデルによる天気予報「Google ナウキャスト」では6時間先まで5分毎の降水量予測をグラフ表示、12時間先までの予測をテキストで表示する

天気予報は日本で特にニーズがある情報の1つ

Google 検索 プロダクトマネージャーのMaya Ekron氏は、気象庁による調査(平成30年「気象情報に関する利活用状況調査」)によると日本では約85%の人が1日1回以上天気を確認していると紹介。高いニーズがある天気予報について同社では、例えばAndroidデバイスでホーム画面の天気情報をタップしたり、Google検索で天気情報を検索すると詳細が表示されますが、その画面も順次新しいデザインに変更してきました。

  • Googleの天気予報画面は見やすさを意識し改善してきた。左2つが従来の画面、右2つが2024年から順次提供してきた新しい画面

  • Google 検索 プロダクトマネージャーのMaya Ekron氏

Google Research シニア プログラムマネージャーのIsalo Montacute氏によると、現在の主流となっている気象予測の手法は、熱力学や物理法則に基づいて気象を表現するモデルを計算機上に構築し、スーパーコンピュータを駆使してシミュレーションを行うもの。この気象予測モデルは多数のパラメーターや、空間グリッド間の複雑な依存関係などを扱う必要があり、シミュレーションには膨大な計算量と時間が必要といいます。

Googleでは短期気象予測のためのニューラル気象モデル「MetNet」というAIモデルを2020年に発表。このMetNetはこれまでの物理学をベースとした手法と異なり、過去の観測データから気象パターンの推移をAIモデルで学習し、物理予測シミュレーションではなく、現在までの観測データから今後の気象パターンをAIで直接予測するモデルです。

このMetNetを使うことで、スーパーコンピュータのような大規模な演算能力がなくても、また必要な時間も1秒ほどという短時間で、高精度な気象予測が行えるようになりました。

  • Google Research シニア プログラムマネージャーのIsalo Montacute氏(左)

  • 従来の物理学をベースとした気象予測と、機械学習をベースとした気象予測の違い

  • 新しいGoogle ナウキャスト画面(予定)。雨や雪の降雨量予測を5分間隔で、むこう6時間先までグラフで視覚化し、最大12時間先までテキストで表示する(クリックで拡大)

AI予測で高速・高精度に。ウェザーニューズの蓄積データ活用

そしてMetNetおよびMetNet-2からアーキテクチャを改善し、よりより高精度な降水予測などが可能となったAIモデルが最新のMetNet-3です。

7月に提供を開始する、MetNet-3をカスタムした新しい雨量予測モデルはウェザーニューズが長年蓄積した降雨データを活用し、2017年から2022年度分までの降雨パターンを学習。これまでより早く、高精度に、最大12時間先まで5分ごとの降雨量予測ができるようになったといいます。

日本ではゲリラ豪雨など予期せぬ激しい雨が降ることもありますが、Google ナウキャストでは観測から予測までの時間(~1秒)を、従来モデルから大幅に減らせるため、突然の雨もタイムリーに表示できることが特徴です。

MetNet-3による雨量予測は、Google ナウキャストの5分ごとの雨量予測に使われ、1日あたり(週間)の天気予報には適用されません。またMetNet-3の能力としては24時間先まで、1キロ平方メートル単位で雨量予測ができますが、実際の運用では3キロ平方メートル単位の解像度で出力。なお、日本では5分間ごとの予測ですが、すでに提供を開始している米国では2分予測、ヨーロッパでは15分ごとの予測が出るとのことです。

  • 2024年6月1日に社長就任したウェザーニューズ 代表取締役社長の石橋知博氏「これからもさまざまなパートナーシップを持って、予報の精度にこだわり、少しでも気象災害をなくす社会の実現を目指したい」とした

  • CSI(Critical Success Index)という予測精度指標を使った従来ナウキャストとの比較。値が大きいほど予測精度がよいことを示す