昨今はミラーレスが話題の中心ですが、デジタル一眼レフも根強い人気を誇ります。一眼レフの定番シリーズとして知名度の高いキヤノン「EOS Kiss」シリーズの最新モデルとして6月下旬に登場するのが、エントリーモデル「EOS Kiss X10i」です。誰でも扱いやすいレンズ交換式カメラの代名詞ともなった“Kiss”ですが、本機もエントリークラスとは思えないほどの高いスペックを誇ります。GWを挟んだ長い自粛を抜け、思い切り旅行や行楽を楽しむ人が増えるであろうこの夏にカメラの新調を考えている人に向け、早速その詳細を見ていくことにしましょう。

  • シャープさが増し、より洗練されたスタイルとなったEOS Kiss X10i。発売は6月下旬の予定

    シャープさが増し、より洗練されたスタイルとなった「EOS Kiss X10i」。ボディカラーはブラックのみとなりますが、ホワイトなどほかのカラーも期待したいところです。発売は6月下旬の予定。予想実売価格は、ボディ単体モデルが税込み115,000円前後、ダブルズームキットが税込み158,000円前後とやや高めですが、いざ販売が始まれば価格は下がるでしょう

上位機種に近づいた操作性

基本的なデザインは、雰囲気こそ先代モデル「EOS Kiss X9i」と大きく変わりませんが、よく見ると細かな部分に違いを見つけられます。特に、ボディのエッジはよりシャープな直線で構成され、これまで以上にスマートな雰囲気になりました。ファミリーユースのみならず、趣味で積極的に使いたい写真愛好家にも好まれそうなボディシェイプです。ボディ単体の大きさは131(幅)×102.6(高さ)×76.2(奥行)mmで、高さがEOS Kiss X9iよりもわずかに高くなっていますが、質量は逆に17gほど軽い515g(バッテリー、メモリーカード含む)に仕上がっています。

操作性については、基本的なレイアウトは先代モデルを踏襲しつつ、Kissシリーズでは初めてAF-ONボタンとサブ電子ダイヤルを追加しています。これは、ワンランク上の「EOS 9000D」と同じです。

  • 正面から見て、シャッターボタンの後ろに電子ダイヤルを備えるのがキヤノン流。ダイヤルの操作感は節度あるもので、エントリーモデルとは思えないつくりです

  • カメラ背面の操作部材では、AF-ONボタンとサブ電子ダイヤルがEOS Kissシリーズでは目新しい装備となります。上位モデルと同様の操作感になったといえます

AF-ONボタンは、カメラを構えた際に右手親指で操作しやすい位置にあり、このボタンを押すとAFが作動します。ミドルクラス以上のEOSには以前から搭載されており、スポーツなど動く被写体を撮影するカメラマンに愛用者の多いボタンです。シャッターボタンの半押しでAFを開始する操作に親しんだユーザーは、AF-ONボタンを使った操作には慣れが必要かもしれませんが、このボタンを活用すれば子どもの運動会や走り回るペットの決定的瞬間もより狙いやすくなるでしょう。

サブ電子ダイヤルも、ミドルクラス以上のEOSに伝統的に搭載されているデバイスで、露出補正や再生画像の送りが直感的にできる便利なダイヤルです。ただし、ダイヤルが小さいためか、操作の際にダイヤル内側の十字ボタンを押してしまうことが多々あったのは気になりました。もっとも、コンパクトなKissのボディでは致し方ないのかもしれません。なお、これまでEOS Kissシリーズに搭載されていた露出補正ボタンは、当然ながら本モデルでは省略されています。

  • 十字ボタンを内側に備えるサブ電子ダイヤルはちょっと小さめ。カードスロットは、上位モデルと同じくボディ側面に備わります。底部のバッテリーボックスと共有するものと比べ、三脚にカメラをセットした際もメモリーカードの交換が容易です

操作感として少し気になったのがAFフレームの選択です。AFフレーム選択ボタンを一度押したあとに十字キーで選ぶのですが、このボタンを押すワンアクションがあるため、素早く選択することが難しいように思われます。上位モデルのように、ボタン操作なしにマルチコントローラーでダイレクトに選択できるとよいのですが、カメラの大きさやコストなどで搭載は見送られたものと考えられます。とはいえ、今後メーカーには前向きに検討してほしいところです。

  • シンプルな撮影モードダイヤル。電源スイッチは、静止画/動画切り替えスイッチを兼ねています。その前にある三連ボタンは、左から測距エリア選択ボタン、ISO感度設定ボタン、ディスプレイボタンとなります

  • 手動でポップアップ、ポップダウンさせる内蔵ストロボ。ガイドナンバーは12(ISO100・m)で、対応する画角は焦点距離17mmとしています

  • USB端子はBタイプを採用。欲をいえば、高速のボディ内充電が可能なUSB Type-Cタイプを希望したいところです

  • カメラ底部に貼り付けられたシリアルナンバーと製造国、製造メーカーを記したシール。多くのメーカーが、このクラスのカメラを海外製としていますが、本モデルは日本製となります

  • このクラスのカメラでバッテリーチャージャーが付属するのは、いまや貴重な存在。キヤノンらしいまじめなつくりといえます