発売から5年が経ったApple Watch。筆者が初めて買ったのはSeries 3でした。今となってはスマートウォッチ一人勝ちな状態になっているApple Watchですが、発売からずっと、放置されている問題があるようなのです。

  • 発売からずっと放置されている、腕時計としてのApple Watchの問題とは……

Apple Watchの魅力として「通知機能」を挙げる人は少なくないでしょう。ですが、この「通知」が腕時計として基本中の基本、と言うか、腕時計の本質的な機能である「時間が分かる」のを邪魔しているのです。

  • Apple Watchに届いた「呼吸」アプリの通知

スクリーンショットをご覧ください。ここではApple Watchに「呼吸」アプリの通知が届いているのですが、時刻が表示されていません。これは「呼吸」アプリだけで生じている現象ではありません。Apple Watchに通知が届く際、時刻は表示されないようになっているのです。

  • 「Twitter」アプリのダイレクトメッセージ通知

  • 「Facebookメッセンジャー」の通知

  • iOS標準搭載「Wallet」アプリからの通知

  • 緊急地震速報メールの通知

ご覧の通り、他のアプリでも通知の際は時刻が表示されていません。緊急地震速報のようなアプリ以外からの通知でも同様です。

  • 通知が表示されている間は文字盤で時間を確認できない

これで一番困るのは「アクティビティ」アプリからの通知でした。「アクティビティ」からは様々なメッセージ形式の通知が届きます。朝起きて、充電が終わったApple Watchを装着すると、まず表示されるのが「昨日は●●でした」という「アクティビティ」の通知です。

  • 朝、Apple Watchを装着すると、その時点でのアクティビティの進捗状況などが報告される

「アクティビティ」からの通知は決まった時間に来ません。「ムーブ」「エクササイズ」「スタンド」の「ゴール達成」通知はそれぞれ設定した目標値を上回ると直ちに送られてきますが、これらはいつその数字に届くか、日によってまちまちです。その他の通知も蓄積されたデータを参照しているとは言え、何時届くのかは分かりません。そして、通知はどういうわけか急いでいて、今、時間が知りたい、という時にかぎって飛んできたりするのです。

  • Apple Watch Series 5では画面が常時表示されるようになったので、時間を確認もほぼ常に行える

Apple Watch Series 5をご利用の方でしたら、画面が常時表示されるようになったので、時間を確認もほぼ常にできるでしょう。ですが、未だSeries 4以前のモデルを使っているユーザーは手首を持ち上げないと時刻が分かりません。持ち上げた時に通知が来た場合、時間が知りたくてそうしたのに、画面には時刻の表示がありません。

また、ふだんから大荷物の筆者の場合、急いでいるときは両手が塞がっていることが多いのです。その場合、Apple Watchの操作は行えません。

AppleのWebサイトでは「Apple Watchで時刻を確認する」と題してサポートページを開設してあります。それによれば、Apple Watchで時刻を知るには、以下の方法があると記されています。

1.手首を上げる
2.時刻を読み上げる
3.時刻を触覚で確認する
4.Siriに頼む

このうち、1ではここまで紹介してきた通り、通知が表示されていると分かりません。2と3は両手が塞がっている場合、使えません。両手が塞がってる時は4しか時間を知る方法がなくなってしまうのです。結果、筆者は「Hey Siri 今何時?」を連発するようになりました。これまでApple Watchの利用シーンで一番多く使った機能と言っても過言ではないくらい。

  • 時刻を読み上げてもらう場合と、時刻を触覚で確認する場合は、いずれもApple Watchの文字盤に2本の指を添えなければならない。従って、通知が届いていて、かつ、両手が塞がっている状態で時間が知りたければ、音声アシスタントのSiriに「Hey Siri 今何時?」と訊ねるしかない

遅刻しそうなのに「アクティビティ」はこんなメッセージを送ってきます。

「すばらしいスタートです」。いえ、スタート失敗して遅刻しそうなんです。Hey Siri 今何時イィィィッ?

「その調子でいきましょう」。いやいや、この調子でいったら間違いなく遅刻です。Hey Siri 今何時イィィィッ?

「がんばってください」。応援ありがとう、でも、完全に他人事ですよね。Hey Siri 今何時イィィィッ?

「まだ時間はありますよ」。もう時間はないのです。Hey Siri 今何時イィィィッ?

と、こんな風に「アクティビティ」は傍若無人ぶりを思う存分発揮して通知を送ってくるのでした。

多すぎる通知ということで言うと、メッセージ系、メール系アプリもかなりのものではないでしょうか。筆者はSNSはやってないですし、メールをやり取りする相手もさほど多くはないので、Apple Watchの通知を「オン」にしてあっても問題ありませんが、しょっちゅうメッセージやメールが送られてくる人は通知だらけになっているのではないでしょうか。

ちなみに、マイナビニュースの編集部には、一日に1,500から、多い日だと2,000通近いメールが送られてくるそうです。一日の勤務時間が8時間で2,000通送信されてくるとして、一通のメールが届くのは、平均で60×60×8÷2,000=14.4。14.4秒に一通送られてくる計算になります。こうなってくると、Apple Watchで時刻が表示されていない時間より、表示されている時間のほうが短そうです。バッテリーも、もしかしたら一日もたないかもしれませんね。

本稿の担当編集さんもApple Watchのユーザーなんだそうですが、さすがにメールの通知は切っているとのことでした。もっとも、お昼休みなど、全然送られてこない時間帯もあるでしょうから、そういった事態には陥らないでしょうし、Apple Watch側も「●件の通知」といった具合にまとめて知らせてくれるようになってはいます。

watchOS 5以降が搭載されたApple Watchでは、通知をアプリ別に整理し、スタックして通知センターに表示するといったカスタマイズも行えます。こういったワザと通知のオン/オフを併用すれば、カオスな状態になるのは避けられそうですが、通知の管理は、その機能の存在自体をご存じないユーザーも多いと思います。Apple WatchもiPhone同様、どんどん進化していって多機能になってはいますが、説明書がないと分からないところも増えてきたように感じますね。

しかしながら、Appleはこの、時間が分からない時間が多すぎる問題を解消しようという気はさらさらないように思われます。それどころか、今年になってから「この腕時計は、時間がわかる」と銘打った、想像の斜め上をいくTVCMを制作しています。

  • Apple WatchのTVCM。「この腕時計は、時間がわかる」と、衝撃的なキャッチコピーがつけられている

約一カ月後に迫ったAppleの開発者会議「WWDC 2020」(今年は新型コロナウィルスの影響により、オンラインでの開催となるそうです)では、watchOSの最新版が紹介されることとなるのでしょうが、多分、この問題は放置されたままで開発が進んでいるのではないでしょうか。