G-SHOCK唯一のダイバーズウオッチであり、そのキャラクター性からも愛される「FROGMAN」(フロッグマン)。その最新作が、シリーズ初のアナログモデル「GWF-A1000」だ。ブラック、ネイビー、レッドのバンドカラーバリエーションで展開されるが、今回はその中から、ブラックのケースとバンドにイエローの指し色が目を引く「GWF-A1000-1AJF」の外観とディテールを写真でお届けしよう。
機能や仕様などの概要は別記事『G-SHOCK FROGMANに新作、今度の「カエル」はなんとアナログモデル!』もご覧いただきたい。価格は税込99,000円で6月発売予定。
そしてFROGMANは、名実ともに本格派ダイバーズウオッチになる。
歴代のFROGMANは、すべてデジタルモデルだった。G-SHOCKの高機能モデル「MASTER OF G」のカテゴリーでは、名称に「~MAN」と付くモデル(RANGEMANなど)はすべてデジタルモデルであり「~MASTER」はアナログモデルである。
さらに「~MAN」のバージョンアップモデルが「~MASTER」である、という暗黙の了解もまた存在する。実際、旧「MUDMAN」は「MUDMASTER」となり、同じく旧「GULFMAN」は「GULFMASTER」へと進化した。
この法則に倣うなら、今回のアナログFROGMANは「FROGMASTER」が正しいのでは? と、そんな疑問を抱いた人は少なくないはず(私もその一人)だ。これについてカシオに聞いてみたところ、実は社内でもその議論はあったとのこと。しかし、結果的には「G-SHOCKの中でもイメージが確立され、浸透しているFROGMANというブランドを大切にして、あえて名称をそのままにした」という。納得。
加えて、今回のアナログFROGMANの立ち位置は、デジタルモデル「GWF-D1000」のバージョンアップモデルではない。なぜなら、(GWF-D1000に搭載されていた)トリプルセンサー Ver.3が、GWF-A1000には搭載されていないからだ。
Bluetoothによるモバイル連携以外のおもな機能としては、ストップウオッチ(1秒・24時間計)とタイマー(セット単位は1分~24時間)、それ以外のダイビング機能として、潜水時間計測(最大2時間、1秒単位で計測)、水面休息時間表示(最大24時間)、ダイビングログ取得(最大30本)が挙げられる。ダイバーズウオッチとして十分な機能ではあるが、水深や方位、温度などは計測できない。
思うに、まずアナログの本格派ダイバーズウオッチとしてのFROGMANをリリースすることこそ、GWF-A1000に課せられた命題だったのではないだろうか。ダイバーズウオッチにアナログモデルを求める人は多い。その声に応えるためにも、FROGMANが競合他社に並ぶ本格派ダイバーズウオッチのブランドとなるためにも、G-SHOCK基準の20気圧防水の上を行く「ISO200m潜水用防水のソーラーアナログモデル」が不可欠だったのだ。
ちなみに、GWF-A1000はBluetoothに対応しながら、モデル名に象徴たる「B」の文字を入れていない。その理由として、カシオは次のように述べている。「Bluetooth対応であることより、アナログであることを強調したかった」と。(GWF-A1000の「A」はアナログの意)
しかも、フルアナログモデルは計測結果の数値的読み取りが難しく、仕組みを追求するとモジュールの開発・製造コストが製品価格に跳ね返る。それより、各種センシング機能は今後も併売されるGWF-D1000に任せ、GWF-A1000は「アナログモデルのFROGMAN」に徹することで価格を抑え、ブランドの世界観の幅を広げる戦略とした――-というのが私の(あくまで個人的な)想像だ。
と、そんな勝手な空想話はさておき、肝心の時計とディテールを見ていこう。
ケースサイズは56.7×53.3×19.7mと、かなりの存在感。それなりに腕が太い人でないと、ケースと手首の間にやや隙間ができそうだ。が、重さは約119gと、デジタルのGWF-D1000より22g軽い。これは、新採用のカーボンモノコックケースの功績だろう。裏ぶた一体式のカーボン強化樹脂製ケースが、堅牢性、防水性能、軽量化に大きく寄与。このケースとSS(ステンレススチール)製のリング・ベゼルで、モジュールを挟み込む構造となっている。
バンドのセンターから本体ケースが若干左にシフトされたアシンメトリーデザインは、FROGMANの伝統を受け継いだもの。潜水作業時に手首の動きをジャマしないようにとの配慮だが、今回はスマートアクセスのりゅうずが付いたため、このデザインがさらに効果的に機能している。
ダイヤルに目を移すと、当然ながら針が目を引く。時針がペンシル、分針がアロー、そして秒針がロリポップの形状だ。針の読み間違えが生命を左右するダイバーズウオッチでは、誤読を防ぐため針ごとに形状や色にを変えることが多く、この組み合わせも定番のひとつ。
ダイブモードでは、時針と分針が重なった状態で1本の太い針として機能する。そのほかダイヤルには、ワールドタイム・タイドポイント時刻の表示や、モード・カレンダー・タイドグラフ表示などのインダイヤル、日付窓が配置されている。風防は擦り傷や乱反射に強いサファイアガラスだ。
バンドは、衝撃や温度、溶剤などに耐性が高く、加水分解を起こしにくい「フッ素エラストマー」製。このバンドも伝統の左右非対称形状と、グローブの上からでも余裕で装着できる長さというFROGMANの仕様を踏襲した。また、バンド裏には縦にモールドが走っており、これが引っ張り強度と装着時のグリップ力を高めている。普段使いにはややコシが強い気もするが、それもまたプロ仕様の証し。
MASTER OF Gの王道を行くラギッドデザインとアナログ針を携え、満を持して登場するGWF-A1000。ワイドなフェイスにボールドな針、サファイアガラスにスーパーイルミネーターといった装備が実現する視認性の高さは、はっきり言って想像以上。
これを見てしまうと、ダイバーズウオッチは確かにアナログに分があるとも感じる。釣りやマリンスポーツ、スキューバダイビングなど、広大な海でさらに活躍の場を広げるであろう新生FROGMAN。本格派ダイバーズウオッチの潮流に新たな針路を指し示す存在となりそうだ。