AMDは2019年12月10日にRadeon向けのドライバソフトの「Radeon Software Adrenalin 2020 Edition」を公開した。ユーザーインタフェースの刷新、ゲームの描画パフォーマンスを向上させる「Radeon Boost」の搭載など、大規模なアップデートが行われているが、ここでは新機能の一つ「整数スケーリング(Intenger Display Scaling)」を紹介したい。

  • Adrenalin 2020 Editionの新機能として、待望の「整数スケーリング(Intenger Display Scaling)」が追加された

これは、NVIDIAが2019年8月20日に公開した新ドライバ「Gamescom Game Ready Driver」から搭載された「整数スケーリング」と同様の機能。低解像度のドット絵を高解像度で表示してもドットをぼやけないようにするものだ。4Kなど高解像度のディスプレイが普及しつつある一方で、古いゲームやフリーゲームでは低解像度のドット絵が多いことから、レトロゲー好きや2Dゲームが好きなゲーマーから熱望されていた。

NVIDIAはGeForce RTXシリーズやGTX 16シリーズとTuning世代のビデオカードしか整数スケーリングが使えないのに対して、「Radeon Software Adrenalin 2020 Edition」で搭載されたAMDのRadeon向け整数スケーリングは対応するGPUが幅広いのが大きな魅力だ。

最新のRadeon RX 5700やRX 5500シリーズはもちろん、RX 500/400シリーズ、R9 300/200シリーズ、R7 300/200シリーズ、HD 8500以上のHD 8000シリーズ、HD 7700以上のHD 7000シリーズのほか、GPU機能を内蔵するCPU、いわゆるAPUのRyzen 3000G/2000Gシリーズ、Athlon 200GEシリーズなどもサポート。対応するGPUはAMDのWebサイトのリリースノートで確認できる。

※2020年2月4日追記
AMDより情報のアップデートがあり、整数スケーリングに対応するGPUは

Radeon R7 360シリーズ、Radeon R7 260シリーズ、Radeon HD 7790、Radeon HD 8770、Radeon R9 390シリーズ、Radeon R9 290シリーズ、Radeon R9 380シリーズ、Radeon R9 285、Radeon RX 400シリーズ、Radeon RX 500シリーズ、Radeon RX Vegaシリーズ、Radeon VII、Radeon RX 5000シリーズ、Radeon Pro Duo、Radeon R9 Furyシリーズ、Radeon R9 NanoコンシューマーdGPU、Ryzen 2000、これ以降のAPU(ハイブリッドおよび取り外し可能なグラフィックス構成を含む)

としている。

Radeon Software Adrenalin 2020 Editionに対応しながら、整数スケーリングに対応しないGPUも一部あるので利用する場合は対応を確認しておこう。また、今後のアップデートで対応GPUは変わる可能性がある。対応状況はAMDのWebサイトのリリースノートなどで確認してほしい。

ただし、整数スケーリングはOSがWindows 10であることが必要だ。Radeon Software Adrenalin 2020 EditionはWindows 7用も用意されているが、こちらでは整数スケーリングを使えない点は覚えておきたい。

このほか、注意しておきたい存在として現在も現役で売られているRadeon R5 230がある。リリースノートにはR5 200シリーズに対応と記載されているが、Radeon R5 230はRadeon HD 6450のリネーム品であり、アーキテクチャが古く、Radeon Software Adrenalin 2020 Editionは使えない。すでに追加ドライバリリースが予定されていないGPUになっているためだ(R5 235X、R5 235も同様の扱い)。

4本のレトロゲームで効果をチェック!

ここからは実際の効果をチェックしていこう。NVIDIAの整数スケーリングを紹介した記事と同じゲームで試している。カメラの位置などが若干異なるため、完全な比較とは言えないが、それぞれどのような効果があるのか参考にはなるだろう。なお、使用したビデオカードはRadeon RX 570、ドライバのバージョンはRadeon Software Adrenalin 2020 Edition 20.1.3だ。

  • 『テラリア』を例に効果を見る。これは整数スケーリングが無効の画面。有効にすると?
  • 『テラリア』を例に効果を見る。上が整数スケーリングが無効、下が有効だ。無効時は若干ぼやけているが、有効にするとドットがハッキリする

その設定方法は簡単だ。AMD Radeon Softwareを起動し、右上の歯車のアイコン(設定)をクリック。上部のメニューから「ディスプレイ」を選び、「GPUスケーリング」を有効にすることで、「整数スケーリング」を有効化できる。なお、スケーリングモードはデフォルトの「アスペクト比を保持する」のままで問題ない。

なお、整数スケーリングはゲーム個別に設定することも可能。特定のゲームだけに有効化したいときに便利だ。

  • AMD Radeon Softwareを起動し、右上にある歯車のアイコンをクリックして設定画面を呼び出す

  • 上部のメニューから「ディスプレイ」を選択。「GPUスケーリング」と「整数スケーリング」を有効にする

  • 上部メニューから「ゲーム」を選択。整数スケーリングを有効にしたいゲームを選び、画面右下にある「整数スケーリング」を有効にすれば、特定のゲームだけ有効化することもできる

実際にいくつかのゲームで効果をチェックしていく。表示には3,840×2,160ドットのディスプレイを使用。ミラーレス一眼カメラでディスプレイを直接撮影した。画面キャプチャーでは違いがわからないためだ。

初期のFPS作品で、3D風の2Dゲーム『Wolfenstein 3D』ではどうだろう。解像度は640×400ドットだ。NVIDIAの整数スケーリングでは比較的ハッキリと効果が分かったが、こちらでは整数スケーリングを無効と有効であまり差があまり感じられない結果に。

  • Wolfenstein 3D。上が整数スケーリングは無効、下が有効時の画面

次は初代の『Tomb Raider』。解像度は640×480ドットだ。無効時は背景も人物の周囲もぼやっとしているが、有効にするとドットがはっきりする

  • 初代Tomb Raider。上が整数スケーリングは無効、下が有効時の画面

  • フリーゲームの例も紹介。2D格闘ツクール2ndで作成された『ヴァンガードプリンセス』。上が整数スケーリングは無効、下が有効時の画面

Wolfenstein 3Dだけは微妙だったが、ほかはしっかりと効果が確認できた。NVIDIAの整数スケーリングに対して、対応するGPUが多く、ゲーム個別に設定も可能というのが大きなメリットと言える。レトロゲー、フリーゲーム好きなら注目しておきたい。