ネットショッピング最大手Amazonで個人が商品を買うのとまったく同じインタフェースで、企業の購買ができる「Amazonビジネス」がじわじわと企業に浸透している。日本にAmazonビジネスが導入されてから2年となり、12月に記念イベント「Amazon Business Exchange Tokyo」が開催された。日本での開催は初めてとなる。

Amazonビジネスは2015年北米で開始。ドイツとイギリスで2016年開始、そして日本は2017年に開始した。その後インド、フランス、スペインなどが立ち上がり、数週間前にカナダでも開始した。日本でも、コカ・コーラ ボトラーズジャパンやDMM.comなど利用企業が増えており、各社の担当者が事例講演を行った。

本イベントの基調講演に立ったAmazonビジネス インターナショナル部門 統括責任者のトッド・ハイメス氏は、「私は20年Amazonにいるが、Amazonビジネスはこれまで経験したどのサービスよりもグローバル展開のペースが速い。それだけお客さまからの期待が大きいことを実感している」と語った。

  • 米Amazon.com Amazonビジネス インターナショナル部門 統括責任者 トッド・ハイメス氏

品ぞろえと安さだけではない。購買プロセスを大幅に短縮

Amazonビジネスについて簡単に紹介しておくと、個人向けのAmazonが取りそろえる数億点におよぶ商品に加えて、企業が日々使う資材、消耗品や、なかには「大学で実験に使うカエル」「歯科用のドリル」といった特定業務向けの品物まで、非常に幅広い品ぞろえを誇るECサービスだ。

また、最初に書いた通り消費者向けのAmazonと同等の慣れ親しんだ画面デザインで、価格比較や注文の追跡なども簡単に行えるなどの特徴を持っている。

  • 個人向けサービスと同様にAmazonビジネスはスマートフォンにも対応する

ビジネス専用の機能としては、1つの企業アカウントで複数の社員が購入できたり、同じ商品を繰り返し購入するたびに値引きされる機能などがある。さらに、後述するように管理者が購買傾向を分析できるダッシュボード機能も備える。

  • 購買分析ダッシュボードの画面。グループ別、カテゴリー別の支出などがグラフで確認できる

ハイメス氏はまず、企業の購買部門が抱える問題点を、企業のリーダーのうち89%は購買プロセスの自動化を求めている一方で、変革を成し遂げたのはわずか29%にとどまっていると指摘。大きなチャレンジがあると語った。また、94%の企業ではすでにマーケットプレイスによる調達を開始しており、ネットからの調達を生かすことでライバル企業に優位に立つことも可能だと述べた。

続いて、Amazonビジネスには3つの方向性があるとハイメス氏は説明した。

1つはルーチン業務の自動化によって、取引先との交渉や購入先の見直しなど、付加価値の高い業務に時間をかけることができること。2つ目は購買のセルフサービス化。それはプライベートでAmazonを使っているのと同じ慣れ親しんだ使い勝手のため、企業に導入する際もトレーニング不要で誰でもすぐに使えることを指す。そして3つ目が、データを統合、可視化して戦略的に活用することだ。

こうした特徴を持つAmazonビジネスが企業にもたらす効果として示されたのが、購買のスピードアップだ。

「従来の調達業務では、サプライヤーを探し、納期とコストを交渉して進めていた。そのため3週間かかることも普通だった。だがAmazonビジネスを使えばそのプロセスを3日で終わらせることができる。その分コスト削減効果もある」とハイメス氏は説明する。

  • 従来3週間かかっていた購買プロセスがAmazonビジネスでは3日に短縮できると説明するトッド・ハイメス氏

「請求書のカード払い」を実現するVISAの新サービス

続いて基調講演のゲストとして、ビザ・ワールドワイド・ジャパン ビジネスソリューション部長の北川陽人氏が登壇し、VISAのB2B戦略とAmazonビジネスとのパートナーシップを紹介した。

  • ビザ・ワールドワイド・ジャパン ビジネスソリューション部長の北川陽人氏

VISAはカードを発行する企業ではなく、カードの発行者と、加盟店管理会社(アクワイアラー)をつなぐ「VISAネット」という巨大な決済ネットワークを提供している。このVISAネットには全世界1万5000以上の金融機関が参加しており、年間11.5兆ドルの決済取引を行っている。これにはB2B取り引きも含まれている。

北川氏は、世界的にB2Bの取引でもカード決済が拡大していると語り、VISAでは、企業の取引で一般的な請求書の支払いにもカードを使うことに取り組んでいると説明した。その場合のカードは一般的なプラスチックカードでなく、12桁のカード番号を暗号化した「バーチャルカード」という仕組みを用意している。

バーチャルカードは取引ごと、部署ごとなどの細かい設定が可能で、銀行口座への振り込みよりも細かい取引情報を得ることができる。さらに、Amazonビジネスとの連携によって購買データと決済データを連携して管理することができるようになると、たとえば大企業で各部門が同じ取引先と同時並行で購買を行っているような場合も、全ての購買データは一括で管理することができるため、サプライヤーに対して価格交渉がしやすくなるなどのメリットがあるという。

AmazonとVISAはグローバルなパートナーシップを結んでおり、米国では2017年からデータ連携サービスを提供している。日本ではデータ連携サービスはこれからだが、2018年5月からカードの登録だけでAmazonビジネスが使えるサービスを提供開始した。

購買改革が企業のデジタル変革を前進させる

基調講演では、Amazonビジネスが企業の購買効率化に貢献することが紹介されたが、企業にもたらすのはそれだけではないとハイメス氏は語る。同氏は企業の購買改革によって、購買部門が企業の戦略部門としてデジタル変革の一端を担うと理由を説明する。

従来、企業の購買効率化は購買部門が一括窓口となって購買単位を大きくしてボリュームディスカウントを図ったり、購買の全体数量を規制するなど購買部門の統制のもとで行われてきた。統制を強くするほど、承認に時間がかかり、多くの工数が必要になった。

だが、Amazonビジネスのようなセルフサービスの購買方式をうまく運用することで、承認も含めた最適な購買プロセス全体をあらかじめ設定しておくことができる。同時に、購買分析ダッシュボードによって、グループ別、カテゴリー別の購買状況や、毎月の支出がグラフ化できるため、どの部署がいつ何を買っているのかのデータも得られるようになる。「これこそが経営判断に寄与する情報だ」とハイメス氏は述べる。

そして、ハイメス氏は最後に「企業のデジタルトランスフォーメーションは、どうなれば“終わり”なんですか、聞かれることがある。私は、調達をはじめとした間接業務のことで煩わされることなく、その企業の顧客に集中できるようになった時だと答えている」と語った。