ファミリー層の必需品といわれた家庭用ビデオカメラがサッパリ売れておらず、ニッチ商品と思われていたアクションカムが動画撮影の用途で選ばれている――。調査会社のBCNが、このような興味深い調査データを発表しました。
ビデオカメラがアクションカムに押されている
家庭用ビデオカメラは、ソニーの「ハンディカム」に代表される、光学30~60倍程度のズームレンズと回転機構付きの液晶パネルを搭載する横型スタイルの製品が長らく売れ筋となっていました。特に、離れた場所にいる子どもを大写しで撮影できる利便性が支持され、毎年3月の卒業・新入学シーズンと、9月の運動会・行楽シーズンに売れ行きが伸びる傾向があります。
しかし、BCNが集計したビデオカメラの販売データによると、2019年は前述の売れ筋時期以外は販売台数が3年前(2016年9月)の50~60%程度にまで落ち込んでおり、市場の縮小が明確になっていることが分かります。
動画性能の向上や大容量メモリーの搭載が進むスマートフォンで満足する人が増えたこともビデオカメラ縮小の大きな要因とみられますが、意外にも「GoPro」に代表されるアクションカムに動画撮影の需要を奪われている点がデータからうかがえます(BCNの調査では、ビデオカメラのジャンルにアクションカムも含めている)。
アクションカムは、海外などに出かける機会が増える4~5月、マリンスポーツが盛んになる7~8月、ウィンタースポーツが盛んになる12月など、特定の時期に需要が高まる傾向があります。それらの時期は、ビデオカメラとアクションカムの販売比率が5:4前後にまで接近するほど。しかし、それ以外の時期も販売比率は2:1前後で推移しており、ふだん使いの用途で購入している人も多いことがうかがえます。もはや、家庭用ビデオカメラと肩を並べる存在になったといえます。
多少の衝撃も気にせず撮れることでブレイクしたアクションカムは、手ぶれ補正の進化や背面液晶の標準搭載、本体のみで水中撮影できるようになるなど、年々進化を続けています。GoProの新製品「GoPro Max」のように、360度カメラとしても使えるアクションカムも登場しました。ハイライトシーンをまとめたショートムービーを自動で生成するなど、SNS向きの機能を強化している点も、若年層に支持されたとみられます。
アクションカムと比べると、家庭用ビデオカメラはここ数年目立った進化がないのが事実。このままでは、ビデオカメラの代名詞がアクションカムに奪われるのも時間の問題かもしれません。
今年2月に開かれたカメラ展示会「CP+2019」では、キヤノンが100mmと400mmの超望遠を光学的に切り替えて撮影できるビデオカメラ「Multifunctional Telephoto Camera」の試作品を展示し、話題を呼びました。400mmの超望遠撮影ができるとは思えないコンパクトでかわいらしいデザイン、撮影をせず単眼鏡としても使える利便性、スマホと接続して使える拡張性など、現在のビデオカメラにはない見どころがいろいろありました。いまのところ市販の予定はないとしていますが、このような新機軸のビデオカメラの登場で市場を再び盛り上げてほしいと感じます。