デルは9月18日、法人向けパソコンの新製品として、PC本体をモニタスタンドに垂直に内蔵したデスクトップPC「Optiplex 7070 Ultra」と、ワークステーションに迫る性能を持つミドルタワーPC「Optiplex 7071 Tower」の2製品を発表した。ともにOptiplexシリーズの世代交代の契機となるべく、本体デザインそのものを大幅に見直した新製品だ。9月24日より発売する。
一体型とも異なる"ゼロフットプリント"の「Optiplex 7070 Ultra」
Optiplex 7070 Ultraは、PC本体を小さく薄型のモジュール型デザインとした法人向けパソコン。狭い机でも使いやすいよう、PC本体の設置スペースを「ゼロフットプリント」とすることを目標に開発された。価格は発売日に発表予定だが、米国市場での参考価格で749ドル。
専用モニタスタンドとのセット利用を前提としており、モニタスタンドの"内部"にPC本体を設置することができる。電源と映像出入力にUSB PDを採用することで、外部ケーブルが1本のみというシンプルな配線も実現している。
同じく省スペースが特徴の一体型パソコン(AIO)との最大の違いは、モニタとPC本体を個別にアップグレード可能なことだ。PC本体の買い替えサイクルが3~5年といわれることに対し、モニタは8~10年と長いとされるが、AIOでは物理的に別々に買い替えることができないという課題があった。
主なスペックは、CPUが第8世代のIntel Core i7(vPro)、メモリが最大64GB(32GB×2)、ストレージが1TBのMVMe SSDで、小型かつ特殊形状だがある程度の拡張性も確保しており、2台目のSSD増設や、最大2TBの2.5インチHDDへの換装にも対応。本体側面にはオーディオ端子や、USB端子、Ethernet端子なども備えている。
VR念頭の性能と新たなシグニチャを携えた「Optiplex 7071 Tower」
Optiplex 7071 Towerは、ワークステーションを「VR開発用」と定義した場合に、「VR利用」が可能とするハイスペックを持たせた18Lサイズの法人向けミドルタワーパソコン。価格は発売日に発表予定。
処理能力の高さに見合う冷却性能を獲得するため外気導入デザインを再設計し、フロントパネルには、通気孔を十分に設けた上でも見た目を損なわない、3次元フローティングパターンによるフロントパネルを採用した。このフロントパネルは、Optiplexの新たな共通シグニチャデザインともしており、今後、積極的に採用していく見込みだという。
主なスペックについて、まずはCPUとGPUだが、これまでの法人向けデスクトップでは過剰にも見えるIntel Core i9-9900K、NVIDIA GeForce RTX 2080まで搭載することができる。メモリは最大128GB(32GB×4)、ストレージは3.5~2.5インチやMVMe、HDDからSSDまで選択肢豊富。フロント最上部の5インチスロットをフレキシブルに利用して、光学ドライブやHDDカートリッジなどを組み合わせることができる。
Optiplex 7070 Ultraの着想は「忍者」から?
特にOptiplex 7070 Ultraはデザインが新機軸と言うにふさわしいものになっている。同社のPCデザインを担当するDell Inc. Experience Design Group Directorのマック田中氏は、「ゼロフットプリントというコンセプトを決めた後、たぶん500種類くらいのまっさらなイメージからつくりなおした」と振り返る。
決め手は突然で、Optiplex 7070 Ultraのデザインを直接手掛けたスタッフのアメリカ人デザイナーからある日、「マック、日本にはNinjaがいるよね? Ninjaは自分の姿を隠す術が得意だよね?」というイメージが出た。それらから"隠す"という発想になり、『星の王子様』の「いちばん大切なものは目に見えない」という名言のイメージに繋がり、「見えない大切なものを創ろう」という方針に決まったという。かなり観念的で思い及ばない経緯だが、実際にOptiplex 7070 Ultraはまるで「忍者の隠れ身の術」のように、本体がどこかに隠れてしまうPCへと仕上がった。
市場ではディスプレイ背面に設置できる小型PCが競合になると予想される。Optiplex 7070 Ultraはアップグレード面でAIOより優れるとアピールしているだけに、後継製品が出続けないと価値が薄れてしまう。田中氏は、Optiplex 7070 Ultraがひと世代で終わるものではなく、今後も継続開発が計画された製品であることも説明している。