東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2019年8月のIT・ソフトウェア業界のM&A件数は、前年同期(18年8月)より1件少ない14件で、2008年以降の12年間では前年同期(15件)に次ぎ2番目に多かったという。18年1月以降の月別では5番目の高水準だった。
エンジニア不足や技術革新の進行を背景に他社と連携する動きが強まっており、後継者不足や日銀による金融緩和もIT業界のM&Aを後押ししているという。
一方、金額は約12億円で、2年連続で減少し、前年同期の半分程度にまで落ち込んだ。2008年以降の12年間では8番目の数字で、10億円を超える案件がなかったため、金額が伸びなかったという。
金額トップはカイカが子会社を譲渡した6億5000万円
8月のM&Aで金額が最も多かったのは、カイカ(東京都目黒区)がシステム開発子会社のネクス・ソリューションズ(東京都港区)を実業之日本社(大阪府岸和田市)に6億5000万円で譲渡する案件。
カイカはグループ戦略として暗号資産(仮想通貨)の基幹技術であるブロックチェーン(分散型台帳)や、仮想通貨交換所関連のシステム開発に経営資源を集中する方針を打ち出しており、これに沿った措置。実業之日本社から内製が可能となるシステム開発会社を譲り受けたいとの要望があったという。
2番目はアイモバイル(東京都渋谷区)が、スマートフォン向けアプリの企画、開発などを手がけるオーテ(東京都北区)の全株式を5億円で取得し子会社化する案件。
オーテは「パズルde懸賞」シリーズを中心に「ナンプレde懸賞」「クロスワードde懸賞」などのスマホ用ゲームアプリを提供している。アイモバイルは自社のインターネット広告事業のノウハウを生かし、オーテの保有するアプリ内での広告収入の収益性向上などにつなげる。
3番目はリアルワールド(東京都渋谷区)が、子会社でインターネットBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング=業務受託)事業を営むノーザンライツ(東京都渋谷区)の全保有株式(持株比率66.7%)をトゥルージオ(東京都港区)に1億2000万円で譲渡する案件。
リアルワールドは同業のトゥルージオにノーザンライツの経営を委ねることが、自社グループの総合的な企業価値の向上につながると判断した。今後はクラウドソーシングなどのサービスに付加価値をつける事業に注力し、経営資源の選択と集中を推進する。
このほかに金額を公表した案件として、ブロッコリー(東京都練馬区)が、家庭用ゲームソフトやスマートフォン向けゲームコンテンツの企画、制作などを手がけるLANTERN ROOMS (ランタンルームス、東京都北区)を約1800万円で子会社化する案件と、ブイキューブ(東京都港区)が、ビジュアルコミュニケーションサービスを提供するインドネシア子会社のPT.V-CUBE INDONESIA(ジャカルタ)を、現地投資会社のPT.ALTAVINDO INDONESIA(ジャカルタ)に1ドル(約106円)で譲渡する案件があった。