ネットアップは9月4日、都内でクラウドデータサービスソリューションに関する記者説明会を開催した。
同社では、2014年からオンプレミス環境、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)、Alibaba Cloudおよび500以上のクラウドプロバイダにまたがるエンドポイント間で一貫した機能を提供するアーキテクチャと一連のデータサービスを「データファブリック」として、事業を展開している。
2019年からは「データファブリック 2.0」と位置づけ、ハイブリッドマルチクラウド環境において、どこにでもデータ環境のデプロイ・運用を統一的に可能にするとともに、アプリケーションのリリースサイクルを迅速化させることに貢献することを目標としている。
ネットアップ 常務執行役員CTOの近藤正孝氏は「1.0のメインユーザー層はITインフラ管理者だったが、2.0ではアプリケーション開発者やクラウドアーキテクチャに携わるユーザーも含めている。背景としてはITの進化が挙げられる。オンプレミスかクラウドかということだけでなく、新たなアプリケーションの開発・運用手法がクラウドから生まれており、ITの新しいデザインパターンとなっている」と話す。
ITの新しいデザインパターンとは、マイクロサービスやDevOps、CI/CD、コンテナ、Kubetenetes、ハイブリッドマルチクラウドなどを指す。現在、企業におけるアプリケーションの組織体制は開発チームと運用チームがそれぞれ担当しているが、最近では“製品開発チームとSREチーム(Site Reliabolity Engineer)によるDevOps”という考え方が登場しているという。
従来の組織体制は技術レイヤごとに水平分割されている一方、新たな体制はアプリ(製品)単位でチーム分けされている。近藤氏は「製品開発チームとSREチームが主流になればソフトウェアエンジニアが重要であることは明白だ。そのため、われわれが従来ターゲットとしていたIT管理者だけでは不十分であることから、アプリケーション開発者にもバリューを感じてもらえるサービスを拡充しなければならない」と強調する。
このような状況を踏まえ、アジャイル開発するためのアプリケーションのインフラとして昨今デファクトスタンダードになりつつあるコンテナ、Kubernetesに対応するため同社は「NetApp Kubernetes Service」を提供している。
同サービスは、Kubernetesの自動導入エンジン、アプリケーションのマーケットハイブリッドマルチクラウド環境において同じステップでKubernetesクラスタをデプロイできる点が特徴だ。
6月にはこれまでの主要パブリッククラウドに加え、NetApp HCIへの導入に対応した「NetApp Kubernetes Service on NetApp HCI」、フルマネージドのクラウドストレージソリューション「Cloud Volumes on NetApp HCI」を発表し、オンプレミスでの効率的なインフラサービスの提供をシンプルに実現するという。
また、同月に発表した「Azure NetApp Files(開発時名称:Cloud Volumes for Azure)」「Cloud Volumes Service for Google Cloud」「Cloud Volumes ONTAP for Google Cloud」「NetApp Fabric Orchestrator」「NetApp Cloud Insights」も紹介された。
Azure NetApp FilesとCloud Volumes Service for Google Cloud、Cloud Volumes ONTAP for Google Cloudは永続的ストレージとして使用することで拡張を可能とし、マルチクラウド環境のどこからでも利用できる。
NetApp Fabric Orchestratorは、データ資産がどこに保存されていても検出、管理、制御ガバナンスを可能にする一元的なデータコントロールプレーンを導入しており、プロセスとポリシーをデータ資産全体に容易に拡張が可能なほか、定義済みのポリシーに基づいて新しいデータセットにアクセス制御を自動適用するという。
NetApp Cloud Insightsは、相関付けられた包括的なコンピューティング、ネットワーク、ストレージのスタックとアプリケーションの監視、アラームの発行、分析を可能としている。今回、NetApp HCIとKubenetesの監視、配置の最適化、リアルタイムのダッシュボードなどを実装し、NetApp HCIとNetApp AFFシステムを含むネットアップシステム向けのBasicエディションが「Freemium」サービスとして無料で利用できる。
ネットアップ ソリューション アーキテクト部 部長の神原豊彦氏は「ハイブリッドマルチクラウド環境において、個々の開発者やIT運用管理者の要件に応じてデータを自由に移動できるプラットフォーム提供していきたいと考えている。今回の新サービス群は、それらを実現するためのものとなる」と述べていた。