タムロンの「SP」(Superior Performance)シリーズといえば、描写性能に優れた高性能交換レンズとして知られています。SPシリーズ40周年となる2019年に登場したのが、タムロンでは珍しくF1.4の明るさを持つ大口径レンズ「SP 35mm F/1.4 Di USD」です。「タムロンが持つ技術をすべてつぎ込んだ」という自信作の実力をチェックしていきましょう。
タムロンにしては珍しい重量級レンズ
タムロンの35mmレンズといえば、2015年に発売した「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」があります。今回登場したSP 35mm F/1.4 Di USDは、それよりも絞りが半段明るいだけでなく、最新かつ最高の技術を用いて作ったとのことです。
タムロンといえば、他社に比べると同じスペックでも小型軽量なレンズに仕上げることが多いイメージですが、このレンズはかなり大柄。かつ、いかにもガラスが詰まっているといった重量感があります。単純にシャープな描写のレンズならもっとコンパクトに作れるはずですが、総合的な描写を高度な次元でまとめたからこそ、この大きさになったのでしょう。
切れ味と立体感のある描写が圧巻
レンズの設計や製造の技術は、ここ数年驚くほどの速さで進化しています。よく写ることは事前に想像できましたが、実際に撮影してみると、上品でとても“色気”のある写りだと感じました。色再現はナチュラルでクリア。コントラストは高くなく、トーンもふわっと柔らかめ。それでいながら、絞り開放から鋭いキレ味を発揮しているのが分かります。
ボケの描写も実にお見事。ピントの合った部分からアウトフォーカスにかけて、なだらかにボケているのが分かります。背後のボケを優先すると被写体より前のボケが乱れるなど、前後のボケ味を両立させるのは難しいのですが、このレンズは見事なバランスを実現していると感じます。被写体が自然に浮かび上がるような、立体感のある描写が印象的です。
35mmはスナップ撮影に適していますが、目の前の光景をやや広めに切り取る画角で、人物や自然風景などオールマイティーに使える焦点距離です。ズームに慣れ親しんだ人にも単焦点の魅力を知ってもらえる一本ではないでしょうか。
著者プロフィール
鹿野貴司
1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。日本大学芸術学部写真学科非常勤講師、埼玉県立芸術総合高等学校非常勤講師。