TISは3月27日、同社が独自検証したソフトウェアスタックである「Lerna(レルナ)」を活用し、経済産業省の平成29年度補正予算「IoTを活用した新ビジネス創出推進事業(IoT活用おもてなし実証事業)」における「おもてなしプラットフォーム」で提供するQR決済サービスの実証実験に参画したと発表した。なお、IoT活用おもてなし実証事業は、2018年4月から2019年3月末までの予定で実施している。
おもてなしプラットフォームは、IoTによりサービス事業者同士が情報を共有・活用し質の高いサービスを提供できる仕組みとして、経産省がデロイトトーマツコンサルティングに委託して構築し、2020年までの社会実装を目指している。
具体的には、訪日外国人旅行者が買い物や飲食、宿泊、レジャーなどの各種サービスを受ける際に求められる情報などについて本人の同意のもとに、これらの情報を同プラットフォームに共有・連携することで、同プラットフォームを介して多様な事業者や地域が情報を活用した高度で先進的なサービスを提供できる仕組みを実証している。
今回の実証実験では、訪日外国人対応の課題の1つであるキャッシュレス決済環境をQR決済を活用して、決済利用データの還元もできる仕組みとして構築し、その実現性と実効性の検証を実施した。同社は、自社でこれまでに蓄積してきた高可用システムの構築ノウハウと開発技術を基に検証を重ねたLernaを使用し、決済サービスを構築した。
具体的には、Lernaを使用して構築した決済サービスと、京都エリアで訪日外国人向けサービス実証を実施する京なかの、京都観光のおすすめスポットやイベント情報を紹介するサイト「KoI service」と連携し、提携先店舗での支払いをQRコード決済で実施可能とする仕組みを提供した。
実証実験の期間は2019年1月~3月まで、対象者は京都エリアに訪れる訪日外国人観光客。京都エリアに訪れた訪日外国人観光客を対象に、日本ならではの土産の購入や伝統的な文化体験を行うサービスの支払いをQR決済によって行い、利用状況の検証を行う。
Lernaは複数のOSS(オープンソースソフトウェア)を組み合わせ、高い可用性をオープンシステム上で実現するソフトウェアスタック。
決済領域などミッションクリティカルなサービスの高度な非機能要件に対し、安価かつスピーディーに開発するため、並行・分散アプリケーションを構築するためのツールキット「Akka」や分散データベース管理システム「Apache Cassandra」などのOSSを利用し、オープンな環境でユーザーの要求に迅速にレスポンスするリアクティブシステムを実現しているという。
特徴としては「サーバダウンを前提にした障害に強い高可用構成」「すべてのレイヤでのスケーラブルで高スループットの実現」「レガシーインフラによるインフラコスト高騰およびエンジニア不足からの解放」「サーバダウンを前提にした障害に強い高可用構成」の4点を挙げる。
高可用構成に関しては、高い可用性を必要とする機能の全レイヤを冗長化し、ステートフルなレイヤは高速フェイルオーバー可能なクラスタを構成することで、検証環境におけるフェイルオーバーの実測値を元にした論理稼働率99.999%を達成したという。
スループットについては、CQRS(コマンドクエリ責務分離)のアーキテクチャ適用により書込処理と読込処理を分離したという。決済などの書込処理はCassandraへのイベント永続化(イベントソーシング)のみを行い、RDBMSへの同期書込により発生するレイテンシーを排除し、検証環境における実測値1000TPSを達成したとしている。
インフラコスト高騰およびエンジニア不足の解放に関しては、オープンな環境に構築することでレガシー技術から解放し、エンジニア不足の問題を解消すると共にインフラコストを削減したほか、特定クラウドのマネージドサービスを使用しないためベンダー非依存(検証済環境はAWS(EC2)およびびNutanix)だという。