Appleが新しいストリーミングサービスをスタートさせるうえで、強みとなる部分はどこにあるのだろうか? まず1つは、13億を数えるアクティブユーザーベースと、3億3000万件を超えたサブスクリプションユーザーだ。サブスクリプションユーザーには、Apple Music、iCloudストレージ、iTunes Match、その他サードパーティアプリの継続課金が含まれている。
Appleは個別の製品の販売台数を発表しなくなったが、その代わりにサービス部門成長の裏付けとなるこれらの数字を発表するようになった。現在のサブスクリプションユーザーはアクティブユーザーの25%に過ぎず、まだまだ伸ばしていく余地がある、と見てよいだろう。
現在、Appleは音楽サービスを提供しているが、映像サービスとともに雑誌サービスもスタートするとみられており、2018年には雑誌のまとめ読みサービスのTextureを買収済みだ。それぞれ10ドル程度の金額設定や、ファミリーメンバー、バンドル割引(まとめ割引)など、多様なオプションを設定できるようになりそうだ。もっとも、バンドル割引は利にかなっているように思う。人の可処分時間は限られているからだ。
もっとも意欲的な価格設定は、現在のApple Musicの金額を据え置きつつ、映像や雑誌のサービスを合流させてしまうというものだ。ユーザー1人あたりからの収益は減少するが、現状25%しかいないサブスクリプションユーザーが増加することを優先する、という戦略も考えられる。もちろん、コンテンツ側への配分のロジックについては、コンテンツサイドとの調整が必須ではあるが。
2つ目は、Appleが複数デバイスを前提に勝負ができる点だ。Appleの主力デバイスはスマートフォンであるiPhoneだが、大画面でメディア消費にもってこいのiPadも支配的な地位を築いている。加えて、セットトップボックスとして有力なApple TV、デスクトップとモバイルのラインアップを取りそろえるMacも存在している。
Appleが、これらのデバイスを横断しながら映像を視聴する「体験の設定」をていねいかつ完璧なものに仕上げてくることは、容易に予想できる。特に、好調さを取り戻したiPadを基軸にすることで、iPhone偏重から緩やかに脱却する動機付けを作ることもできよう。
筆者は、今回のスペシャルイベントを現地で取材する予定だ。速報と考察を含めて、本連載でお届けしたい。