2018年も、さまざまな魅力を持つデジタル機器や白物家電が登場しました。低価格でも充実した機能を持つコストパフォーマンスの高い製品が人気を集める一方で、高価ながらオンリーワンの特徴を持つ製品も話題になりました。そこで、「値が張るので簡単には手を出せないけれど、奮発してでも買いたい“ちょい高アイテム”」を、デジタル&白物家電業界に造詣の深いライター諸氏にご紹介いただくことにしましょう。
今回は、デジタルカメラやドローンでの撮影に精通している写真家の大浦タケシさん。大浦さんが太鼓判を押すワンランク上のアイテムは、なんと20万円超の液晶ディスプレイです! 2万円以下で買える激安モデルの10倍もの大枚をはたいてでも買う価値はどこにあるのでしょうか?
ディスプレイにつきものの色や明るさの狂いを校正
2018年も数々のカメラが登場し、大きな話題となりました。特に、ニコンとキヤノンから待望のフルサイズミラーレスが相次いで発売されたことは、大きなトピックといえます。もちろん、それ以外のカメラや交換レンズも意欲作ばかりで、写真愛好家にとっては思い出深い1年になったのではないでしょうか?
では、そのような新しいカメラで撮影すれば、思ったような仕上がりが得られるでしょうか? 結論から言いますと、パソコンをはじめとする周辺機器もないがしろにはできません。なかでも、撮影した画像を表示するディスプレイはとても重要な存在で、画像の濃度や色調などの確認、レタッチ作業などを考えると、本来の色や明るさを正確に、そして忠実に再現できることが求められます。
そこでぜひ用意したいのが「カラーマネージメントディスプレイ」と呼ばれるジャンルの液晶ディスプレイです。なかでも私が推したいのは、EIZOの「ColorEdge CG279X」(以下CG279X)。パソコン用ディスプレイの老舗メーカーとして知られるEIZOが2018年11月に発売した新製品で、直販サイト「EIZOダイレクト」での直販価格は214,800円(税別)です。
27型クラスの液晶ディスプレイは、LGエレクトロニクス・ジャパンの「27MP38VQ-B」のように、税込みでも2万円未満の予算で購入できるものも少なくありません。27MP38VQ-Bは低価格とはいえ、ほぼ真横からでも鮮やかな表示で見えるフルHD解像度のIPSパネルや、目の疲れを抑えるブルーライト低減モードを搭載していたりと、機能面ではかなり充実しています。
27MP38VQ-Bの10倍以上も高価なCG279Xですが、これだけ高くても写真を極めたいならばあえて選ぶ価値があるのです。
その理由の1つが、「ディスプレイキャリブレーション」に標準で対応していること。ほぼすべてのディスプレイには個体差があり、表示する色や明るさが微妙に異なります。さらに、ディスプレイは使用しているうちに色と明るさが少しずつ変わっていく特性もあります。そのような色と明るさの誤りを検出し、正確な色や明るさに校正することをディスプレイキャリブレーションといい、写真を正確な色でプリントする際には欠かせない要素となります。
ディスプレイキャリブレーションは「ハードウエアキャリブレーション」と「ソフトウエアキャリブレーション」があり、CG279Xを含むEIZOのカラーマネージメントディスプレイは前者を採用しています。パソコンからの出力を調整して色や明るさを変えるソフトウエアキャリブレーションに比べ、ハードウエアキャリブレーションはディスプレイ自体の表示設定を調整するため、より精度の高いキャリブレーションが可能になるわけです。
私がCG279Xを推す理由に、ユーザービリティの高さもあります。CG279Xはディスプレイの上部ベゼル内に小さなセンサーを内蔵しており、キャリブレーションを実行すると画面内に自動でせり出してくる仕組みになっています。キャリブレーションの日時指定も可能で、手間をかけることなく定期的に実行できるのもポイント。キャリブレーションの最中でも画面全体が暗くならず、それまでの作業を中断する必要がないのも既存モデルにはない魅力といえます。
出荷前に1台ずつ調整を実施、充実の保証制度も
パネル自体の表示品質の高さも、CG279Xを選ぶ理由の1つといえます。安い液晶ディスプレイは輝度や色味が均一でなく、多少のムラが散見される場合があります。しかし、EIZOは独自の補正回路によりムラのない均一な表示としているほか、ColorEdgeシリーズはRGB各色の階調を一台一台調整してから出荷しているため、その色再現性の精度の高さは言うまでもありません。
充実した保証体制も魅力の1つ。メーカー保証は5年間と長いうえ、画面上に輝点が1つでもあった場合、購入から6カ月以内であれば液晶パネルを無償交換するサービスが用意されています。これらの保証体制は、他社のカラーマネージメントディスプレイにはないサービスとして評価できます。
高画質で撮影できるカメラや交換レンズを使っているのに、撮影した画像を確認するためのディスプレイを重視しないのはもったいないといえます。交換レンズやストロボなど、撮影に直接関係するアクセサリーをそろえるのも大切ですが、ぜひディスプレイ環境も整えてみてください。CG279Xは、液晶ディスプレイとしてはきわめて高価な製品ですが、使ってみると高価なりの理由があることが理解できるはずです。
ColorEdge CG279Xを頑張ってでも買うべき人 |
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撮影した写真を忠実な明るさや色合いで確認したい人 |
レタッチした写真を画面で見たままにプリントアウトしたい人 |
ディスプレイキャリブレーションが面倒だと感じている人 |
格安の液晶ディスプレイでも十分な人 |
撮影した写真はプリントせず、画面で楽しめればよいと考えている人 |
著者プロフィール
大浦タケシ
宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。2018年は、昨年に続き写真展(個展)が開催できず猛省。来年は少なくとも写真を撮りため、写真展の足がかりをつくりたいと考えています。日本写真家協会(JPS)会員。