悪意を持った攻撃者にとって、仮想通貨は便利な通貨です。最大の利点は、匿名性が高いこと。仮想通貨での取引の多くは、インターネット上で行われます。取引の内容はブロックチェーンに記録されますが、取引情報は暗号化されています(何時、どこで、どういう取引が行われたといったことはわかります)。

攻撃者が犯罪で得た金銭は、自由に使えるようにするため、マネーロンダリング(資金洗浄)が行われます。普通ならば、銀行などの金融機関で換金しますが、近年は司法当局などの指導により、非常に厳しくなっています。仮想通貨には、その必要がないため、攻撃者は入手した仮想通貨をそのまま利益とすることができます。

今でも、猛威を振るうランサムウェア(PCやスマートフォンをなんらかの方法で使用不能状態にし、元に戻すために金銭を要求するマルウェアの一種)でも、身代金として仮想通貨が指定されることが多いのもそれが理由です。

  • 身代金をビットコインで請求する例

攻撃者にとって魅力的なBitCoin

下の図は、日本におけるBitCoinの登場以来の取引レートを表示したグラフです。

  • BitCoinの取引レート(2018年1月時点)

BitCoinの最初の取引は、米国でピザ2枚を1万ビットコインで購入した事例といわれています。その後、取引所などの整備により、市場が形成されていきました。図8でみれば、日本では、2013年で1ビットコインが4,500円から14,000円前後で取引されていました。それが、2017年12月には、230万円の最高値を付けています。2018年に入り下落傾向となっていますが、最高値では500倍もの高騰となりました。2018年9月現在では、1BitCoin≒約80万円となっています。

一般的な金融取引が数%程度の利回りですので、投資対象としても非常に魅力のある存在となっています(下落のリスクも当然、大きいですが)。このあたりも、攻撃者に好まれる傾向にあるようです。不正なマイニングにより、入手した仮想通貨が値上がりすれば、そのまま利益の拡大となります。短期間での価格変動が大きいため、利ざやを稼ぎやすい傾向もあります。

このような理由から、さまざまな目的のために、仮想通貨が攻撃者の攻撃対象として狙われているのです。