3種類の仮想環境を紹介してきたが、では実際にどれを選べばいいのだろうか。おそらく読者諸氏は無料で入手できる「VirtualBox」に興味津々だろうと思われる。筆者も記事執筆にあたって久々に触ってみて「あれ、こんなに使えるようになったんだ」と思うほど、以前よりも使いやすさや性能はだいぶ向上したと感じられた。

ただし、それはあくまで「前と比べたら」の話であって、有料の仮想環境と比べると、まだまだ大きな差がある、というのが正直なところだ。例えばWindowsをインストールするにしても、仮想PCを作成後、ディスクイメージを初期化してフォーマットするところから始めなければならない。自作PCなどで初期化インストールの経験があるユーザーでなければ戸惑ってしまうところだろう。

また、前述したように性能面でも大きな差がある。具体的に差を比べるために、Windows PCに備わっている性能指標「Windowsエクスペリエンスインデックス」の数値を3つの仮想環境で比較してみたところ、ほぼ3倍近い速度差があった。7年落ちの筆者の環境(Mac mini 2011、Core i5−2.5GHz+メモリ8GB)でも、Webを見る程度であればまあまあ使えるレベルではあるが、毎日使おうと思うと結構キツいものがある(体感ではCeleronを搭載した安価なPCのような重さだ)。すべてのユーザーにおススメするには、ちょっと力不足だろう。

  • 左からParallels、Fusion、VirtualBoxでWindowsエクスペリエンスインデックスを実行したところ。上の下線部が実行にかかった時間で、ParallelsやFusionと比べると2.8倍前後の時間がかかっている。またCPUとグラフィックのスコアでもそれぞれ1.3〜3倍近い差がついている。ここまで違うと体感でもかなりの差がある

やはり、有料アプリは、サポートや性能面で相応の見返りがある。ということで、性能も含めたトータルの使い勝手を考慮すると、ParallelsとVMware Fusionの2択だ。機能・性能面では概ね同等と言っていい両者なので、その他の部分で比較することになるが、バージョンアップを毎年続けている安心感、サポートするハードウェアの多さ(といっても差はMac Proだけだが)などを考えると、筆者としてはParallelsに軍配を上げたい。本気でこれから仮想環境を使ってMac上でWindowsを使い倒したい、というのであれば、Parallels Desktopがおススメだ。

ということで、次回はParallels DesktopのインストールとWindows 10のインストール手順についてご紹介したい。どちらも評価版があるので、正規ライセンスを持っていない、という人でも試すだけなら可能だ。