日立製作所は6月28日、同社の研究開発戦略や成果を発表するインフォメーションミーティングを東京・国分寺の同社中央研究所で開催した。

この中で 執行役員常務 CTO 兼 研究開発グループ長 鈴木教洋氏は「IoT時代のイノベーションパートナーを目指し、電力エネルギー、産業・流通・水、アーバン、金融・社会。ヘルスケアの4つの分野に注力する」と語った。

  • 日立製作所 執行役員常務 CTO 兼 研究開発グループ長 鈴木教洋氏

  • 注力する4つの分野

同社は2015年度にグローバルCSI(社会イノベーション協創センタ(Center for Global Social Innovation)を設立し、顧客との協創によるイノベーションの創生を図ってきた。それにより、ユースケースとソリューションコアの拡充を図り、同社のIoTプラットフォームであるLumada事業を推進してきた。

鈴木氏は「次のステップはこれをグローバルにスケールすることだ。昨年中国に新たに顧客協創スペースを新設(北京・広州)しており、これを使って中国の成長を取り込んでいきたい」との述べ、2018年以降はグローバル展開を加速するという意向を示した。

  • 2018年以降はグローバルにスケール

Lumadaのユースケース案件は2017年度は日立グループで500件程度蓄積されており、このうち約1/5が研究開発グループが貢献している案件だという。

  • Lumadaに対する研究開発グループの貢献

鈴木氏は、顧客との協創など、オープンイノベーションにより、鉄道システム、高速エレベーター、粒子治療システムで世界No.1を獲得できたとアピールし、今後は、ブロックチェーン、自動運転、スマート製造、AI、ロボティクスの6つの領域で、オープンイノベーションにより世界No.1を目指すとした。

  • オープンイノベーションの成果と今後の注力領域

研究開発グループ テクノロジーイノベーション統括本部 副統括本部長 矢川雄一氏も、Lumadaの強化にむけては、オープンイノベーションがキーになると述べた。

「日立がIoT時代のイノベーションパートナーを目指す中で、プラットフォームサービスであるLumadaが非常に重要な役割を果たすと考えている。今後はオープンイノベーションが進化の原動力になる。研究者自身がお客様の現場に行き、中核技術の開発やユースケースの蓄積を行っており、それによってソリューション実績が積み上がってきている」(矢川氏)

  • 日立製作所 研究開発グループ テクノロジーイノベーション統括本部 副統括本部長 矢川雄一氏

同氏はオープンイノベーションのメリットとして、課題を議論のする中で角度の高いソリューションを提供でき、満足の高いソリューションができる点、研究自体が協創によって鍛えられている点、ユースケースの蓄積ができる点という3点を挙げた。

そして、同氏は、オープンイノベーションを通じて蓄積された500件のユースケースを、今年度中に倍増させると意気込みを語った。

「500件のユースケースを分析することで、われわれのビジネスチャンスが見えてくる。これらのソリューションを雛形化して、課題解決を迅速に進めようとしている。現状40種類のソリューションコアがあるが、2018年度中に100種類に増やそうとしている。また、ソリューションコアをカスマイズ、配備する技術の開発にも取り組んでおり、これらのサイクルをまわすことで、今年度中に1000件のユースケースを作りたい」

  • Lumadaソリューションコア

カスマイズ、配備に関しては、同社はIBMが開発したビジュアルプログラミングツールであるOSSのNode-REDを活用しており、「これまで日立はOSSを使う側だったが、今後はOSSのコミュニティに対しても貢献していきたい」(矢川氏)と、OSSにも積極的にかかわっていく姿勢を見せた。

そして、Lumadaの進化に向けては、オープンイノベーションの拡大とデータサイエンティスト強化を行うとした。

オープンイノベーションの拡大に向けでは、IT(Information Technology)、OT(Operational Technology)、プロダクトをつなぎ価値提供を迅速化し、データサイエンティストの育成については、同社は先月、トップクラスの研究者や各分野の実務者が相互に研さん、支援する「プロフェッショナル・コミュニティ」を立ち上げることを発表している。これにより、同社ではデータサイエンティストを、グループ内で現在の700名体制から2021年度までに3,000名にすることを目標に増強するとした。

  • オープンイノベーションの拡大

  • データサイエンティストの育成