パナソニック「4K/HDR+ハイレゾ ストリーミングサービス」

パナソニック/Technicsブースの見どころといえば、発売されたばかりのダイレクトドライブ方式ターンテーブル「SL-1000R」と「SP-10R」ですが、試聴ブースは毎回満員御礼。立ち見も難しいほどの混雑ぶりです。諦めて次の回に……と出口へ向かったところ呼び止められ、紹介を受けたのが「4K/HDR+ハイレゾ ストリーミングサービス」のデモです。

  • 音と映像のイベント「OTOTEN」レポート

    「4K/HDR+ハイレゾ」のハイレゾ部分をヘッドホンで試聴しました

パナソニックでは、ベルリン・フィルと提携して映像配信サービス「デジタル・コンサートホール」を提供していますが、音質はCD相当。映像は昨年(2017年)秋に4K/HDR対応を果たしているだけに、この「4K/HDR+ハイレゾ」は、音質向上というオーディオファン/クラシックファンからの熱い要望への回答だといえます。

仕組みを訊ねると、MP4コンテナにFLAC 96kHz/24bitを格納するとのこと。Apple Lossless(ALAC)はMP4コンテナで配布されていますから(M4Aファイル)、ALACがFLACに置き換えられたと考えれば理解しやすいでしょうか。FLAC 96kHz/24bitのビットレートは平均で2~3Mbpsですから、4K/HDR映像のビットレート(20Mbps程度)が約10%増える程度でハイレゾ対応を実現できる、というわけです。

大画面テレビ「VIERA」とデジタル接続(COAXIAL)されたプリメインアンプ「SU-C700」で試聴したところ、音のキメ細かさとダイナミックレンジの広さは歴然。本運用が開始されれば、クラシックファンには垂涎のサービスとなりそうです。

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    ハイレゾ部分はFLAC 96kHz/24bit、MP4コンテナに格納され配信されます

Luxman「AUDIO OSECHI BOX」

筆者がソフトウェア開発に直接関与したということで、今回のレポートに取りあげるかどうか迷いましたが……利害関係者であることを抜きにしても「趣味としてのオーディオ」目線でひときわ異彩を放っていたのが、1925年創業の老舗、Luxmanが展示した「AUDIO OSECHI BOX」です。3月に実施したメディア向け技術説明会から数えて、スピーカーで試聴できるイベントとしては初となります。

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    Raspberry Pi搭載のコンセプトモデル「AUDIO OSECHI BOX」

AUDIO OSECHI BOX最大の特長は、頭脳部分にシングルボードコンピュータ「Raspberry Pi」を搭載していること。LinuxベースのOSでMPD(Music Player Daemon)を稼働させ、オーディオ専用ヘッドレスシステムとして運用するという寸法です。そこにCDトランスポートを追加し、さらにネットワーク再生ソフトウェア(Upmpdcli)をくわえてGoogle Play Musicなどストリーミング再生まで可能にした、かなり尖ったオーディオシステムです。

イベントに参加された方に訊ねると、想像していたよりずっと音がよかった、という感想を多数いただきました。Google Play Musicの音質はともかく(最高音質でもMP3 320kbpsです)、OpenHome再生アプリにシームレスに統合されアーティスト検索までこなしていたことも、かなりインパクトがあったとのことです。

ポジショントークに聞こえるかもしれませんが、ハイレゾ音源のギャップレス再生(曲間をまったく生じさせない再生)もさらりとこなし、デジタルプレーヤーとしての実力はすでに相当なレベルです。

しかし、これはコンセプトモデル。音質面での追い込みはこれから、まだまだよくなります! というハードウェア設計者からの心強い発言がありました。ソフトウェアについても然り、カーネルのパラメータ調整やデコードソフトの選択などでさらなる音質向上を見込めます。10月までになんらかの発表を行う予定ですので、この自作PCライクなオーディオシステムに興味をお持ちの方は、ぜひ今後の動向にご注目ください。

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    ブースは超満員、立ち見の方も多数いらっしゃいました(奥で説明しているのが筆者)