課題は社員の意識改革

今の所うまく回っているかのように見えるソフトバンクの働き方改革だが、今後の課題としては、これが単に福利厚生の施策であると捕らえられては困るため、社員に正しいメッセージを伝えていくことだという。

仕事を効率化し、働きやすい時間を選べるようにするのも成果を高めるための措置であり、どのように成果を出していくか、そのためにはどう努力していくかは、社員側にも考えてもらわねばならないというわけだ。

「Smart&Fun!」という標語は、同社の宮内社長から全社員宛のメールで通達されているようだが、標語と働き方改革の各施策が社員の中で繋がるようになって、初めてフェーズ2が機能してくことになるだろう。

また、業務の評価についても、改善の余地があるという。上手く効率化して時短につなげたり、新しい知見を得た社員に対して、正しく評価してあげなければ、モチベーションはむしろ低下してしまうわけだ。同様の状況はプログラマーやSEなどの間でもしばしば語られているが、時間をかけて働いているものは評価されやすく、効率のいい仕事ぶりは怠けているように見られてしまっては逆効果だ。現在の評価基準そのものを変える予定はないというが、正しく評価するために必要な評価軸の設定などが要求されていると言えるだろう。

副業は本業に影響しないのか

「Smart&Fun!」の取り組みの中で、もっともアグレッシブな取り組みが副業の許可ではないだろうか。会社に忠誠を尽くし、終業後も業務に専念する日本企業の働き方では、ちょっと考えにくい。就業規則で副業を禁止しているところも多いはずだ。ソフトバンクはこの就業規則そのものを変更してしまったのだ。

2017年11月にスタートしたこの制度、2018年5月末までの約7カ月の間に200件以上の承認が行われた。もともと副業は原則禁止ではあったが、家族の事業を手伝うといった事例は以前にもあったという。

  • 副業解禁の目的も自己成長のため

しかし、制度自体を変更してからは、プログラミング、デザイン、書籍・ウェブサイトへの記事執筆など、社員の専門スキルを活かした活動の割合が倍増したという。

もちろん許可制ということで、なんでもできるわけではない。基本的に本業に影響を与えないこと、本人のスキルアップや成長につながるものである、という許可基準があり、さらに他社との雇用契約を締結したり、本業に影響が出るものは認められず、社会的信用や秩序を乱すもの、同業他社系のもの、公序良俗を乱すもの、といった禁止項目も用意されている。

副業というと心理的に何か悪いことをしているようなイメージになってしまいがちだが、むしろ会社に隠れてやらなくていいぶん、本業に差し支えない範囲で済むよう考えるため、トラブルは減るのかもしれない。副業・兼業を新たな収入源にしたい人などが会社に隠れてバイトをするようなことがなくなれば、むしろモチベーションアップでプラスに働くことも十分期待できる。ソフトバンクでの取り組みは他の企業にとっても大いに参考になるのではないだろうか。

「まずはやってみる」というスピード感のある取り組み

ソフトバンクの人事では、働き方改革の進め方について、最初に議論を尽くして始めるのではなく、とにかくまずはやってみよう、というトライ&エラーの精神で進めているという。一見乱暴そうに見えるが、こうした取り組みは考えて停滞するよりも、素早い意思決定と試行錯誤、現場での修正の繰り返しこそが最適化への近道であることが多い。

もちろんソフトバンクとはさまざまな違いがあって、その施策の全てを参考にすることは難しいケースもあるだろうが、こうしたスピード感だけはどの業種であっても参考にしていいだろう。