私がEOS Kiss Mに引かれるのは、大きく分けて2つの理由があります。ひとつは、EOS Kissシリーズで最小最軽量のボディです。これについては前回の記事を参照してください。

もうひとつは、撮影機能がいっそう強化されたこと。両機とも押すだけのフルオート撮影から、凝ったマニュアル撮影まで幅広く対応し、選べる撮影モードの数に違いはありません。しかし、機能の細かい部分では、EOS Kiss Mはシリーズ最上ともいえる充実度を誇っています。

連写とAFの強化は前回の記事で述べましたが、それ以外に、ここでは10個の機能改善に注目してみたいと思います。具体的には、ISO感度の1/3段ステップ設定、ホワイトバランスの色温度指定、サイレントモード、電子水準器、C-RAW対応、デジタルレンズオプティマイザ、カメラ内RAW現像、スマホへの撮影時転送、4K動画、ボタンカスタマイズです。いずれもEOS Kiss X9では非対応であり、個人的にもどかしく感じていた部分ばかりです。

  • 左がEOS Kiss X9で、右がEOS Kiss M。メニュー画面は昨今のEOSシリーズで共通のUIを継承する。操作ボタンの数はEOS Kiss Mのほうが少ないため外見的には低機能に思えるが、実はEOS Kiss X9よりも多機能である

  • EOS Kiss M(右)では、ISO感度の1/3段ステップ設定ができる。外部ストロボを使ったマニュアル撮影の際、光量や絞り値を固定したまま、露出を細かく調整したいときなどに役立つ

  • EOS Kiss M(右)では、ホワイトバランスの色温度(K=ケルビン)指定ができる。この色温度指定とWB補正を併用すれば、ほとんどの色は作り出せるので、慣れている人には使いやすいだろう

  • EOS Kiss M(右)では、電子シャッターによる無音撮影機能「サイレントモード」を新たに搭載。シーンモードのひとつであり、絞り値やシャッター速度、感度を選択できないのは不満だが、美術館や演奏会などでの撮影時に役立つ。EOS Kiss X9(左)には、通常よりもシャッター音がやや小さくなるソフト撮影機能があるが、無音にはならない

  • EOS Kiss M(右)では、液晶モニターの中央に2軸タイプの電子水準器を表示できる。特に、建物の外観や内観を撮る際に役立つ

  • EOS Kiss M(右)では、新たにファイル容量を抑えた「C-RAW」に対応。メモリカードやHDDの容量を節約できるのがありがたい。さらに、RAW+JPEGモード時にJPEGの画質が選べる点も便利だ。私は、テザー撮影ではRAWをメモリカードに保存しつつ、JPEGのみをPCに転送するという使い方をしているが、その際にJPEGの画質を下げることで転送速度を速くできる

  • EOS Kiss M(右)では、レンズ光学補正のひとつとして「デジタルレンズオプティマイザ」が選べる。レンズの設計データに基いて各種収差を自動補正する機能だ。これまではDPPでのRAW現像時に適用する機能だったが、それが撮影時に適用可能になっている

  • EOS Kiss M(右)では、カメラ内RAW現像に対応。ホワイトバランスやピクチャースタイルの変更などをカメラ上で素早くチェックしたいときなどに役立つ

  • EOS Kiss M(右)では、Wi-Fi設定から「スマートフォンへの撮影時画像送信」を選ぶことで、撮影直後に自動的にスマホに画像を転送できるようになった。従来は、あとから画像を選択して転送するという手順が必要だった

  • EOS Kiss M(右)では、動画の4K記録に対応。撮影画角が狭くなることや、AFがコントラストAFになるといった制約があるのは惜しいが、高解像の動画を撮影できるのはありがたい

  • EOS Kiss M(右)では、操作ボタンの細かいカスタマイズができる。自分にとって使用頻度の高い機能を割り当てておくと便利だ。EOS Kiss X9(左)の場合は、カスタマイズできるのはSETボタンなどに限られる

これらの違いの多くは細かい機能や設定なので、ユーザーによってはまったく使わず、大した差ではないと感じる人もいるでしょう。そもそもオート撮影主体のエントリー機なので、こうした細部にこだわるのは本末転倒かもしれません。

ただ、たとえエントリー機でも使い方は人それぞれ。私にとっては、詳細機能が強化されたEOS Kiss Mのほうが、完ぺきではありませんが、ちょっとした操作のストレスが減り、より気持ちよく撮影できると感じました。